30代ともなると、社会人になって10年ほどが経過して他人との「差」が気になりだします。他人の貯蓄額が気になることもあるのではないでしょうか。
今回は、公的機関の実施する調査の結果から、30代の平均的な貯蓄額および資産運用行動の実態を確認してみます。そのデータを参照し、少しでも「上」を目指して少しずつ行動を起こしていきましょう。
統計データの貯蓄や資産運用への活用方法
お金に関する調査は数多く行われています。特に、年齢別の貯金額や資産額などを尋ねる調査結果がよくニュースになっており、「貯金なしの人が意外に多い」などと問題視されていることもあります。
特に、政府の実施する統計調査は信頼性が高いため参考にできます。一般的なインターネット調査では、「インターネットを使いこなせる人」が回答者であるためにネットリテラシーが高く年齢層が若めのケースが多いものです。一方で政府の調査は、サンプルの偏りがないように配慮されています。
こうした統計調査が出たときに、自分が安心する材料として使うのはあまりおすすめできません。たとえば、自分の貯金額が500万円あるときに「○代の平均貯蓄額は300万円」という情報を見てほくそ笑む……という人がいるかもしれません。これでは、ただ自分のしていることを正当化しているだけで、あまり生産的ではありません。
平均値と比較するのは、方向性としてやや基準が低いかもしれません。世界における日本の経済的地位は下がりつつあり、平均値を見てしまうと沈んでいく恐れがあります。できれば「平均値より少し上」を目指して貯蓄や資産運用に励むべきでしょう。
30代の平均貯蓄額は?「国民生活基礎調査」を参照
こうした統計データの見方を踏まえて、実際の調査結果を見てみましょう。まず、厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」が参考になります。これは、保健、医療、福祉、年金、所得などといった国民生活の基礎的な内容を調べたものです。最新の調査は2016年に実施されました。熊本地震の影響もあって、熊本県は調査対象から除外されています。
この調査結果によると、30~39歳の世帯あたり平均貯蓄額は404.1万円となっています。ただし、ここからは「不詳」ないし「貯蓄あり額不詳」の世帯は含まれていないため、実態はもう少し低いかも知れません。30~39歳で前年から「貯蓄が増えた」は23.7%、「変わらない」が39.2%、「貯蓄が減った」は31.2%となっています。ちなみに、前回貯蓄額を調査した2013年は、30~39歳の世帯あたり平均貯蓄額は423.2万円であり、20万円弱減少したことになります。
また、2016年調査での30~39歳の所得額は562.3万円、2013年調査では545.1万円となっています。所得額は若干増えたものの、貯蓄額は少し減ったというのが平均的な30代の姿ということになります。
なお、全世帯のうち「貯蓄がない」は14.9%、「貯蓄が1,000万円以上ある」は貯蓄がない人を含めた全体のうち28.5%となっています。四分の一以上の世帯が1,000万円以上の貯蓄を持っていることを踏まえると、まずはこの水準を目標にするのがよいでしょう。
30代で資産運用している人の割合
次に、日本証券業協会が3年に1度実施している「証券投資に関する全国調査(個人調査)」の結果をご紹介します。最新の調査は2015年度に実施されました。
この調査では、金融商品の保有実態を尋ねています。それによると、預貯金以外で最も保有率の高い株式でも30代は10%台以下でしかないことが明らかとなっています。たとえば、30~34歳男性で10.1%、35~39歳男性で12.9%にとどまっています。女性だと、30~34歳で3.9%、35~39歳でも5.9%しかいません。次に保有率の高い投資信託となると、男女ともに10%未満です。結局、30代で預貯金以外の資産運用を行っているのはごくわずかな層なのです。
アメリカの社会学者エベレット・M・ロジャース氏が提唱した「イノベーター理論」によると、10%台以下というのは流行に敏感な「アーリーアダプター」です。証券投資を実施している30代というのは、かなり先進的であると言えるでしょう。
資産運用を30代のうちから始めることで、10年後や20年後に同世代の「平均値」と大きな差をつけることが出来る可能性があります。先ほどの国民生活基礎調査によると、高齢者世帯で11.6%もの世帯が3,000万円以上の貯蓄額を持っていることが分かっています。このレベルの世帯の中には、若いうちから資産運用に励んでいた層も多いことでしょう。
貯蓄や資産運用を始めるかどうかは、学歴や職歴とも関係ありません。証券会社への口座開設は、30代なら誰でも可能です。少額からでかまわないので、まず行動を起こすことが重要であると言えるでしょう。(提供:Incomepress )
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