住宅を買おうと決めて、物件と住宅ローンをいろいろと調べ、ようやく物件と住宅ローンを決めた。これから住宅ローンを申し込むが、審査が通るのか心配だ。住宅ローンの審査はどのくらいの期間が必要なのか。また審査で問題となることは何なのか。
住宅ローンの審査で求められること
住宅ローンの審査で求められることは何だろうか。住宅ローンには「事前審査」と「本審査」があり、それぞれの審査について確認する。
事前審査の目的は、物件の売買契約の前にローンを借りることができるかの事前確認のために行われる。事前審査では、主に住宅ローンの返済能力を審査され、年齢や年収、職業、借り入れ状況などが基準を満たしているかをチェックされる。
本審査には仮審査よりも多くの資料を提出し、より詳細な審査が行われる。ローンを組んでいる人が返済できなくなった際に重要となる物件の担保評価についても重点的に審査する。また、仮審査で団信(団体信用生命保険)の申し込みをしていない場合は、本審査で団信の審査が行われることになる。
住宅ローンの審査ではどのような項目が確認されているのだろうか。国土交通省の「民間住宅ローンの実態に関する調査」の2016年の結果報告書にて、金融機関にて考慮されている審査項目の割合が公表されている。それによると9割以上(2014年から2016年の平均)の金融機関で考慮されている項目は次の9つだ。
- 完済時年齢
- 健康状態
- 借入時年齢
- 担保評価
- 勤続年数
- 年収
- 連帯保障
- 金融機関の営業エリア
- 返済負担率
逆に、あまり重視されない審査項目(考慮される金融機関は3割以下)は次の4つである。
- 家族構成
- 所有資産
- 雇用先の規模
- 性別
この情報から、金融機関にて重視される審査項目とあまり重視されない審査項目を理解できる。
住宅ローンの審査ではどのような資料を提出するのか
住宅ローンの審査で提出する資料は事前審査と本審査で異なる。事前審査では一部の資料を提出し、本審査で全ての資料を提出することになる。次に事前審査と本審査で提出する資料の例を表す。
事前審査では次の資料などを提出する。
- 住宅ローン借り入れの申込書
- 本人確認資料(運転免許証と健康保険証の両方)
- 連帯保証人や担保提供者の本人確認資料(運転免許証と健康保険証の両方)
- 物件の確認資料
それに加え、職業別に次の資料も提出する。
- サラリーマンや公務員:源泉徴収票(前年分)
- 自営業者:確定申告書・付表のコピー(3年分)
- 法人代表者:源泉徴収票(前年分)または確定申告書・付表のコピー(3年分)に加え、法人の決算報告書(前3年分)
事前審査で必要な「物件の確認資料」は、戸建てやマンション、新築や中古で変わってくる。新築戸建ての場合は次のものを提出する。
- パンフレットやチラシなど物件の概要資料
- 間取図・配置図
- 土地登記事項証明書
- 土地の公図(土地の形を表したもの)
本審査では、上記の事前審査の資料に加え、次の資料などを提出する。
- 団信(団体信用生命保険)の申込書
- 住民票
- 印鑑証明書
- 連帯保証人や担保提供者の印鑑証明書
- 物件の確認資料
本審査では職業別に次の資料を提出する。
- サラリーマンや公務員:住民税決定通知書または課税証明書
- 自営業者:申告所得税納税証明書(その1、その2)、事業税納税証明書(3年分)
- 法人代表者:法人納税証明書(その1、その2)(3年分)、法人事業税納税証明書(3年分)
本審査では「物件の確認資料」(新築一戸建の場合)として次のものを提出する。
- 売買契約書
- 重要事項説明書
- 建築確認済証
- 検査済証
- 登記簿謄本
上で示したのは提出する資料の例であり、提出する資料は金融機関や住宅ローンによって異なる。実際の申し込みに必要な資料は住宅ローンを申し込む金融機関に確認したい。
住宅ローンの申し込みから入居までの流れ
住宅の購入の始めのステップは、物件や住宅ローンの情報収集をし、物件の問い合わせや見学をして物件と住宅ローンを絞り込む。そして、物件と住宅ローンを決定した後、住宅ローンを申し込むことになる。住宅ローンの申し込みから入居まではどのような流れになるのだろうか。
まずは物件の購入申し込みと住宅ローンの事前審査を申し込む。事前審査の結果が出るまで数日から1週間程度かかる。事前審査が通ったら、物件の売買契約を結び、住宅ローンの本審査に申し込む。本審査は2週間程度で結果が出る。本審査が通ったら住宅ローンの契約を行う。融資が行われるまでに内覧チェックなどを行っておく。融資が行われたら、残金決済を行い、マイホームの引き渡し、入居、不動産登記へと進む。
尚、上記の事前審査と本審査の期間は目安であり、金融機関によっても異なる。審査の期間が気になる場合は金融機関の担当者に確認しておくのがいいだろう。
住宅ローン審査で問題になる信用情報について
住宅ローンに申し込んで審査結果が出るまで不安になることがあるかもしれない。審査で問題になることについて事前に確認できていれば、そのような不安は和らぐだろう。ここでは、住宅ローンの審査で問題になることのうち、信用情報に関連するものを紹介する。
