住宅を新築・購入・増改築すると、建物の内・外を立ち入り調査する「家屋調査」がある。通常、市町村などの固定資産税課職員が現地調査に入るが、これは家屋の資産評価額を算出するために必要な過程である。「調査」といわれるとついつい身構えてしまうが、誰が、何のために、どのようなことを行うのだろうか。

「家屋調査」は固定資産税の評価額を算出するため

マイホーム,家屋調査
(画像=PIXTA)

住宅を新築し、所有権を取得した者は、原則その取得の日から1カ月以内に登記をすることが義務付けされている。登記を行うと、登記所から各市町村などの固定資産税課に通知がされ、新たに取得された家屋が把握される。家屋の把握は、登記所からではなく、所有者からの連絡や行政の市内巡回等などにより完成とみなされる場合などがある。

家屋の取得が把握されると、固定資産税課の家屋評価担当職員が所有者に対して「家屋の立ち入り調査を行いたい」という旨の連絡が入る。これが「家屋調査」である。

「家屋調査」の目的は、固定資産税を算出するために行われる。建物の図面と照合しながら、家屋の内部や外部の構造、建築材料などを固定資産評価基準に当てはめ、家屋の評価額を決めるとされる。この「家屋調査」原則的には1回限りだが、将来的に増築・一部消失など家屋に変化が生じた場合は再度調査が行われることもある。

図面表記と実際の家屋を目視で確認し点数を積算

実際に家屋の立ち入り調査はをどのように行われるのだろうか。流れとしては、事前に「家屋調査」の申し入れがあり、所有者は、当日に建築確認申請書や設計図面の写しを準備しておくことになる。

調査の当日は、家屋の図面に沿って部屋の位置や建物の形状、構造、内装や外装の仕上げ、装備されている設備などを各所目視で確認する。その内容を「固定資産評価基準」で付設されている点数を積算していき、再建築費での評価額の基礎としている。

この評価基準は、かなり詳細な項目にわかれてチェックできるようになっている。一例をあげると、住宅の電気設備ではカメラ付きインターホンが親機、子機で備え付けられていることを標準点数「1」とすると、カメラ無しは補正係数が「0.3」などとされる。(参考2015年)補正係数はこの他にも屋根の形状など様々な部分にあり、高価な設備、仕上げなどは係数が上がり、簡素なら係数は下がるという傾向になっているようだ。それらを積算し評価額基礎が決まるとされる。

ちなみに、新築分譲マンションを購入した場合は、「家屋調査」の対象にはなっていない。なぜなら、分譲マンションの場合は、建築した施工業者又は販売業者から図面等の書類を借用して評価を行うため、個別に調査に行くことはない。

「家屋調査」を拒否すると罰せられることも

「家屋調査」は建物に立ち入り調査を行うため、抵抗感を持つ人もいるかもしれないが、固定資産評価補助員には地方税法353条の規定により質問調査権が与えられている。そのため、所有者が理由なく調査を拒否、または調査を妨害するような行為は最悪の場合罰せられることもある。

「家屋調査」を経験した方々によると、所要時間は30分から1時間程度。調査員は淡々と進めているだけに過ぎず、「何か不正を見つけよう」という目的ではないので安心して調査を受けてほしい。なお、建物の引き渡しがされていなくとも、住居として使用できる状態にあれば調査の対象となる場合もあることを覚えておこう。(岩野愛弓 宅地建物取引士、住宅専門ライター)