“民は食を以て天と為す”とは、よく中国人の人口に膾炙する言葉である。中国烹飪協会の統計によると、2017年全国の飲食業収入は、66兆7680億円(3兆9000憶元)に及んだ。前年比10.7%のアップである。どのような料理が大衆に受け入れられているのだろうか。また中国の飲食業界には、どのような新しい変化が起こっているのだろうか。ニュースサイト「今日頭条」「杭州網」などが特集記事を掲載した(1元=17.12元)。

正統中国料理のシェアは57%

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(画像=PIXTA)

中国烹飪協会の発布した「2017年度美食消費報告」によると、正式な中国スタイルの正餐が、主導的地位を占めていた。全体シェアの過半、57%を握っていたのだ。

そうした正統な中国料理の中で、最も人気の高かったのは「火鍋」の範疇に属する料理だ。新しいデザインで、まるでファッション専門店と見間違うような店もあり、若者にも人気は高かった。火鍋が消費者に歓迎されているのは、その種類の多彩さにある。四川風、カレー味、台湾風、トマト風味など、毎回違ったスープを味わえる。

正統な中国料理を除くと、ファストフードの発展が急速だ。全国飲食業シェアの16%を占めるに至った。西洋料理、日本料理、韓国料理もそれぞれシェアを伸ばしているとあるが、具体的な数字はどのメディアも載せていない。

人気メニューは?

60%の人は週に1~2度外食すると答えている。その際、消費者がレストランを選ぶ際の判断基準は、1位 店の雰囲気や環境19.2%、2位 味17.8%、3位 清潔や食品安全14.7%、価格要因は第4位だった。

正統中国料理で人気トップ5は

百度地図(地図検索アプリ)
四川料理、広東料理、浙江料理、湖南料理、東北料理

美団点評(フードデリバリー)
広東料理、湖南料理、東北料理、韓国料理、浙江料理

また美団点評の人気めメニューは、エビ、ステーキ、ダック、寿司、酸菜魚、牛肉火鍋、ビーフン、ラーメン、チキン、などである。

しかしこうした全世代を網羅したデータは、若い世代には全く当てはまらなくなっていた。

90后(1990年代生まれ)の嗜好

全体ではシェア57%という正統中国料理に対する忠誠心を、年代別に見ていこう。すると70年代生まれでは92%を占めていた。これが80年代生まれになると68%に下降し、さらに90后になると一挙に19%にまで急降下する。

では90后、19歳~28歳くらいの若者たちは、何がお好みなのだろうか。

ケーキなど甘味25%、バー21%、正統中国料理19%、外国料理13%、ファーストフード12%、喫茶店5%、その他5%

という順になっていた。

日本には、同じようなデータは存在していなかった。しかし多くの統計から、若者の外食離れ、アルコール離れは間違いない。一方で「食フェス」などへの参加率は高く、食のエンターテインメント化が進んでいるという。

中国の若者も伝統中国料理を排し、出没する先は多様化している。外食を思いきり楽しむようになった、という点では、エンターテインメント化していると言えよう。

食の多様化は中国文明の転換点?

中国では2011年のスマホ時代の到来とともに、フードデリバリーサービス事業が大発展を遂げた。現在ではO2Oの代表と捉えれている。2016年の市場規模は、2兆8593憶円(1662憶4000万元)であり、17年は3兆4000億円に達したとみられている。 また昼食と夕食の間に、サービスを利用するケースも増えている。昼食、夕食時間の注文は72%だった。28%はいわば間食である。

あらゆるデータは若者の食の多様化を示している。中華テーブルを囲み、盛大に料理と酒を楽しみつつ、そこが大事な人脈作りの場でもある、という伝統的な食事文化は、今後急速に廃れていくのだろう。これは大げさでなく、中国文明の転換点になりそうである。90后は中国を変えるパイロット(水先人)なのだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)