シンカー:アベノミクスが円安や短期的な需要対策だけではなく、日本経済の内需を含めた本格的な景気拡大に寄与しているのは、非製造業の売上高経常利益率がしっかり上昇し、これまでの最高水準になっていることで説明できる。非製造の中のサービス業が、効率性や収益性が低いといわれてきた部門だからだ。内需を含めた景気拡大とこれまでのリストラの成果を背景に、非製造業の売上高経常利益率はしっかり上昇し、過去最高の水準になった。ただ、規制改革や自律的な産業構造の変化などによる利益率の改善は、デフレ完全脱却にとって痛し痒しの面がある。需要の拡大に対して供給余力の拡大を意味するため、物価上昇圧力を抑制する効果があるからだしかし、7-9月期の法人企業統計では非製造業の売上高経常利益率がとうとう伸び悩み始めたことが確認できた。賃金の上昇などによるコストの増加を、売上高の増加でカバーする余地が減っていることを意味する。高水準の利益率を維持するためには、企業の選択としては、売上高を更に増加させるか、価格を引き上げる必要が出てくることになる。サービス業は年度初めの4月に価格を改定する傾向があり、それ以降、物価上昇幅が拡大していく可能性がある。

SG証券・会田氏の分析
(画像=PIXTA)

12月のコア消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年同月比+0.9%と、11月の同+0.9%から変化はなかった。

2018年は1月にマイナスからプラスに転じて以降、上昇幅が順調に拡大してきた。

アベノミクスが円安や短期的な需要対策だけではなく、日本経済の内需を含めた本格的な景気拡大に寄与しているのは、非製造業の売上高経常利益率がしっかり上昇し、これまでの最高水準になっていることで説明できる。

非製造の中のサービス業が、効率性や収益性が低いといわれてきた部門だからだ。

内需を含めた景気拡大とこれまでのリストラの成果を背景に、非製造業の売上高経常利益率はしっかり上昇し、過去最高の水準になった。

ただ、規制改革や自律的な産業構造の変化などによる利益率の改善は、デフレ完全脱却にとって痛し痒しの面がある。

需要の拡大に対して供給余力の拡大を意味するため、物価上昇圧力を抑制する効果があるからだ。

しかし、7-9月期の法人企業統計では非製造業の売上高経常利益率がとうとう伸び悩み始めたことが確認できた。

賃金の上昇などによるコストの増加を、売上高の増加でカバーする余地が減っていることを意味する。

高水準の利益率を維持するためには、企業の選択としては、売上高を更に増加させるか、価格を引き上げる必要が出てくることになる。

利益率が上昇しなければ、日本経済の状態が好転したとはいえないが、上昇し続ければ、物価上昇圧力は強くならない。

賃金コストの増加を主として利益率の上昇が困難になれば、企業はようやく価格を引き上げ始める。

サービス業は年度初めの4月に価格を改定する傾向があり、それ以降、物価上昇幅が拡大していく可能性がある。

12月のコアコア消費者物価指数(除く生鮮食品・エネルギー)も前年同月比+0.3%と、11月から変化は無かったが、上昇幅が徐々に拡大してきている。

日本経済は物価上昇が加速するサイクルに入ってきている可能性がある。

春闘での強い賃金上昇も確認され、2019年には物価上昇率の加速が鮮明となり、年末にはコア消費者物価指数の前年同月比は+1%をしっかり上回ってくると考えらる。

1月の東京都区部のコア消費者物価指数も前年同月比+0.7%と、前年の大幅な上昇の反動で上昇幅は12月の同+0.8%より縮小したが、2・3月で再び拡大に転じるだろう。

図)売上高経常利益率

売上高経常利益率
(画像=財務省、SG)

ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
チーフエコノミスト
会田卓司