国内空港の旅客数が、最近大きく伸びている。国内便も伸びているが、それ以上に国際便の勢いは著しい。「国土交通省統計暦年別空港管理状況」によればここ5年で5022万人から8196万人に増加している。理由は、もちろん訪日外国人だ。

伸びているのは、羽田・関空といった大都市圏だけではない。新千歳・福岡・那覇や、さらには高松といった中小空港でも増加が見られ、地方活性化に貢献している。

増え続ける訪日観光客と航空便の活況

観光客
(画像=PIXTA ※画像はイメージです)

「日本政府観光局統計 暦年別訪日外客数」によれば、2012年に836万人に過ぎなかった訪日観光客は、ここ5年間で急速な伸長を続け、2017年には2869万人に達した。中国・韓国・香港・台湾をはじめとするアジア圏が圧倒的シェアを占めるものの、北米・ヨーロッパからの観光客も着実に増えている。

高級腕時計・宝飾品の爆買いを始め様々なムーブメントを引き起こした訪日観光客は、航空業界や空港にも恩恵をもたらしている。日本の空港整備及び航空業界は、日本人旅客数の伸びを支えとして発展してきた。国際便の利用者数にはその事実が如実に現れている。5年前までは日本人出国者が7割前後のウエイトを占め、訪日観光客は少数派に過ぎなかった。

ところが、状況は一変した。両者の数が逆転したのは2015年、その後も日本人出国者が伸び悩む中で、差は拡がりつつある。

伸長著しい大都市圏拠点空港

戦後日本の航空路線は、GHQに接収された空港の返還を受け、羽田・伊丹・名古屋・福岡・三沢・新千歳の6空港体制でスタートした。その後日本は、一貫して全国各地への空港整備を進め、現在では97もの空港(会社管理4・国管理19・地方管理59・その他17)が運営されている。

国土交通省は、会社管理・国管理空港のうち成田・関空・羽田・伊丹を、国際的なゲートウエイ・国内交流の核としての役割を担う「大都市圏拠点空港」と位置付けている。この他、新千歳・福岡・那覇は、地域ブロックの中心として「主要地域拠点空港」と定めている。訪日観光客で利用客が伸びているのは、これらの空港だ。

羽田空港では、2010年より沖合にD滑走路が新設され、国際線地区が供用開始となった。供用前は300万人に満たなかった国際線の利用客は、2016年には1500万人を超えた。

既に東京湾上空は飽和状態にあり、滑走路を増設しても大幅な増便は難しい状況だ。それでも2020年オリンピック開催に向け需要が増えており、現在は、南風好天時の飛行経路の見直しなど、既存施設の効率的な利用で増便に対応している。

関空も、好調が続いている。国際線の乗降客数は、ここ5年間で972万人から1865万人と、倍近くに増えた。起爆剤はLCC(格安航空会社)だ。

関空には、上海を拠点とする春秋航空や、日本初のLCCピーチエアなど、19社ものLCCが就航している。24時間フル稼働、LCC専用ターミナルの設置といった努力の積み重ねが功を奏した格好だ。

ローカルの拠点空港も健闘

訪日観光客の訪問先は大都市圏が中心で、訪問率(外国人入国者がそのを訪れた割合)は、関東運輸局管内が42.0%、近畿が45.5%に達した。地方の中でも、九州は14.1%、沖縄は8.5%、北海道は8.8%と健闘している。

九州は距離的に近い韓国人観光客の訪問率が33.1%と際立っており、関東の13.5%を凌駕し、近畿の33.5%と拮抗している。九州の玄関口である福岡空港の国際線乗降客も、ここ5年間で245万人から499万人に倍増した。

高松空港好調の背景

訪日観光客の恩恵は、地方空港にあまねく行き渡っているわけではない。そんな中でも高松空港は香川県や経済団体とも連携を図りながら、空港を利用した観光促進を図ってきた。その結果、国際線乗降客を5万人から20万人へ4倍増させている。この間に国内線も124万人から164万人に増加した。

こうした地道な取り組みは空港の活性化だけでなく、香川県に120億円という経済効果をもたらした。

政府は2020年までの訪日観光客目標を4000万人まで増やすと同時に、恩恵を地方にもディストリビュートする方針だ。高松空港の成功事例は、地方空港でも取り組み次第によっては、空港という資源を活かせば、増え続けるインバウンド需要を取り込み、地方の活性化につなげられることを示唆している。(ZUU online 編集部)