日本企業では、社員が副業をもつことを禁じている会社が多い。終身雇用を前提とした正社員が雇用の主流だったことが起因しているのだろう。

しかし、働き方が多様化する中で、複数の収入源をもつ「副業(複業)」がブームのきざしを見せている。

政府も副業の解禁を後押ししていることから、働き方改革の一環として2018年は副業の是非が経営のキーワードになるかもしれない。

厚労省は「モデル就業規則」改正で後押し

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(写真=Africa Studio/Shutterstock.com)

経営者側としては、「社員が副業なんて始めたら、仕事に身が入らなくなるかもしれない」と認めたくないというのが本音かもしれない。実際、会社員でも副業が当たり前という欧米などでは、副業として始めたビジネスが軌道に乗ったという理由で、会社を辞めてしまう人も多い。

日本でも、法律上は副業を禁止しているわけではない。しかし、なぜ企業が従業員の副業を禁止できるかというと、「就業規則」の存在がある。

厚生労働省は2017年11月20日、企業が就業規則を作る際の参考として示している「モデル就業規則」から副業禁止に関する項目を削除する改正案を有識者検討会に提示した。中小企業では、厚労省のひな形をそのまま自社の就業規則に転用している企業も多いだろう。影響力のあるモデル就業規則を改正することで、副業を認めやすくする流れをつくる意図がある。

賃上げに厳しい日本企業、残業カットで手取り減

会社側としても、社員の副業を認めざるを得ない事情もある。日本の労働市場は賃金に関する規定が厳しく、賃下げできない代わりに賃上げ幅もごくわずかだ。

少子高齢化や五輪需要などで人手不足が顕在化している業界や、アルバイトやパートなどの給与を中心に賃上げが始まっているが、中小企業を含め社会全体に波及するのはまだまだ先だろう。また、昨今は働き方改革の号令のもと労働時間の削減が図られ、残業代が減って収入減となる問題もクローズアップされている。会社から受け取れる給与で生活費をまかなえないならば、会社側としても複数の収入源を持つことを認めざるを得ないかもしれない。

柔軟な働き方で人材の獲得を

企業側としては、秘密保持義務、競業避止義務などの観点から、副業解禁を認められないという考えもあるだろう。公務員は、職務専念義務、守秘義務、信用失墜行為の禁止の観点で、国家公務員法と地方公務員法は副業禁止と定めている。

民間企業でも、副業を解禁するなら「終業後、副業に行く際に事故に遭ったら労災はどのような取り扱いになるのか」など、具体的に検討すべき項目も多い。

とはいえ、副業を解禁することはデメリットばかりではない。例えば、上場企業として働き方改革の先頭に立つサイボウズでは、「100人いれば、100通りの働き方がある」という考え方から、「会社で長時間働く」「会社以外の自由な場所で長時間働く」「会社で短時間働く」「自宅で長時間働く」「自由な場所で短時間働く」などといった9パターンの働き方を用意している。

各キャリアパスの変更は任意で、ライフスタイルに合わせて自由に選ぶことができる。同社では、会社に届けずとも副業可能だ。中には、週2日同社で働き、あとの曜日は他の仕事やNPOなどで活動している社員もいるが、情報漏えいなどの問題は起きておらず、むしろ社員の視野やフィールドが広がったことで、副業で得た人脈がビジネスにつながることもあるという。

こうした柔軟な選択型人事制度を導入した結果、サイボウズでは、年間20%以上だった同社の離職率は4%程度にまで下降したと公表している。

個人の嗜好が多様化する中、副業を含め柔軟な働き方を好む優秀な人材も多い。人手不足が懸念される中、諸般の事情から高給を提示できないのであれば、いっそ副業解禁などの柔軟な働き方を認めることも、人材採用やリテンション(人材引き留め)の有効な手段になるかもしれない。企業のダイバーシティー(多様性)化の一環としても、経営者は副業解禁の流れに対して、過敏なまでにネガティブになるべきではないだろう。(提供:百計オンライン

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