民間エコノミストの経済予測には、強気から弱気まで幅がある。投資家はそれを対比させ、総合的に分析することによって、より正確な自分なりの予想を立てることができる。
今回取り上げる米JPモルガンのアナリストたちは、最も強気な部類に入る米ゴールドマン・サックスのアナリストのチームに比べると、かなり保守的な2018年の見通しを明らかにしている。なぜ、強気になれないのか。同社の予測をゴールドマン・サックスの楽観的な見方と比べながら、探ってみよう。
悲観的な各国GDP予想
JPモルガンの見通しで特筆されるのは、各国の2018年の国内総生産(GDP)予想が低い数値に抑えられていることだ。
たとえば、ゴールドマン・サックスは日本の2018年の成長率を、2017年の1.6%からやや下げた1.5%と依然高く見込んでいるのに対し、JPモルガンは2017年、2018年とも0.5%と、かなり悲観的だ。アベノミクスの新しいチャプターを切り開くべく邁進する安倍総理が読めば涙目の低評価である。
ユーロ圏の成長率についてJPモルガンの見通しでは2017年の1.25%から2018年には1.5%に上げることが予測されているが、これはゴールドマン・サックスの2017年の2.3%や2018年の2.2%に比べると、保守的な見積もりだ。
また、中国経済の成長率は2017年の5.25%から、2018年に5.0%に減速すると予測している。「粉飾」の疑いが付きまとう中国政府の発表を鵜呑みにしたようなゴールドマン・サックス予想(2017年は6.8%、2018年は6.5%)と比較すると、ノイズの部分を取り去った、より現実的な数字を出していることがわかる。
一方、インドについてゴールドマン・サックスは、成長率が2017年の6.4%から2018年は8.0%へと大幅に加速すると見ている。ところが、JPモルガンの見通しでは、2017年も2018年も7.0%と、変わらずである。
なぜ、JPモルガンの数字はこのように全般的に悲観的になるのだろうか。それは、同社の分析の前提がより長期的なトレンドに注目し、「少子高齢化に影響を受ける人口動態」と「生産性の伸び」という、近年各国で冴えない指標に特に重点を置いているからだ。JPモルガンは、冷静に長期投資戦略を念頭に置いて、短期予測をはじき出しているわけで、その姿勢はいたずらに悲観的なのではなく、「どこに明るさが見えるか」という積極性に根差している。
JPモルガンの予測は、ゴールドマン・サックスの「世界経済は、これ以上よくならないほどの成長が期待できる」というバラ色の見通しと重ね合わせて多角的に見れば、バランスのとれた世界経済の見方を可能にしてくれるツールだ。