2017年の中国の観光総収入は93兆円(5兆4000億元)、前年比▲15.1%の伸びだった。またGDPに対する総合貢献は、9兆1300万億元となりGDPの11.04%に相当するという。経済サイト「中国証券報」「易網」など多くのネットメディアが、国家旅游局の「2017年全年旅游市場及総合貢献数据報告」を元に分析記事を載せている(1元=17.22元)。
国内市場はおおむね好調
2017年の国内観光市場は、高い伸びだった。国内旅行者数は延べ50億100万人、前年比▲12.8%のプラスだった。そのうち都市住民は延べ36億7700万人、前年比▲15.1%、農村住民は延べ13億2400万人、前年比▲6.8%だった。国内観光収入は4兆5700億元で、前年比▲15.9%、そのうち都市住民3の消費額は3兆7700億元、前年比▲16.8%、農村住民は7700億元、▲11.8%だった。都市と農村を分けるのは、中国統計の基本である。
全体の高い伸びに比べ、国内の上場旅行会社の業績はパッとしない。37社の上場会社中、25社で業績速報または予想が出ている。増益6社、黒字転換2社、減益1社、赤字転落2社、初の欠損2社、欠損5社、損失拡大5社、という内容である。利益を計上できそうなのは25社中8社、全体の3分の1に満たない。若い世代を中心、自分で旅程を組み立てる“自由行”が盛んとなり、従来型旅行会社の収益にはつながらないのだろう。
国家旅游局によれば、観光業の直接就業者は2825万人、直接間接を含めれば7990万人、全就業人口の10.28%に当たる。
インバウンドは低い伸び
一方海外をインバウンドから見てみよう。入国者数は延べ1億3948万人、前年比▲0.8%の伸びにとどまっている。年間の国際観光収入は1234億ドル、これは前年比▲2.9%だった。外国人の中国での消費額は695億ドル、前年比▲4.1%だった。
2017年の入国外国人旅客数は4294万人、アジアが全体の74.6%を占めた。そのうち香港47%、台湾9%、マカオ8%といわゆる中華圏で64%を占めている。
欧州は13.7%、南北アメリカ8.2%、オセアニア2.1%、アフリカ1.5%だった。性別では男性60.7%、女性39.3%だった。国別では、ミャンマー、ベトナム、韓国、日本、ロシア、米国、モンゴル、マレーシア、フィリピン、シンガポールの順だった
目的別では、観光・保養37.1%、就業14.8%、ビジネス・会議13.3%、親戚・友人訪問2.6%、その他32.3%だった。
アウトバウンドも伸び鈍る
アウトバウンドはどうなっているのだろうか。2017年、中国人の出国は延べ1億3051万人、前年比▲7.0%であった。引き続き増加している。とさらりと触れられているだけだ。どのメディアも全く同じ扱いである。これについては余計なコメントをするな、ということなのかも知れない。
2005年~2015年の間、中国人出国者は312.9%も伸びた。毎年二ケタ成長を続けてきたのである。それが2016年は▲4.3%、2017年は▲7.0%と伸び率は鈍化している。
一方、訪日中国人数は、2016年は637万3000人、前年比▲27.6%、17年は735万5800人、前年比▲15.4%と高い伸びあった。しかし全体の出国人数は訪日客の増加ほど増えていなかった。日本は中国人の出国をけん引していたのだ。
国内旅行と日本旅行は大きく伸びたが、他はそれほどでもなかった。訪問者も中華圏の人ばかりである。中国人の指向は、内向きになっているのかも知れない。例えばこの一年間で、日本を非難する論調は、大幅に減少している。「日本のことなどもうどうでもよい」と醒めた印象さえ受ける。他人には関知しないという元来の中国的傾向へ立ち戻っているとも考えられる。2018年の訪日中国人データに注目したい。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)