全国シェアほぼ100%を占めるほどの、すだち生産量を誇る徳島。他にも脂肪分が少なく程よい歯ごたえのある「阿波尾鶏」、お菓子以外に飲み物や料理にも使われる「阿波和三盆糖」など、グルメ関連の特産品を豊富に有しています。今回は、徳島を代表する特産品の中から「とくしま市民遺産(徳島市が選定した、徳島市の食文化、景観など)」に選ばれた和菓子と郷土料理、そして農産物をピックアップして紹介します。
良質な素材で作られる「滝のやきもち」
「滝のやきもち」は小判に似た平たい形と菊の文様が印象的なお菓子です。石臼挽きのモチ米とうるち米の皮で小豆あんを包み、表面に菊模様の型を押し当てて焼きあげました。薄皮と繊細な小豆あんのバランスが整っていて焼き目も香ばしく、優しい味わいが楽しめます。
米粉の練り上げと小豆の炊き上げに使用している水は、徳島市にある眉山の麓から湧き出ている名水「錦竜水」。ミネラル分とマグネシウムイオン・カルシウムイオンを多量に含んでいる硬水で、「錦竜水」を含む眉山湧水群の中でも高い認知度を誇ります。
徳島市眉山町大滝山の茶店が販売していたこと、そして茶店の近くに滝が流れていたことが名前の由来となったのだとか。1585年に徳島城を築いた藩主・蜂須賀蓬庵家政公へ献上したことによって御用菓子となりました。それから400年以上を経た現在も製法は当時と変わらず手作りのままです。シンプルで素朴な、それでいて職人の技が随所に光る滝のやきもちは、県内外問わず多くの人々から愛されています。
変わったビジュアルでも味は絶品「ボウゼの姿ずし」
「徳島を代表する秋の味といえば?」と聞いたとき、徳島県民の多くが口にするであろう料理が、秋祭りを迎える時期に作られていた「ボウゼの姿ずし」です。以前は徳島の各家庭にて作られていたようですが、現在は手作りする家庭も減少しています。しかし、2007年に農林水産省がボウゼの姿ずしを「農山漁村の郷土料理百選」に選出し、近年では県内のスーパーや道の駅などで購入できるようになったそうです。
徳島の方言でもあるボウゼとは一般的には「イボダイ」と呼ばれている白身魚で、他にも「エボダイ」や「シズ」、「ウボゼ」などの名称があります。8月下旬~10月下旬の2ヵ月間に底引き網で漁獲されるボウゼは刺身やフライ、煮付けなどで味わわれることも。あっさり淡泊な風味と骨があまりないのが特徴です。
ボウゼの姿ずしを作る際は、まず頭部を付けた状態で背開きにしたボウゼを酢と塩で漬け込みます。ボウゼを漬けている間にゆず酢あるいは橙酢で味付けしたすし飯を作り、一定時間漬け込んだボウゼに詰めれば完成です。頭が付いたままなので人によっては若干驚くかもしれませんが、酸味とあっさりしたボウゼの味わいのバランスが絶妙で、ひと口またひと口と食べたくなる伝統食です。
甘さたっぷり黄金芋「なると金時」
徳島の農産物で有名なのが「なると金時」です。鳴門市と徳島市、そして板野郡で栽培されたサツマイモだけがなると金時を名乗れる、限られた徳島ブランドです。
はじめは「高系十四号」を改良したサツマイモでしたが、鳴門市大毛島で収穫されたこと、中の色が黄金のようなサツマイモをもともと金時芋と呼んでいたことから、1980年頃になると金時と命名されました。夏の終わり~秋に収穫されますが、収穫後に貯蔵しているので1年中全国各地に出荷可能です。関東の方ではサツマイモの中でも高級な品種として知られています。
なると金時は、色鮮やかな赤い表皮と、名前の通り綺麗な黄金色をした中身のコントラストを楽しむことができ、ビタミンCと食物繊維が豊富です。高糖度なので甘味が強く、焼き芋にすると抜群の美味しさが楽しめます。また、素材の甘味を活かすべく和洋菓子の材料として用いられるほか、天ぷらや蒸し料理にしてもおいしく食べられる逸品です。
他にも、「鳴門わかめ」や、「阿波ういろう」など、まだまだ多くの特産品がある徳島。どの品にもさまざまな歴史があり、誕生のきっかけや命名の由来などを知るだけでも楽しめそうです。(提供:JIMOTOZINE)