騰訊(テンセント)は2017年末、株式時価総額世界6位となった。1年で2倍に拡大している。その騰訊は、ソーシャルメディアや娯楽などの本業以外でも猪突猛進している。資本市場で大きく稼いでいるのだ。報道によると、騰訊は近年で1兆7000億円以上の投資を内外各方面に行ったという。

有名な投資先は、滴滴出行(配車アプリ)、美団(生活サービス)、58同城(生活サービス)、どである。その他にも細分化されたネット業界で覇を唱える、多くの優秀な企業に投資を行っている。

2017年下半期には、衆安(保険)、捜狐(検索)、閲文(ネット書籍)、易鑫(レンタル)4社の上場で、騰訊は少なくとも6900億円の上場益を得た。今年はいくら稼ぐつもりだろうか。ニュースサイト「今日頭条」が観測記事を載せている。以下、今年上場が噂される主要な会社を見ていこう。(1元=17.27円)

「騰訊音楽」--テンセントの“孝行息子”

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(画像=Webサイトより)

騰訊音楽は、騰訊の“孝行息子”である。騰訊音楽と中国音楽公司の合併以降は、騰訊旗下のQQ音楽、酷狗音楽、酷我音楽の3大音楽アプリに用いられ、その結果、国内音楽版権市場の70%を占めるまでになった。この業界のガリバーである。2016年の営業収益は、860憶円、純利益は104億円だった。それが2017年には、それぞれ1554億円、276億円に大幅増加したと見られている。

メディアの観測によれば、騰訊音楽は今年中に上場する。Spotifyとの提携もあり、100億ドルの企業価値が見込まれる。騰訊の持ち株は60%以上あり、少なくとも上場益60億ドルを手にすることになる。

「猫眼微影」--映画のネット配信、映画チケット販売など

昨年、猫眼と微影時代が合併し、騰訊と美団が新会社の大株主に名を連ねている。猫眼微影は、騰訊の“養子”のようなものである。業務は映画のネット配信、映画チケット販売、演劇公演全般、視聴技術研究など広範囲にわたる。そして美団、大衆点評、猫眼、微信と、4つの人気アプリにアクセスポイントを持つのは大きな強みだ。

上場後の企業価値は、30~40億ドルが見込まれている。騰訊の持ち分は10%前後、上場益3~4憶ドルを手にする。

「快手」--中国版YouTube

快手は現在最もホットな会社の一つである。主要業務は、動画の投稿、視聴アプリの運営で、中国版YouTubeといったところだ。アプリのダウンロード数は5億を超え、1日当たりのアクティブユーザーは6500万人、投稿動画数は1000万におよんでいる。騰訊創業者の馬化騰は、快手に“温度”を感じ、果断に3億5000万ドルの融資を行った。

上場後の企業価値は150~170億ドルが見込まれている。騰訊の持ち分は10%前後、上場益15~17億ドルを手にする。

「斗魚」と「B站」--Web放送局、動画配信サイト

斗魚は、生放送中心のWEB放送局である。武漢市にあり、“湖南互聯網四小龍”の一つと称されている。騰訊の支援の下、今年の上場が有力視されている。

上場後の企業価値は40億ドルが見込まれている。騰訊の持ち分は20%前後、上場益8憶ドルを手にする。

B站は、bilibili(嗶哩嗶哩)というブランド名で知られる動画配信サイトである。利用者の75%が24歳以下と、若者にターゲットを絞って成功している。

上場後の企業価値は30~35億ドルが見込まれている。騰訊の持ち分は10%前後、上場益3~3.5憶ドルを手にする。

抜群の投資収益

これら5社の上場が実現すれば、騰訊の懐には、90億ドル(1兆円)相当の上場益が入りそうである。映像、音楽、書籍を抑え、本業でもあるゲームと合わせて、娯楽関連の有力企業はすべて傘下に収めてしまおう、という戦略のようである。さらに“知識社交平台”の「知乎」や「微衆銀行」の上場もあり得るという。国内への投資は、極めて大きなリターンを伴い、返って来そうである。

さらに世界に目を向けると、2017年にはテスラやSpotifyへも出資した。最新のニュースはGoogleとの特許共同使用である。騰訊は今年も、内外で時価総額世界6位にふさわしい存在感を放ちそうだ。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)