中国市場は広大なのに、なぜ世界の小売り巨頭は敗走してしまうのだろうか。1月中旬、カルフールが中国事業を売却するのでは、とのうわさが流れた。カルフール側は即座にこれを否定した。しかしカルフールにはこの種のうわさがまとわりついている。昨年11月、阿里巴巴が欧尚(Auchan)と提携してからはとくにそうだ。そしてこれは、外資の中国市場で直面している困難を反映しているに違いない。ニュースサイト「今日頭条」が、外資の“敗走”と現下の“生存状況”について特集した。以下見ていこう。(1元=17.28円)

瑪莎百家(マークス&スペンサー) 大陸市場からの完全撤退

中国経済,小売業界,外資
(画像=testing / Shutterstock.com 2017年4月、中国・北京で撮影)

2018年1月、英国の小売巨頭マークス&スペンサーは、天猫(阿里巴巴)のオンライン店舗を閉鎖すると発表した。大陸市場からの完全撤退である。

マークス&スペンサーは2008年、上海の繁華街、南京西路に一号店をオープンした。その後10年、初めから終わりまで中国消費者の心をつかむことはできなかった。英国の100年百貨店は、ロンドンのオーソドックスなスタイルにこだわった。品質は素晴らしいが、店舗設計や、商品のスタイル、カラーで中国若い中産層に訴えかける力はなかった。

おりしもH&M、ZARA、ユニクロなどが急展開を始めた時代にあたり、競争力を欠いていた。

易買得(E-MART) 本土化うまく進まず

2017年5月、韓国新世界グループ旗下の大型スーパー易買得は、中国の5店舗を、卜蜂蓮花(LOTUS)を運営するタイの正大集団に売却した。これで残る中国店舗は、無錫店1店舗となった。この店もいずれ投げ売りされるだろう。

易買得は比較的早く1997年に中国市場へ進出した。しかし本土化はうまく進まなかった。売場の装飾、商品の品ぞろえとも、中国消費者の習慣にうまく適応できなかった。その結果、近年は赤字の連続だった。2015年は2億1000万元、2016年は、9400万元の欠損を出していた。

楽購(Tesco) 出店戦略誤る?

2014年、英国のスーパーTescoは中国市場から撤退した。華潤万家に事業譲渡したのである。

2004年、中国市場に進出したTescoは意欲に満ちあふれていた。5年で400億元を超す投資を行い、50のスーパーと30のショッピングセンターをオープンした。しかしそれは、慌ただしく立ち去る行きずりの旅人のようだった。

テスコは出店戦略を誤った。週末や休日に郊外のSCへ買い物に出かける、欧米風の思考から抜け出せなかった。テスコは出店地として郊外を選び、駐車場のキャパを確保した。しかしこのころはまだ中国のマイカー所有率は低く、ただ不便な場所に過ぎなかった。

英国人は中国本土の事情を熟知しないまま政策決定を行った。また全国統一の品ぞろえを行い、地域の味覚に合わせて調整することもしなかった。

楽天瑪特(ロッテマート) THAADミサイル配備の影響だけ?

2017年9月、ロッテマートは中国本土112店舗の売却を発表した。しかし年内の清算を目指したものの、2018年1月となっても一向に進展していない。

THAADミサイル配備に用地を提供したロッテグループに対する、中国での風当たりは強かった。しかしこのことだけで、ロッテマート経営不振の事実を覆い隠すことはできない。

ロッテマートの業績下降は、2013年から始まっている。2016年中国本土の売上は、前年比15.2%のマイナスだった。またある統計によれば、2013~2017年の5年間の損失は18億元に上るという。

ウォルマートは明確な方針打ち出す

ウォルマート中国でも2012年以来、閉店が相次いだ、不完全な統計だが過去6年間で68店舗を閉店している。こうした状況下、ウォルマート中国では、自身が株主でもあるネット通販2位の京東(JD)との連携を深め、O2O融合の取組みを進めている。実店舗は小型化、または会員制のサムズクラブ店舗とする。

ウォルマート中国は新トップの下で方針をはっきりさせた。したがって自然の成行きとして、カルフールの動向が極めて注目を集めるのだ。阿里巴巴が出資か?などの憶測が飛び交うのもそのためである。

中国撤退外資の墓碑銘に名を連ねるのか、O2O融合の新小売業として再生するか、カルフール中国にとって正念場の年となりそうである。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)