リクルート住まいカンパニーが発表している「SUUMO住みたい街ランキング」の常連として名を連ねてきた東京西南部(世田谷・目黒区・渋谷区)や都心部(港区・千代田区・中央区)の地価上昇に陰りがみられるようになってきた。かわって地価上昇で目立ったのが不人気エリアの東京東北部(荒川区・北区・葛飾区)で、2017年度23区の地価上昇トップは、なんと荒川区だ。
住みたい街ランキングには高級住宅エリアがズラリ
「SUUMO住みたい街ランキング2017 関東版」の「住みたい行政市区ランキング <全体>」を見ると、トップ3は港区、世田谷区、目黒区となっており、順位変動はあれどトップ3の顔ぶれはここ3年間変わっていない。以降、千代田区、中央区、文京区と、都心エリアが上位を独占する。
住みたい街エリアは、総じて地価が高い。渋谷・港区・中央区といった都心部住宅地は㎡当たり100万円を超え、千代田区に至っては300万円近くに達する。
一方、下位には葛飾区、足立区、荒川区が名を連ねている。この位置づけは、男女別やライフステージ別(単身・子供なし夫婦・ファミリー層)にみてもほとんどど変化が無い。
東京都財務局が発表している「平成29年地価公示 区市町村別用途別平均価格表」によれば、荒川区が40.46万円と頑張っているものの、足立区・葛飾区は30万円を切っている。住みたい街エリアの1/4以下の地価となっている。ちなみに調査では「穴場の駅ランキング」も同時に発表しており、上位には北千住、赤羽、池袋、大塚、巣鴨、駒込、田端、綾瀬が名を連ねている。
人気エリアの地価は鈍化し穴場が脚光を浴びる
国土交通省が9月に発表した基準地価によると、全国の住宅地地価は持ち直し傾向がみられるものの、いまだに下落傾向が続いている。一方、首都圏は若干ながらプラス傾向を続け、特に23区内は高い伸び率を維持している。
東京都23区住宅地の地価上昇率は3.3%と、前年度2.7%より上積みした。ここ数年高騰を続けてきた都心部住宅地の地価上昇率が漸く鈍化する一方で、相対的に地価水準の低いエリアの地価が上昇し始め、荒川区住宅地の地価は23区中最高の5.3%を記録した。
東京都財務局の「基準地上昇率順位一覧表(住宅地)」によれば、上昇率トップは南千住8丁目の6.3%、続いて西日暮里4丁目の6.1%と、荒川区がワンツーを独占した。その他、トップテンには北区中里、足立区綾瀬、北区上中里が顔を出す。
穴場ランキング上位も、地価は好調だ。ランキングトップの北千住は5.3%、赤羽は3.8%、巣鴨は4.5%、田端は4.5%と、いずれも区部平均を上回っている。地価が安いからと言って一律に上昇しているわけではなく、山手線・日比谷線・千代田線など、都心直結の鉄道沿線駅など利便性の高いエリアに地価上昇は限定されている。
割安だけが上昇の理由ではない
上昇率トップの南千住は、上野駅を始発とする常磐線沿線に位置する。もともと、つくばエクスプレスや日比谷線も乗り入れており、利便性は悪くない。2015年3月に常磐線が上野東京ラインと直結となり利便性が高まったことから、注目が集まった。
上昇率5.3%の北千住は、穴場ランキングでも連続3年でトップを維持している。従来より5路線が乗り入れ利便性が高かった上に、東京藝術大学・東京電機大学など5大学の誘致に成功している。若い学生の存在が街に活気を与え、マルイやルミネを核とする駅前も活況を呈している。
地価動向は、単なるリセールバリューではない。人気があるエリアには、質の良い商業施設や病院などが集まりやすい。最近はそれだけでなく、コンパクトシティの動きも本格化しつつある。2015年9月には「都市再生特別措置法」が改正され、自治体も行政インフラ・サービスなどの都市機能の集約に本腰を入れ始めた。住みやすいエリアと住みにくいエリアの優勝劣敗がこれまで以上にはっきりする、そんな時代がやってきた。住宅購入に当たっては、目先のお買い得だけに捉われるのではなく、その街の将来像を見据える眼が必要だ。(ZUU online 編集部)