2017年、中国のO2O分野には硝煙の匂いが立ち込めていた。「美団点評」「口碑」「餓了麼」による“三国殺”であった。三国殺とは、2008年に中国のYoka Games社の開発したカードゲームである。自分が生き残るには、他のプレイヤーが死亡しなければならない。そのことを比喩し、三者による厳しい争いを表現している。2018年、戦いの構図はどのように変化するのだろうか。ニュースサイト「騰訊網」が分析を加えている。

滴滴出行もからむ戦いの構図に

中国経済,O2O,ネット業界
(画像=Webサイトより)

O2Oの典型、フードデリバリーサービス市場において、餓了麼は、美団に肉薄した。その美団は、「滴滴出行」が市場を“壟断”しているやはりO2Oのの典型、ライドシェア(配車アプリ)市場に打って出る。

激怒した滴滴出行は、美団の挑戦を打ち負かし、餓了麼に出資するという。フードデリバリーの業務を研究し、取り込むためである。

美団と餓了麼の決着もまだ先の話である。美団外売は一旦餓了麼を上回ったが、餓了麼は「百度外売」を買収し、戦局は元へ戻った。

美団の関心は、オフラインへと移っている。阿里巴巴の提唱する“新零售”(O2O融合の新小売業)と衝突するのは不可避だ。具体的には、阿里巴巴のサポートしている口碑とぶつかる。美団には規模の利があり、口碑には阿里巴巴グループのの持つデータの利がある。

2018年、三国殺ゲームのプレーヤーは、滴滴出行を加えた4者となりそうである。

美団点評 17年ライドシェア参入

美団点評は、美団(阿里巴巴出資)と大衆点評(騰訊出資)が2015年10月に合併したものだ。同年12月、阿里巴巴は資本を引き揚げた。美団点評は、総合生活情報サービス、共同購入を基本事業としている。2017年以前には、その美団点評が、大きな野心を充満させているとは、誰も気付かなかった。2017年の美団は、自らの境界線を押し広げていった。

2017年2月、美団は江蘇省・南京市でライドシェア業界に打って出た。多くの人を驚かせる出来事だった。ウーバー中国を吸収した業界のガリバー、滴滴出行は、すぐに反応した。経営幹部が南京に集合し、南京市だけに、より高品位なサービスを付加したのだ。さらに餓了麼へ多額の出資をちらつかせた。

しかし美団はひるまない。南京での実験を経た10月には、北京、上海、成都、杭州、温州、福州、厦門の7都市で正式に「美団打車」アプリをアップロードした。現在、登録顧客は20万人を超え、配車サービスを展開している。美団は、ライバル不在と思われていた滴滴出行の下腹を、思い切り蹴った。2018年の両者は、一触即発の状態が続くと見られている。

口碑 電子版イエローページ提供

口碑の主要サービスは、飲食、娯楽を含む生活消費の全領域に及ぶ。“電子版イエローページ”である。消費情報のより敏速な検索を目標にしている。業者はこのイエローぺ―ジに登録しておけば、消費者に検索してもらえる。2017年4月には、300万店が、口碑のモバイルアプリに登録され、QRコードスキャンによる決済が可能となった。これは支付宝(アリペイ)というモバイル決済ツールを持っているからだ。ライバルの美団は、同じスピードで行動を起こすことは不可能だ。

口碑は独立したアプリであるとともに、支付宝アプリからもアクセスできる。双十一(独身の日)後には、阿里巴巴のネット通販サイト「淘宝」とも連動するようになった。これも美団には不可能である。口碑は阿里巴巴グループの資産を最大限活用して、美団との生活サービス情報戦に臨む。

餓了麼 16年にアリババ傘下に

餓了麼は2016年4月12億5000万ドルの巨額出資を受け入れ、阿里巴巴の傘下に入った。2017年9月、餓了麼は「e点便利」という無人店に進出した。阿里巴巴“新零售”の一端を担う。阿里巴巴は餓了麼の持つ配送能力に注目しているようだ。また10月には、支付宝、口碑のアプリと連動した。サービスを融合し、支付宝アプリ内で“食”を巡るサイクルを完結させる。

最新のデータによると、本業であるフードデリバリー市場における餓了麼のシェアは41%、美団外売は41.7%と全く互角である。この部門ではバックに控える阿里巴巴と騰訊の影が、見え隠れする。

しかし美団の噛みついた滴滴出行に、騰訊は早い時期から出資している。騰訊は資本関係より、市場の拡大とシェア獲得を優先にしているように見える。とにかく2018年中国のO20分野の三国殺ゲームは、2017年以上に激しくなりそうだ。その中心に座っているのは、おそらく美団点評だろう。注目しておきたい会社である。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)