中国のサラリーマン家庭の年収が265万円(15.4万元)に達した。また都市住民の家庭負債率は5.5%の比較的低水準であることがわかった。

ただし半分の家庭では、借金へに意欲は強い。ニュースサイト捜狐が分析記事を載せている。

一方で中国人の一人当たりGDPは92万1000円で世界70位に過ぎない。この金額は1970年代末の米国、ドイツ、フランス、日本、90年代初頭の韓国と同じ水準である。中国の経済力はどう評価すればよいのだろうか(1ドル=113.38日本円、1元=17.25日本円)。

サラリーマン階層は2億人

中国経済,年収比較
(画像=imtmphoto / Shutterstock.com ※画像はイメージです)

12月中旬、西南財経大学中国家庭金融調査研究センターは、中騰信公司(金融サービス)と連合で「中国工薪階層信貸発展報告」を発表した(以下「報告」)。これは中国家庭金融調査2017年版と中騰信公司の持つネット金融のビッグデータを基礎にしている。

報告はまず、依然として中国の家庭負債率は米国より低い。しかし収入に比べ債務の高い家庭には返済リスクがある。一旦家庭のバランスシートが悪化すると、銀行にもマクロ経済にも悪影響があると指摘している。

これまでこの階層における真実の負債状況は分からなかった。報告では、2011年を起点として中国家庭の金融動態を追跡調査した。全国29の省市、363の県、4万戸の家庭を覆う大掛かりなものだ。収入状況の進行過程も調査している。対象は、調査中に雇われ、労働契約を結んだ人全部である。なお中国の全国就業人員は、2016年末データによれば7億7603万人である。そのうちのサラリーマン階層は26%と見られている。

つまり中国のサラリーマン階層は約2億人となる。

都市住民の総資産は3000万円

報告によると、サラリーマン階層のうち70%の年間給与性収入は、51万7500円(3万元)を超え、平均は98万3000円(5.7万元)である。これでサラリーマン家庭の平均収入は、265万円(15.4万元)となる。共稼ぎで平均収入を2倍しても、265万円には届かない。この辺りが中国のよくわからないところである。

一方、非サラリーマン世帯は136万3000円(7.9万元)に過ぎず、サラリーマン世帯の半分しかない。

またサラリーマン世帯の年間平均消費支出は、150万1000元(8万7000元)家庭総資産は3063万6000円(177万6000元)だった。非サラリーマン世帯はそれぞれ96万6000元(5万6000元)158万1000元(91万6000元)と大きな差を付けられている。不動産価格が高い都市住民は、大きな資産を持っているのがわかる。

資金需要は旺盛

サラリーマン世帯の半分には、強い資金需要があり、債務を拡大してよいと考えている。とくに不動産に対しては、84.9%の人が借り入れを考えている。その中にはすでに不動産を所有している人も22.9%いる。

サラリーマン世帯のローン残高は増大している。2013~2017年までの平均増加率は、消費者ローン25.7%、不動産ローンは5.5%だった。

報告によると、中国都市住民の家庭資産負債率は、2013年には4.5%だった。それが2017年には5.5%となっている。しかし地域差が大きく、上海、浙江省、広東省などでは20%を超えている。また70年代~90年代生まれの借入れ率と負債率が高い。中でも80后(80年代生まれ)は突出している。これは米国のパターンに近い。

結論として中国の家庭債務比率は低い。しかし上昇傾向にあり、高債務家庭のリスクは容認できなくなりつつあると結んでいる。

最初の指摘と同じで、これが主張の柱のようだ。中国の都市住民は、確かに豊かになった。2008年までに不動産を取得していた都市住民は間違いなく勝ち組である。

副収入や闇収入もいくらあるか分からない。一人当たりGDPの国際比較などあまり意味がない。数字以上の振舞いである。個人の強さを見る限り、中国経済は極めて安定しているといってよさそうだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)