信用情報とは、クレジットやローンなどの契約内容や返済・支払状況・借入残高などの取引の情報である。個人の信用情報は、CIC(Credit Information Center、シー・アイ・シー)、JICC(日本信用情報機構)、JBA(一般社団法人全国銀行協会)といった法人が管理している。この3つの主な違いは加盟している金融機関の違いになる。CICはクレジット会社が、JICCは消費者金融が、JBAは銀行が中心である。JBAはKSC(全国銀行個人信用情報センター)と呼ばれることもある。
過去に、クレジットカード支払いや借金・ローン返済の遅れなどがあった場合、情報はその金融機関が加盟している信用情報に登録される。それらの情報が登録されていると住宅ローンの審査で不利に働く可能性がある。
過去の支払いや返済に問題がなくても信用情報が影響することがある。それは、クルマのローンやリボ払いなどの借り入れが残っている場合だ。住宅ローンの審査時に別のローンが残っている場合には、一時的に親に借りるなどして、それらのローンを審査前に返済しておく方が望ましい。さらには、スマートフォンなどの分割払いも借り入れとして審査されることもあるので気を付けたい。
銀行系のカードローン枠も影響することがある。過去にカードローンを利用して現在は完済していても、カードローン枠が数百万円など残っていると審査に不利な条件となる。住宅ローンの審査の前に不要なカードローン枠は解約しておくほうが良い。またクレジットカードのキャッシング枠も不要なものについては減額やゼロにしてもらうほうが良いだろう。
信用情報はCIC、JICC、JBAのWebサイトから情報開示請求ができるため、自分の個人信用情報が不安な場合は開示請求して確認することができる。
住宅ローン審査で問題になる他のこと
住宅ローンの審査では、信用情報以外にも影響することが多い。次にその一部を紹介する。
大きく影響する審査項目が「返済負担率」(返済比率)だ。返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合であり、住宅ローン審査で重要な項目になる。フラット35の返済負担率の基準は年収400万円未満が30%以下、年収400万円以上が35%以下である。他の住宅ローンでも30や35%あたりが基準となるようだ。但し、審査とは別に家計のことを考えると、返済負担率はできれば20%以下に抑えるほうが望ましい。
健康に不安があるときは団信(団体信用生命保険)に加入できないことがある。概ね3年以内の病歴は団信の申込書で告知が必要になる。持病のために服薬していても審査が通ることがあるため告知は正確に行う。虚偽の告知を行った場合には保険金が下りなくなるリスクがあることに注意しよう。
勤続年数が1年未満など、短い場合も審査で不利になる。一般的に勤続年数は3年以上が望ましいと言われている。しかし、審査での勤続年数の扱いについては金融機関によっても異なる。金融機関によっては勤続年数の審査基準を公表している場合もあるので、自分の勤続年数が短い場合にはそれらの情報を調べておくのが良い。
雇用形態として、正社員以外の契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなども収入の安定性から審査に影響することがある。この基準も金融機関によって異なるため、不安な場合は住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談すると良いだろう。
ローンを申し込む本人とは関係ないことで審査が通らないこともある。それは物件に問題がある場合だ。違法建築で、例えば建ぺい率や容積率がオーバーしているなどの物件は審査が通らないことがある。さらには、物件に問題はなくても、物件の売り主が金融機関のブラックリストに登録されている場合も審査に支障が出る。
住宅ローンの審査に困ったら、購入する物件を扱う不動産会社に相談することも選択肢の一つとなる。不動産会社が提携する金融機関の住宅ローンは審査基準が緩いこともあるので、他の金融機関に断られても審査が通ることがあるのだ。
ここまで住宅ローンの審査項目から、審査に提出する書類、住宅ローンの申し込みから入居までの流れ、審査で問題となることを紹介してきた。金融機関により考慮される審査項目が異なるため、特定の項目が審査に不利な状態であっても、一部の金融機関では審査に通ることもある。また、審査に問題になることがあっても、それらを回避できることもある。
これから住宅ローンを申し込む予定で、住宅ローンの審査をスムーズに進めたいのであれば、住宅ローンに詳しいファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめしたい。多くの金融機関の住宅ローンの審査情報を持っている専門家であれば、審査のための適切なアドバイスを期待できる。(松本雄一、ビジネス・金融アドバイザー)