人生の選択肢を広げる「大人の勉強法」
長寿化および定年延長により、誰もが70歳近くまで働く時代。そんな中、自由な働き方を実現するために、キャリアや人生の選択肢を広げる「大人の勉強法」を、カリスマ塾長の「ビリギャル先生」こと坪田信貴氏が解説する『どんな人でも頭が良くなる 世界に一つだけの勉強法』。第3回目は、いよいよ具体的な勉強法をご紹介。自分の性格に適した勉強法を探してみよう!
「9タイプ性格分類」で自分の勉強法がわかる
前回は、勉強の基本である「PDCAサイクル」についてお話ししました。このサイクルは、ひと言で言うと「成長戦略」。できなかったことができるようになるよう、自分を磨き上げていく方法論です。
「戦略」という言葉は、ビジネスパーソンの方々にはなじみ深いでしょう。「わが社の成長戦略は……」といった言葉が会議の席で登場することも多いはずです。
そうした場面でしばしば引用されるのが、「孫子」のこの言葉。「彼を知り己を知れば百戦殆あやうからず」──敵を知り尽くし、自分のことも理解すればどんな戦いも勝てる、という戦略の本質を突いた名言です。
この言葉は、語句の「順番」も重要なポイント。まず敵を知り、その後で自分側の対策を考える、という順序が大切なのです。勉強で言うなら、学ぶべきものの全体像や資格試験の傾向、範囲などをまず知る。それから、自分に適した勉強法を選ぶのです。それにより、PDCAを「どう回すか」という最初の方針が決まります。
自分を知らない人は、PDCAの「P」で時間をムダにしがちです。独学か、コーチをつけるべきか、読んで覚えるか、映像や音声で聴くべきか──自分に適した学び方をある程度イメージしなければ、数限りなくある方法に片っ端から手をつけ、どれも合わずに途方に暮れることにもなりかねません。
そこでご紹介したいのが、私が開発した「9タイプの性格分類による学習法」。心理学の「エニアグラム」という理論をベースとし、他の学説を踏まえて学習方法に落とし込みました。私の塾の生徒には入塾時に必ず判定テストを受けてもらい、その結果に基づいた勉強法により指導を行ない、成果を出しています。その判定テストの簡易版を、下記に載せています。9つの問いにそれぞれ、10点満点でお答えください。その中で1番数値が高かった番号が、あなたの「性格タイプ」です。ここからは、それぞれの性格に適した勉強法をお教えしましょう。
それぞれの質問を、10点満点で採点し、一番点数の高かった番号を自分のタイプとする。同じ点数の項目が並んだ場合、複合タイプとして、両方のアドバイスを参考にすること。
※ただし、この判定はあくまで簡易版なので、判定はあくまで参考程度に留める。より詳しく知りたい方は、以下のURLまで。
http://apps.amwbooks.asciimw.jp/9t/pro/
性格によって違う「やる気」の出し方
トップバッターは①完璧主義者タイプ。高い理想を持ち、妥協せずに取り組む姿勢の持ち主ですが、計画どおりにいかないとやる気をなくすのが弱点。
それをカバーするのが、ペースメーカーになってくれるコーチやメンターの存在です。先輩、上司、尊敬する人など、得たい知識に詳しい人を見つけ、指導役になってもらいましょう。
目標設定の方法、計画の立て方、何から始めるべきかまで細かく聞き、実行過程をチェックしてもらえば万全です。
なお、このタイプは視野が狭くなりやすいので、テキストやデータだけではなく「生の情報」に触れることも大切。たとえば英会話なら、実際にネイティブと話す機会を持つ、といった実践型の勉強を取り入れましょう。
次は、②献身家タイプ。人に喜ばれることに喜びを感じる性格です。このタイプに効果的なのが、一緒に勉強する仲間を見つけてペアを組むこと。そして、勉強すべき範囲を分担し、互いに教え合うことです。すると、相手の役に立つためしっかり勉強しますし、教えることで知識が強く定着します。献身家同士がペアとなり教え合うことで、相乗効果が生まれるのです。
続いて③達成者タイプは、上昇志向が強いエネルギッシュな性格の持ち主。頑張り屋さんなので独学でもやる気を維持できますが、成長の実感が薄れてきたり、手痛い失敗をしたりすると強いストレスを感じ、それが挫折の原因に。
そんな達成家にお勧めなのは、「短期目標」の設定です。それも、「所要時間15分の問題を10分で解く」「3問解き終わるまで椅子から立たない」などの簡単な目標をとにかくたくさん用意するのがコツ。目標を続けざまにクリアすることで、ぐんぐん勢いがつきます。
逆に、短期目標を困難なものにするのは厳禁。「1カ月で資格合格」「会社で最年少のリーダーになる」といった高いハードルは、失敗時に気力が急速になえてしまうので避けましょう。
それと対照的なのが、④芸術家タイプ。独特な価値観を持ち、「上昇志向」よりも「自分の個性やユニークさ」に誇りを見出すタイプです。世間に評価されるような目標達成には興味がなく、それによりモチベートされることもありません。
そんな芸術家タイプが「何かを目指す」モードになるには、「目標の目的」を意識することです。「この知識を強化すれば、もっと面白いことができる」など、目標を達成する手段として勉強が必要だと感じられるようにすればいいのです。目標が「自分にしかできないこと」であればあるほど、やる気が出ます。
