神奈川県が2016年に県内の中小企業を対象に実施した事業承継に関するアンケート調査では、「後継者が決まっている」と答えた経営者が52.6%に上った一方、「決まっていない」が40.9%となっており、事業承継の先行きが見えない企業も4割存在していることが明らかになった。

少子高齢化による人材難のあおりを受け、後継者問題に直面している中小企業は少なくない。今回は、中小企業が事業承継を賢く進めるに上でのポイントを見ていきたい。

「自社承継」と「第三者承継」

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(写真=T.Dallas/Shutterstock.com)

事業承継のパターンとして、大きく「自社承継」と「第三者承継」に分けられる。 自社承継は、社内から後継者を探すパターン。親族を後継者に選ぶパターンも考えられる。一方、第三者承継は、いわゆるM&Aだ。M&Aにはさまざまなスキームがあるが、中小企業の事業承継なら、事業譲渡や会社売却などが一般的に多く用いられる。

先の神奈川県のアンケートでは、後継者が「決まっている」と回答した企業のうち、後継者は「子供などの親族」が85.6%、「親族以外の役員・従業員」が10.7%、「親族以外の第三者」が3.2%となっている。

中小企業の後継者問題では、まだ自社承継がメジャーと言えるが、バブル後の「ハゲタカ」的なイメージから、M&Aも事業承継の一手段として認知が広がりつつある。

同調査でM&Aによる事業承継への関心について聞いたところ、「関心がない」が35.1%である一方、「関心がある」が21.0%、「やや関心がある」が20.7%。合わせて41.7%が関心を持っているという結果になっている。

自社承継は自社株の承継問題がネック

自社承継をする際に立ちはだかるのが、自社株の承継問題だ。会社の経営権の支配を確保するには、最低限でも過半数(株式発行総数の50%超)、できれば3分の2以上の自社株を確保する必要がある。

中小企業であっても優良企業の場合、自社株の評価が思ったよりも高く、後継者に莫大な税負担がのしかかってくるケースがある。

経済産業省の「中小企業白書」では、贈与税や相続税を重荷として感じる後継者が親族内で34%、親族外だと55%にも上る。

中小企業の後継者には株式を承継する際、贈与税や相続税が軽減される「事業承継税制」が適用されるが、これは条件付きで5年間にわたって相続税や贈与税が猶予されるという制度であり、猶予後は結局支払いが発生してしまう。

自社株の評価減に不動産活用を

このように、スムーズに自社継承を済ませるためには、自社株の評価をいかにして下げるかという課題が出てくる。自社株の評価を下げるには、現社長に払える範囲で退職金を払う、減価償却を計上する、といった方法で会社の利益を圧縮するほか、保険や不動産の活用・購入といった手段がある。

特に、持ち株会社の資産に占める株式保有割合が高いと、持ち株会社の株価は純資産価額で評価され高額になるケースが多い。

不動産を取得し、資産総額に占める株式の評価割合を調整することで、純資産価額方式と類似業種比準価額方式を併用して株価評価を引き下げることが可能となる。株価評価を下げるには不動産の活用が手段のひとつだ。

後継者選びは年単位の取り組みに

「中小企業白書」によると、後継者探しを始めてから了承を得るまでの期間に3年以上かかったという企業が37%で、中には、10年超かかったという企業もある。後継者がいる企業にとっても、スムーズに事業承継する前には、上記で示したような自社株の継承が課題として残る。

さまざまな支援制度や節税のコツを知っているか知らないか、または時間をかけるかかけないかで、事業承継のコストは大きく変わってくる。事業承継に不安を抱いている場合は、顧問の税理士や会計士のほか、M&Aの専門家、都道府県にある事業引継ぎ支援センターなどの公的機関に早めの相談を持ちかけたほうがよいだろう。(提供:百計オンライン

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