医療とテクノロジーを融合された医療テックが、医療システムに大きな変化をもたらしている。医療の新しい幕開けを加速させるべく、個性あふれるスタートアップが目立つ。

元GoogleやUberなど国際IT企業の頭脳陣が集結する、先端テクノロジー医療機関フォワード、超高速バイオ3Dプリンターでヒト組織や臓器を作製するプレリス・バイオロジーズ、比較分析法で外科治療プロセスの効率化を図るエンピリック・ヘルスなど、注目のスタートアップ5社を紹介しよう。調達資金についてのデータは、クランチベース2018年1月22日現在のものを参照。

フォワード――AI、センサー、モバイル技術を駆使した未来の医療サービス

医療テック,スタートアップ,テクノロジー
(画像=フォワードWebサイトより)

元GoogleのエクゼクティブやUberのエンジニアリーダーが中心となって、2016年、サンフランシスコで立ち上げたフォワード(Forward)。全身の健康状態が即座に把握できるスキャナー、音声認識技術によるAIカルテ記入システムなど、最新のテクノロジーを活用した医療サービスを提供している。

検査結果を含む各患者のデータは独自の管理システムを通してケアチームに送信され、アルゴリズムが常に必要と思われるケアを査定する。一連のプロセスを徹底的に効率化することで、最高の医療サービスが期待できる。

会員制の医療機関であるため、健康保険の代わりに一律月額149ドル を支払うだけで、健康診断・相談から血液・遺伝子検査など基本的なサービスが無制限で利用できる。ウェアラブルデバイスによるモニタリングや24時間制のAIサポートも心強い。オプションで個人の需要に合わせた様々な医療サービスも受けられる。

フォワードに関してはその革新的な発想だけではなく、豪華な投資家陣も注目を集めている。シリコンバレーの著名投資家ブライアン・シンガーマン氏を創設者に、Googleのエリック・シュミット会長、Uberのギャレット・キャンプ会長、 セールスフォースのマーク・ベニオフCEO などがずらりと名を並べる。
https://goforward.com/your-data

プレリス・バイオロジーズ――超高速バイオ3Dプリンターでヒト組織を作製

レーザーベースのバイオ3Dプリント技術を活用して、医薬品開発や移植用に操作されたヒト組織や臓器を作製するプレリス・バイオロジーズ(Prellis Biologics)。毒性のない超高速3Dプリントで、バイオ3Dプリンターの課題であった速度や毒性問題を解決。

細胞生物学や生理学、共焦点レーザー顕微鏡などを専門分野とするメラニー・マチウ氏 と、がんや幹細胞、発生生物学が専門分野のノエル・ムリン氏という、ふたりの女性博士によってサンフランシスコで設立された。

昨年2回のシードラウンドで、シビライゼーション・ベンチャーズ(Civilization Ventures)や415ベンチャーズなどから、総額190万ドルを調達している。
https://www.prellisbio.com/tech/

エンピリック・ヘルス――比較分析法で外科治療プロセスの効率アップ

ソルトレークを拠点とするエンピリック・ヘルス(Empiric Health)。比較分析法を用いて、従来の「経験に基づいた医学」を「実証に基づいた医学」に移行させることで、外科チームがより的確で効率的な治療を行える環境を提供。結果的に労力や時間、コストの削減も期待できる。

非営利医療ケア団体インターマウンテン・ヘルスケア (Intermountain Healthcare)と、医療サービス企業オクセオン・パートナーズ(Oxceon Partners) が共同で2017年に立ち上げた 。インターマウンテン・ヘルスケアはシードラウンドを通して300万ドルを投じている 。
http://www.empirichealth.com/

メイヴィン・クリニック――女性起業家が立ち上げた女性専用オンラインクリニック

女性専用のオンラインヘルスケア、メイヴィン(Maven Clinic)。創設者の女性起業家ケイト・ライダー氏は、米国の女性の8割が自分や家族のために医療的な決断をくだしているにも関わらず、「既存のヘルスケアシステムは女性が利用しやすいものではない」という現状に着目。

女性がより簡単に必要な時に安心して利用できるオンラインクリニックを、2014年、ニューヨークで立ち上げた。2015年4月のベータ版開始時にはシードファンディングで220万ドルを調達(テッククランチ国際版2015年4月5日付け) 。

過去3回の資金調達ラウンドで、女性起業家を支援するベンチャーキャピタル企業フィーメール・ファンダーズ・ファンド(Female Founders Fund)やスプリング・マウンテン・キャピタルなどから総額1530万ドルを調達している。
Maven

バイオム――AI技術で腸内細菌を分析、アドバイスを提供

カリフォルニアで2016年に設立されたバイオム(Viome)。腸内細菌の結果がどのような影響をあたえるかをAI技術を利用して分析し、個人の需要に合った栄養アドバイスを提供している。

利用者は郵送で受けとった腸内細菌検査キット同社に送り返すだけで、検査結果とともに1年間継続的にアドバイスが受けられる。年間利用料は399ドル 。

腸内に約40兆個生息するといわれる腸内細菌 が、体や心に様々な影響をおよぼすことは数々の実験で立証されている。「ダイエットしても痩せない」「体が常にだるくてやる気がでない」「寝つきが悪い」などといった問題の原因が、実は腸内細菌だったというケースもあるそうだ。バイオムのサービスは、こうした体や心の不調を改善する手助けをしてくれる。
https://www.viome.com/ (アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)