投資教育の第一人者・小次郎講師が「移動平均線大循環分析」を解説!

移動平均線
2017年8月10日頃~2018年1月20日頃の日経平均日足チャート(TradingViewより作成)

一目均衡表やボリンジャーバンド、RSIにストキャスティクス……etc. テクニカル分析に用いられる指標は、トレンド系指標(相場の方向性を追いかけるもの)・オシレータ系(売られすぎ・買われすぎなど相場の状態を示すもの)問わず、実に多岐にわたります。

そのなかでも、初心者からベテランまで最も多くの人が使っている「移動平均線(Moving Average,MA)」。テクニカル分析で一番基本となる指標であり、証券各社が提供するトレードツールにも機能としてまず間違いなく搭載されています。

そこで今回は『移動平均線 究極の読み方・使い方』(小次郎講師 著)から、テクニカル分析の王道にして基本ともいえる移動平均線を用いた分析手法、「移動平均線大循環分析」を学びなおしてみましょう。

「移動平均線大循環分析」とは

株でも先物でもFXでも、投資をしたことがある人ならば、チャートに移動平均線を重ね合わせて見たことが一度はあるでしょう。そのとき、ほとんどの人は短期・中期・長期の3本の移動平均線を表示させていたのではないでしょうか。

そして「短期線が中・長期線を、中期線ならば長期線を下から上に横切るようにクロス(=ゴールデンクロス、GC)すれば上昇トレンド入りを示唆し、上から下に割り込むようにクロス(=デッドクロス、DC)すれば下降トレンドに入ることを示唆する」というところまでは知っていることと思います。

「移動平均線大循環分析」とは、この3本の移動平均線の位置関係(6種)でもって相場のステージをとらえ、トレンドを読み取っていくものになります。具体的には下図のようになります。

移動平均線
「移動平均線大循環分析」の循環の様子(『移動平均線 究極の読み方・使い方』P.64の図を基に作成)

ケーススタディで学ぶ相場の優位点(エッジ)

実際のチャートで、循環の具体例をみてみましょう。

移動平均線
2013年5月10日頃~2013年8月10日頃の日経平均日足チャート(TradingViewより作成)

上図左側において、下に1と書いてある時期は順調に上昇していますが、ある日大陰線が出現。翌営業日も続落したことで短期線(5MA、黄色)と中期線(10MA、オレンジ)のDCが生じ、ステージ2「上昇トレンドの終わり」が示唆されました。そこからさらに「短期線と長期線(20MA、水色)」「中期線と長期線」と連続でDCが発生し、ステージ4(安定下降期)に入ったことがわかります。

その後しばらくもみ合いが続き、1万2400円台で底を打ったあとに今度は短期線と中期線がGCしてステージが5に変化、その後もGCが相次ぎ、安定上昇期のステージ1へと循環する様が見て取れます。

このように、相場は波のように動くのでステージは基本的に「1→2→……→6→1」という順で循環します。また、相場のもみ合い時や、利確売り・押し目買いの局面などではこれらのステージが長引いたり、「3から2」のように逆行することもありますが、大概の場合は「3→2→3……」のように再び順行に戻っていきます。

こうしてみると、トレードのエッジ(優位点)は比較的長い期間続く1と4にあり、すぐ終わるその他のステージは移行期であってエントリーには適さないということがわかります。また、移行期にエントリーするといわゆる「だまし」に遭う可能性も高まるので、「移動平均線大循環分析」はこうした「勝てるポイントを見出しやすい」手法だといえます。

「移動平均線大循環分析」の弱点と対処法

とはいえ、このメソッドは勝てるポイントを慎重に探っていくあまり「仕掛けが遅れ、機会損失が増える」という弱点があります。具体的なケースとその対策を見てみましょう。下図は、先ほどのチャートの一部を拡大したものです。

移動平均線
2013年5月20日頃~2013年7月頭の日経平均日足チャート(TradingViewより作成)

そして以下の表が、上図の期間における「日経平均レバレッジ上場投信(1570.T)」の終値の推移です。

日経平均レバレッジ上場投信
(画像=日本実業出版社)

この期間は下降相場なので「売りでエントリー&6/21に返済買いをして決済」という条件で取れる値幅を考えてみると、

・5/24のステージ2への移行でエントリーしたとき:9970-8110=1860円
・5/28のステージ3への移行でエントリーしたとき:9520-8110=1410円
・5/30のステージ4への移行でエントリーしたとき:8670-8110=560円

となり、それぞれ同じ数量で売り建てたと考えると、儲けに最大で3倍以上の開きがでてしまいます。その一方で、先ほど述べたように移行期のエントリーは「だまし」に遭う恐れがあります。その対処法としては「早仕掛け」「試し玉」があり、それぞれ次のようになります。

早仕掛け:第1もしくは第4ステージで持つ予定のロットと同量のポジションを持つ(ex.「ステージ4でドル円ショートを5枚持つつもりであれば、同じ5枚を早期に仕掛ける」など)
試し玉:第1もしくは第4ステージで持つ予定量からいくばくか少ないロットで建玉を持つ(ex.「ステージ4でドル円ショートを6枚持つつもりであれば、とりあえず2枚ほど早めに仕掛けてみる」など)

これらを試し、予想通りに推移しそうなら本仕掛けといって買い増し(or売り増し)、目論見が外れそうなら撤退することで、機会損失を減らすことができます。

まとめとして、このチャートのステージ1→2の移行時にとるべき行動を考えてみると

「DCを確認して、ステージ1で持ってた買いポジションを決済。それと同時に試し玉として売りポジションを持つ(=ドテン売り)。その際、だましを警戒して売り建てたポジションには逆指値を入れておく」

といったものが考えられます。


以上、移動平均線の使い方の基本~実践の一部までをみてきました。しかし、これらはホンの一例にすぎません。たとえば、同じステージ1→2の以降のタイミングでも、短期線と中期線の傾き具合によってみるべきポイントや取るべき行動が違ってきますし、「押し目買い」「戻り売り」「もみ合い放れ」のタイミングの見極め方にもコツがあります。

本記事の元となった『移動平均線 究極の読み方・使い方』には、簡単なようで奥が深い「移動平均線の読み解き方」が満載です。初心者トレーダーの方にも「いつかは専業トレーダー」という夢を持つ方にも役立つ内容ですので、是非読んでみてください。

(提供:日本実業出版社)

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