アプリを導入して業務効率化を図る企業が増える中、クラウド市場のほぼ半分を占めるAmazonのクラウドサービス「AWS」や、追い上げるMicrosoft Azureに対抗しようと、Googleが大きく動き出している。

Googleは、モバイルデバイス・ソリューション企業MobileIronと共同で、クラウド環境でアプリを簡単・安全に売買できる事業向けソリューションを提供すると発表した。Google Cloud Platformのコマース プラットフォーム「Orbitera」と、MobileIronのセキュリティーおよびビジネス用モバイル管理ツールを融合させたサービスで、第3四半期に開始予定という。

シームレスなソリューションへの需要に対応したクラウドアプリ・マーケット

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(画像=Thinkstock/GettyImages)

現在、多くの企業が企業向けアプリの導入で業務の効率化を図ろうとしている。

難点とされているのは、組織内部での連携のために複数のアプリをダウンロードする必要があることや、すべてのソースが信頼できるわけではないことなどだ。

また多くのビジネスが様々なデバイスでアプリを利用しているものの、OSやセキュリティー、所有権が統一されておらず、必要に応じてネットワークやコンピューターの設備といったリソースを提供できるように予測・準備しておく作業(プロビジョニング)が難しくなる。

「もっと簡単かつ安全にアプリを導入したい」という企業の声受け、動きだしたのがGoogleだ。Google Orbiteraは、クラウド環境でのアプリ売買が簡単に行えるエコシステムの構築を目的とするサービスだが、MobileIronのサービスと組み合わせることで、さらに効率化や安全性の向上を図ることができれる。

具体的には「顧客層に応じたサービスの振り分け」「取引市場と顧客に対するへの自社サービス・商品の区別」「デバイス、データ、音声、サードパーティ・クラウドサービスの月々の一括請求」「アクセスの安全性確保」「アプリ利用状況分析」などが可能になる。

GoogleがMobileIronとの提携関係で目指しているのは、企業がビジネス用の総合プラットフォームを容易に素早く構築できる環境の提供だ。新たなソリューションでは、承認を受けた顧客や提携先がアプリへのアクセス、認証、権利付与などを行えるほか、バックエンド・コンピューターやストレージとしてGoogle Cloud Platformを利用できる。

Googleのクラウド型アプリ「G Suite」の強化にも役立ちそうだ。

クラウドサービスが2000億ドル市場に成長

Google Cloud PlatformはGoogleの中核となるインフラ、データ解析、機械学習を活用したオープンソース・クラウドプラットフォームで、「あらゆる業種に対応した安全・低コスト・多機能なサービス」を売りうりにしている。任天堂、ANA、コカ・コーラ、Spotify、Snapchatなど大手にも利用されている。

Googleがクラウド市場へのさらなる進撃を狙い、コマース・スタートアップ、Orbiteraを推定1億ドルで買収したたのは2016年のこと(テッククランチ2016年8月8日付記事)。

ガートナーが2017年2月22日に発表した調査結果によると、2016年、公共のクラウドサービスは2092億ドル市場へと成長を遂げ、2017年には2468億ドル(18%増)に達すると予想されていた。その中でも「SaaS」や「IaaS(Infrastructure as a Service。インフラと開発環境がセットで用意されているサービス)」の需要が最も伸びると期待されていた。 クラウド市場シェアの約半分(47.1%)をAWSが占めており、Microsoft Azure(10.0%)、Google cloud Platform(3.95%)、IBM Softlayer(2.77%)といったライバルIT大手のクラウドサービスを大きく引き離している。

しかし非営利組織クラウド・セキュリティー・アライアンスの2017年データによると、クラウド基盤プラットフォームの市場シェアでは、トップのAWS(41.5%)をMicrosoft Azure(29.4%)が追い上げている。Google Cloud Platform(3.0%)とこの分野でも影が薄く、強力な起爆剤を投じて体制の逆転を狙う必要性に駆られている。

エンタープライズ・モビリティ事業管理ツールを提供するMobileIron

Googleと共同でこのプラットフォームを開発したMobileIronは、カリフォルニアにを拠点を置く携帯端末管理ソフト企業だ。モバイルデバイス管理、モバイルアプリ管理、モバイルコンテント管理を含むエンタープライズ・モビリティ事業管理ツールを、企業規模を問わず提供している。

2007年の設立以来、セコイアキャピタルやノースウェスト・ベンチャー・パートナーズ、トバ・キャピタルなどから総額1.64億ドルを調達。2014年にはクラウドデータサービス・スタートアップのアヴェレール(Averail)を買収し、上場も果たした。

GoogleとMobileIronのような総合クラウドサービスは、けっして目新しいものではない。例えば米国大手電気通信事業AT&Tやベライゾン・コミュニケーションズは、「NetBond」というプライベートネットワークを利用して、ユーザーがAppDirectのマーケットプレースやクラウドサービスから安全にソフトウェア・ソリューションを購入できるパッケージを提供している。

サイモン・ビディスコンブCEOはGoogleとともに、「運用者が売りたい手法でアプリを売れる、CIOが買いたい手法アプリを買える」環境作りに務めていくとコメントしている(MobileIron2018年1月30日付プレスリリースより)。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)