越前と呼ばれた福井エリアは古くから酒どころとして知られています。現在も37の蔵元が伝統を守り、経験豊かな杜氏のもと地酒を醸造しています。霊峰白山からの伏流水は地層に磨かれて澄んだ仕込み水になり、五百万石や山田錦といった酒米の栽培も盛んで、おいしい地酒ができる好条件が揃った風土を持っています。

結婚式のお酒に市が補助金!?

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(写真=PIXTA)

そんな福井市では、さらなる地酒の知名度アップのため、ユニークな取り組みを始めています。そのひとつが、結婚披露宴で飲まれる地酒に対する助成金です。「披露宴で地酒乾杯すれば安上がり」という全国的にも非常に珍しい制度です。

福井市で醸造される地酒を購入する費用や鏡開きの経費がその対象です。会場では司会から「おいしいふくい条例」という福井市の食の普及への取り組みをアナウンスするのを引き換えに、事前申請で上限5,000円まで助成が受けられます。

「おいしいふくい条例」とは、福井市民に馴染み深い郷土のグルメを全国に発信するため制定されました。「宴会での福井市産の日本酒やビールによる乾杯」、「地元の郷土料理を日頃から食卓に並べる」、「市外へのお土産には福井の食の特産品を利用する」など、ユニークな条文が用意され、市民全体で福井のおいしい食文化を発信していこうとする取り組みです。

市内を歩くと「福井市の『おいしい』を応援しよう!」と福井の食をアピールするポスターやチラシを見かけたり、酒屋の日本酒コーナーには福井市産の地酒のラインナップが充実するようになりました。福井の特産物を積極的に利用しようという動きは県内にも広がりをみせており、永平寺町の道の駅「禅の里」では吉田酒造の「白龍大吟醸」を使ったジェラートを味わうことができます。

福井は2018年に国体、2022年度に北陸新幹線の延伸が決まっています。来県の観光客に市民が地元グルメと親しむ姿を見せることで、福井の食の宣伝につながることが期待されます。

ワイン評論家のロバート・パーカー氏も高評価

福井の日本酒は海外へも知名度がアップしています。そのきっかけは世界的に影響力を持つワイン評論家のロバート・パーカー氏が福井の地酒を高く評価したことです。2016年9月より日本酒評価の始まったパーカー氏のリストには日本酒78銘柄が掲載。そのうち、福井より5銘柄が高ポイントをマークしました。

なかでも92点とハイレベルだった黒龍酒造の「純米大吟醸 生 黒龍 火いら寿」は淡麗でフルーティな香りが特徴の銘酒。720ミリリットルで定価5,000円ですが、その絶大な人気と毎年2月の期間限定発売であることからネット通販では1万円を超すプレミア価格が付く入手希少なまぼろしの酒といわれています。

地酒フェスタは大賑わい

福井市内では定期的に地酒イベントが開催されており、毎回にぎわいを見せています。27もの福井の蔵元から「ひやおろし」や「大吟醸・純米大吟醸」が集まる「地酒フェスタ」は福井駅前のアーケード街・ガレリア元町で秋に開催されます。和装で来場した女性に日本酒のプレゼントがあるほか、約50種類以上の地酒を飲み比べできます。

2017年10月25日には地酒イベント「川床Bar」が開催されました。鯉の泳ぐ水路に作られた川床には灯籠が並び、参加者はのんびりと地酒を楽しむ夜を楽しんでいました。川床隣のお寺の「テクノ法要」とのコラボも話題となりました。

地酒イベントで賑わう福井市内。福井随一の飲み屋街である片町を中心に、地酒を楽しめる飲食店が多数あります。通りを歩けば「越前がに」や「さばのへしこ」など、福井の新鮮な海の幸に地酒を合わせる客たちが舌鼓を打っています。

条例で地酒消費を目玉に据えるなど、酒どころならではのアイデアが光る福井の酒事情。地元に愛される蔵元の銘酒にますます人気が集まりそうです。(提供:JIMOTOZINE)