日経平均株価は2月6日、1071円84銭安の2万1610円24銭で取引を終えた。2月に入り相場が荒れているが、2017年を振り返ると日経平均株価がバブル崩壊後の高値水準まで上昇するなど、2017年の国内株式市場は好調な一年だった。しかし、個別銘柄の株価は業績等にも左右されるため、儲かった人もいれば、損をしてしまった人もいることだろう。

株の売買で利益を得た人は税金を支払う必要がある一方、損をしてしまった人は確定申告を行うことで節税できる可能性があることをご存知だろうか。

「投資用口座」の選択で対応は異なる

確定申告,株式
(画像=PIXTA)

株式投資や投資信託等の投資を始める時には、投資を行うための証券口座を開設する。

証券口座は、「特定口座」と「一般口座」、そして、少額投資非課税制度の通常「NISA口座(ジュニアNISA)」、2018年1月から始まった積立型の「つみたてNISA」に分かれている。

投資家は原則、自分で株式等の売買による損益を計算して、確定申告を行わなければならないが、取引の回数が多くなれば損益の計算をすることは面倒だ。一般口座を利用する場合には、一年間の取引をまとめて譲渡損益の計算を自分で行ない、確定申告をする必要がある。売買回数が多い場合には、大変な作業だ。

一方、特定口座を利用すれば、株式等の売買内容の記録や税金の計算等を金融機関が代行してくれるので、投資家が行う確定申告の手間を軽減することができる。税金が自動的に徴収されてしまう「源泉徴収あり」と、「源泉徴収なし」の2つに分かれている。

特定口座の「源泉徴収あり」を利用すれば、証券会社等が譲渡損益等を計算した年間取引報告書を作成して送ってくれ、さらに、税金も源泉徴収してくれるので、税金をわざわざ支払う必要はない。反対に、「源泉徴収なし」を利用すれば、年間取引報告書はあっても、税金の支払いは自分で行わなければならない。

株の売買で利益を得た場合には税金を支払わなければならないが、損失が発生した場合には税金を支払う必要はない。特定口座の主な対象商品には、国内の上場株式の他、上場投資信託、株式投資信託、公社債投信等様々だ。

複数の金融機関で特定口座を開設すれば、利益が発生した口座もあれば、損失が発生した口座もあるだろう。納税の手間を省くことができる特定口座だが、損失が発生している口座がある場合には、あえて確定申告を行うことで、利益の発生した口座と損失が発生したことで相殺を行うことができる、いわゆる損益通算を行うことができるようになる。

なお、通常のNISA専用の口座では、①毎年120万円を、②最長5年間まで、③投資総額最大600万円まで、投資することができる。通常であれば利益に対して20.315%の税金がかかる所を、NISA口座の投資枠で発生した利益に対しては非課税にできるメリットがある。利益に税金を支払わなくて済む。

しかし、NISA口座で購入した株や投資信託等は、投資で発生した利益に対して税金がかからないというメリットがある一方で、特定口座や一般口座の株式等の利益と損益通算を行えないというデメリットがある。

NISA口座で損失が発生しているからと損切り(ロスカット)を行っても損益通算を行えない。損失をドブに捨てることになるだけなので、利益になるまでひたすら塩漬けに甘んじることにならざるを得ない。NISA口座の活用には注意が必要になることは覚えておきたい。

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確定申告で1年間の損失を3年間繰り越せる

特定口座や一般口座で損失が発生した場合には、必ず確定申告を行おう。確定申告を行えば、その損失を3年間繰り越すことができるようになる。損失があまりにも大きい場合には翌年に損失を繰り越すことができ、翌年に発生した株の利益と繰り越した損失とを相殺することができ、結果的に、翌年の利益を減らすことができるようになる。利益が少しでも発生すればそれにかかる税金も少なくなるので、節税効果が期待できるようになる。

2017年の投資の損益が、損失100万円になった場合で具体的に考えてみよう。損失が繰り越せるのは3年間なので、2018、2019、2020年まで繰り越せることになる。2018年の利益が100万円なら2017年の損失100万円と相殺できるので、利益はゼロにできる。その結果、税金もゼロにできる。万一、利益以上に損失が発生して損失が残ってしまった場合には、残った損失をさらに翌年の2019に繰り越すことができる。

ただし、損失の繰り越しを行うためには、株の売買をしなかった年でも確定申告を行わなければならない。多少面倒にはなるが、損失が繰り越せるというオトクな制度を利用するために必ず確定申告を行いたい。

なお、確定申告を行えば、会社員で得た給料と株式投資等で発生した損失を損益通算できるのかと言えば、それはできない。給料は総合課税となるが、株式等で発生した損益は「申告分離課税」になるため、株式等で税金の計算を行わなければならないからだ。そのため、損失の繰越控除を行うことができるようになっている。

会社員は、年末調整が行われて税金が源泉徴収されているため、自分がどの程度の税金を支払っているかということに無頓着になってしまいがちだが、消費税が導入されてから、税率はどんどん上がり10%になる可能性もある。税金の仕組みをしっかりと理解し活用できなければ、長い人生でたまるお金はもちろんのこと、それによって作り出される生活、時間、精神的なゆとりに大きな差が開くばかりだろう。ゆとりある人生を楽しく送るためにも、税金の仕組みについて理解しておき、お金を自らコントロールできるようにしておくことが大切だろう。

横山利香(よこやまりか)
国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。ファイナンシャル・プランナー。相続士。WAFP関東理事。「会社四季報オンライン」や「All About株式戦略マル秘レポート」での連載や、ヤフーファイナンスの「株価予想」でもマーケットコメントを執筆する等、株式投資や不動産投資といった投資や資産運用をテーマに執筆、メルマガ発行、講演活動、株塾を行う。公式サイト「横山利香の資産運用コンシェルジュ

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