原油価格(WTI期近)が当面の高値目標とされていた60ドルをブレイクした。ちなみに、2017年の原油価格は1バレル当りざっと40ドルから60ドルで推移し、平均価格は50.8ドルだった。先週は60ドル台前半で推移しており、2014年12月以来、約3年ぶりの高値圏にある。

問題は今後の展開であるが、ウォール街の市場関係者の意見も様々である。今回はその中でも代表的な「3つの視点」を紹介しよう。

サウジは「緩やかな上昇」を見込んでいる?

原油,見通し
(画像=Thinkstock/GettyImages)

2018年の原油価格の見通しは大きく分けると、(1)上昇基調を維持する、(2)現在の高値は維持できない、(3)上昇が加速して上振れる……の3パターンがあり、それぞれで重視する「視点」が異なっている。

まず、昨年来の「上昇基調を維持する」見通しはOPEC(石油輸出国機構)の動向に着目した予測であり、とりわけ盟主であるサウジアラビアの意向を重視している。

OPECは2016年11月の総会で減産に合意し、翌12月にはロシアを含む非加盟国も協調減産に合意。2017年1月から日量約180万バレルの減産を実施している。OPECが減産で合意したのは8年ぶり、非加盟国も加わった協調減産は15年ぶりのことだった。

協調減産の目的は「世界的な過剰在庫」の解消と、原油価格の下支えにある。ただし、目標価格の思惑は各国でばらばらであり、OPECが公式な目標を設定しているわけではない。OPECは需給が均衡すれば「適正な価格」に落ち着くはずであり、需給が緩んでいる現状で目標を設定するのは適切ではないとの見解を示している。

とはいえ、ウォール街の市場関係者の中には盟主であるサウジアラビアの意向を重視する向きもある。すなわち「サウジアラビアが望ましいとする価格」が便宜的にOPECの目標価格とみなす向きも少なくない。

ちなみに、サウジアラビアは昨年末に財政見通しを公表している。それによると、2023年に財政黒字の目標を達成する前提として原油価格を75ドルに想定しており、どちらかといえば長期的に緩やかな上昇を見込んでいるようだ。

「60ドル台は維持できない」との意見も多い

一方、現在の相場は過熱しており「60ドル台は維持できない」との見方もある。筆者の知る限り、ウォール街ではこちらの見方がやや優勢かもしれない。

世界的な株価上昇がリスクオンの流れを促す中、中東での地政学的リスクの高まりや異常気象も追い風となって原油価格を押し上げたが、こうした材料は「あくまで一時的な要因」との指摘もある。そのうえで、米シェールオイルの増産によりOPECの減産効果が相殺され、原油価格は昨年同様40ドルから60ドルのレンジに押し戻されるとの意見も多く聞かれる。

昨年12月以降に発生したイベントとして、イエメンの武装勢力がサウジアラビアに向けて弾道ミサイルを発射、リビアで原油パイプラインが爆破されて操業が停止、イラン各地での反体制派デモ……などが挙げられる。こうした中東での地政学的リスクの高まりも原油価格を押し上げる一因となったわけであるが、これらの材料は時間とともに消化されるとの見方も少なくない。

また、年末年始に米北東部を襲った「爆弾低気圧」の影響で暖房用需要が増加したことも支援材料となった。

ただし、米シェール企業の採算ラインは50ドル前後と推計されており、60ドル以上では増産の意欲が高まりやすい。WTI原油先物は2018年12月限でも60ドルを上回っている(※1月17日現在)ことから、先物でリスクヘッジをしたうえで増産に踏み切ることも比較的容易な状況だ。

生産を確認すると、2017年末の米原油生産量は日量978万バレルと前年比101万バレル増加した。また、米原油生産量の先行指標とされているリグ稼動数は1月12日現在で751基と昨年11月3日の729基から回復基調にある。

今後の価格次第ではあるものの、中東の地政学的リスクや天候要因が落ち着けば、修正安に見舞われる恐れは十分にありそうだ。

シティグループは「80ドル」を予想

最後に少数派ではあるが、中東の地政学リスクの高まりは一時的ではなく、むしろ「一段と高まる」との意見もある。

たとえば、シティグループは中東情勢の緊迫化やトランプ大統領の反イラン政策、イラクやリビヤといった産油国での政治的混乱が地政学的リスクを高め、原油価格は80ドルに向かうと予想している。

イエメンでは、サウジアラビアが支援しているハディ暫定大統領とイランが支援しているフーシ派武装勢力が衝突を繰り返しており、サウジアラビアがフーシ派を空爆する一方で、フーシ派もサウジ内にミサイルを撃ち込んでいる。これまでのところ標的は首都リヤドだが、将来的には油田地帯への攻撃も絵空事ではない、との見立てだ。

トランプ大統領はイランとの核合意の見直しを強く求めており、経済制裁が再開されるリスクはくすぶり続けている。昨年12月、トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認めたことが波紋を呼ぶ中で、対イラン強硬路線に変更が見られない点も気掛かりだ。トランプ大統領の判断ひとつで中東情勢の波乱が拡大する危険性は否定できない。

また、2017年のインフレ率が2616%だったベネズエラ情勢も気になるところだ。ベネズエラ政府は1月5日、原油を裏づけとする仮想通貨「ペドロ」の発行を表明したが、国会は「ペドロ」を違法と認定しており、同国の資金調達は依然不透明だ。

ベネズエラの産油量は2015年の日量232万バレルから2016年は215万バレルへと減少し、2017年11月現在は183万バレルとなっている。設備投資不足から生産の減少に歯止めがかからず、近い将来回復する見通しも立っていない。今後、ベネズエラからの供給不安が原油高を後押しする可能性にも留意する必要があるだろう。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)