やる気さえ出せばすごい集中力を発揮するので、具体的なスケジュールを定める必要はナシ。センスと瞬発力を頼りに、楽しみながら学ぶのが1番です。
やりすぎ・迷いすぎ……それぞれの調整法
続いては、⑤研究者タイプ。このタイプはひと言で言えば「勉強好き」です。探究心が強く、理解力も上々。しかし、勉強そのものが目的化してしまい、「ほどほど」で止められないのが難点です。
必要なのは、「勉強をバランスよく調整する」こと。資格試験なら合格最低点を把握し、「ここまで知ればストップ」と最初に決めましょう。教科書や参考書を読むと探究心がフル回転してしまうので、「問題集を解くだけ」の勉強がお勧めです。「この問題が解ければ受かる」というラインにとどめましょう。
また、日ごろから知識を「世の中にどう役立てるか?」という意識を持つことも、勉強自体が目的化しないために重要です。
⑥堅実家タイプは、誠実で責任感が強く、ルールどおりにコツコツ物事を行なうのが得意です。しかしそのぶん、優柔不断でリスクを恐れる面も。勉強しつつも「この方法でいいのかな」と迷い、複数の方法を同時並行させてますます混乱する、という失敗をしがちです。
対策は厳密なルール化です。「テキストはこれ、勉強時間は1日2時間、試す期間は1週間」などと決め、「1つずつ」試すこと。ルールに沿うのが得意な性格を生かしましょう。また、その際は記録が必須。勉強した時間帯、所要時間、目で見て覚えたか書いて覚えたかなどのデータがあれば、失敗の要因や成功への道筋が見えやすくなります。
続いては⑦楽天家タイプ。好奇心旺盛で楽しいことが大好きな性格です。このタイプの弱点は「飽きっぽさ」。集中力を持続させる工夫が何より大切です。
それには、最初に「ワクワクする目標」を立てることが肝心。「楽しそう」「モテそう」「カッコいいと言われそう」など、ノリの良いワードが着火剤になります。そのうえで、やる気を持続させる強制力として、塾や教室などに通えば万全です。
なお、このタイプは単調な暗記が苦手です。暗記が必要な場面では、「これが終わったら美味しいものを食べよう」などの報酬を用意するか、あえて「暗記は思考力を使わず、丸覚えするだけだから楽だよね!」といった発想の転換を。「楽だ」といったん思い込めば、気分で乗り切れるのが楽天家の強みです。
⑧統率者タイプは、その名のとおりリーダー気質。人を束ねる力に秀でています。そんな統率者タイプに最適なのは、仲間と勉強すること。といっても、献身家タイプのように「助け合う」のではなく、自らリーダーとなって、5?10人くらいのチームを「仕切る」方式が適しています。メンバーに担当範囲を振り分け、勉強会を設けて成果を発表し合いましょう。
統率者の役割は方針の決定、テキストの選定、担当部分の割り振りなど。ただし、その方法を受け容れてもらえるような信頼関係をメンバーとの間に築いておくことも忘れずに。
「無理をしない」感覚が学習効果を最大にする
最後は、⑨調停者タイプ。周囲との円滑な関係のために常に心を配る平和主義者です。
ところが勉強に関しては、この優しい性格が弱点に。闘争心に欠けるため、目標を立てて頑張るのが苦手なのです。だからこそコーチやメンターの指導が必須なのですが、これまた難しいことに、調停者は自分の意志を明確に伝えられず、合わない指導も我慢する傾向があります。しかも、我慢している自覚さえなく、そのまま何カ月も無駄に過ごしてしまうことも……。
その状況を突破する方法はひとつ。同じく調停者タイプのコーチやメンター=本人を理解してくれる指導者と出会うまで数を打つことです。具体的には、できるだけ多く、さまざまな教室へ体験入学してみること。「この人といるときは無理していないな」と思える相手が現われたら、それが「当たり」です。
なお、この「無理をしない」感覚をたくさん味わうことが、調停者には重要です。それによって、「自分が本来どうありたいのか」という、自分自身であまり考えたことのないテーマを掘り下げるきっかけになるからです。もちろん、これは程度の差はあれ、9タイプのすべての人に必要なこと。自分にフィットする感覚を探しつづけ、「これだ」と思った瞬間を味わう──それはまさに「自分らしさ」を見つける瞬間です。
ここから、「自分らしさをもっと発揮させたい」という希望が生まれます。それは「自己の成長」を望むモチベーションの原動力となるでしょう。
坪田信貴(つぼた・のぶたか)学習塾「坪田塾」塾長
心理学を駆使した学習法により、1,300人以上の子供を個別指導し、多くの生徒の偏差値を短期間で急上昇させた実績を持つ。2013年、著書『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(KADOKAWA)が大ヒット。その後も受験指導のみならず、企業の人材教育や起業アイデアの指導、講演活動等多角的に活躍中。(取材構成:林加愛)(『The 21 online』2017年11月号より)
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