ドル円予想レンジ108.15-111.20

「ユーロがドルに対して非常に強くなり、ドルがユーロに対して弱くなりました。その際にドルが他の通貨に対しても若干弱くなったということですので、特に円高が起こったということでもないように思います」-。

これは1/23の黒田日銀総裁による解説だ。加えて1/9の“オペ減額≒日銀正常化への地均し”とした市場観測を一蹴し、金融政策の先行きを示すものでは全くない、と明言している。しかし筆者はこれら発言が円高進行に対する瑕疵(かし)責任の回避にも映った。

「2年目突入」で焦るトランプ政権はドル安誘因か

一方、トランプ大統領は政権発足から1年目となる1/20に政府機関の一部閉鎖という事態を招くなど、議会調整に難儀している。複数の米TV局が発表した最近の世論調査では、トランプ大統領の支持率が37-8%に留まり歴代最低と伝えている。

そうした中で1/24に「theUSisopenforbusinessandwelcomeda weakerdollar(貿易の観点から言えば、弱いドルが米国にとって良いことは明らかだ)」とムニューシン財務長官が発言したことで、トランプ政権が貿易不均衡を是正する姿勢を強めるのではないか、との警戒がドル売りを強めた。

“長期的には、ドルの強さは米経済の強さ“ともムニューシン財務長官は述べているのだが、米貿易赤字縮小はそもそものトランプ選挙公約でもある。ましてや、前出の支持率低迷など、総合的な業績に向けられた視線が厳しいなかでは保護主義的な実行をトランプ政権が強める、との警戒が拡がってもなんら不思議ではない。

1/25に環太平洋経済連携協定(TPP)復帰を検討する用意があるとのトランプ表明もその一環か。協定には「為替条項」を盛り込む要求も想定されドル安志向も燻る。

因みに、筆者が思わず目を覆いたくなったのは、1/24に財務省が発表した2017年貿易統計速報だ。対米貿易収支が7兆356億円の黒字として2年ぶりに黒字幅拡大、と公表している。トランプ政権側からすれば中間選挙を控え、日本に譲歩を求める格好のデータになり得る。冒頭の黒田円高解説を託言とは指摘しないが、米政権側がジリジリと日本側に譲歩を迫るムードを嗅ぎ取ったのではないか。計らずとも黒田総裁は中央銀行総裁の資質にグローバルな視点や国際的な関わり合いの必要性を1/23の会見で述べている。

1/29週のドル円

上値焦点は1/24高値110.345、節目110.50。越えれば1/22-23高値圏111.195-225視野。下値焦点は1/25安値108.485、昨年9/11安値 108.15、同年9/8安値107.31。

武部力也,週間為替相場見通し
(画像=岡三オンライン証券)

武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト