元気があるIT企業が集まり、時代の先端を行く街といえば、六本木や渋谷を思い起こす人が多いだろう。ところが、最近注目を集めるのが「五反田」だ。一見「ダサい街」に思えるが、ここには現在、注目のスタートアップ企業が集まっている。周辺エリアの再開発も進み、変貌を遂げようとしているのだ。

五反田,六本木,渋谷
(画像=PIXTA)

IT企業は六本木ヒルズに集まった

かつて六本木6丁目交差点の南側は、15mの高低差がある低地に、車と人がなんとかすれ違えるほどの狭小道路を挟んで、木造住宅・アパートが密集するエリアだった。しかし2003年、11ヘクタールにおよぶこの土地は「六本木ヒルズ」として生まれ変わる。

アートとインテリジェンスの融合する「アーテリジェント・シティ」には、IT企業をはじめ外資系金融機関が集まってくる。拠点を置いた企業には、ゴールドマンサックス、バークレイズ、リーマンブラザース、YAHOO、楽天、ライブドア等が名を連ねた。

ヒルズのバー「ハートランド」では、イベント・パーティーが毎日のように開かれ、数十万円の高級スーツに身を包んだバンカーとミニスカートの美女たちが夜中まで飲み明かしていた。

IT第2世代が集まる若者の街「渋谷」

そして六本木と双璧を成すように、IT企業が集まったのが渋谷だ。2000年当時、東京都内にIT企業は1500社あり、そのうち4割は港区そして渋谷区に集中していたという。「アーテリジェント・シティ」を標ぼうする六本木ヒルズの洗練さと対照的に、道玄坂・宇田川町界隈はわい雑なイメージが付きまとう。逆に言えば、それが渋谷の魅力だった。

そんな魅力に引き寄せられ、渋谷にはGMOインターネット・ミクシィ・DeNAなどのIT第2世代が集まってくる。IT第2世代の代表格が、藤田晋氏が率いるサイバーエージェントだ。同社が本社を構えるマークシティは、ヒカリエと並ぶ渋谷のランドマークとなっている。

丸の内や日本橋といったビジネス街の堅苦しさ・しがらみ・上下関係を嫌う彼らは、渋谷にこだわる。ネット企業の集積がコラボレーションを醸成し、新しいイノベーションを産み出すのだ。

いま五反田に先進企業が集まる

五反田といえば、目黒川沿いの桜並木が有名だ。シーズンになると、大崎橋から居木橋までの2.2kmがライトアップされ、周辺は花見見物の客で大賑わいになる。

ところが桜以外となると、五反田のイメージはパッとしない。「風俗店・パチンコ屋・居酒屋などが軒を連ねる」そんな場末感がまとわりつく。思いつくランドマークといえば、TOCビルぐらいだ。

そんな五反田に、スタートアップ企業が渋谷から移り住んでいる。魅力は、渋谷より3割程度低い安い家賃と、山手線沿線という利便性の高さだ。彼らは「すでに文化ができ上りつつある」六本木・渋谷を離れ、ソニー発祥の地でもあるこの五反田を選んだ。

五反田のスタートアップは、今勢いに乗っている。TOCビルに本社を構える飲食店予約台帳システムの「トレタ」は、技術系スタートアップ企業の売上高成長率ランキングで2位に入った。実は1位に選ばれた個人スキルネット仲介のココナラも五反田組だ。

新世代の起業家たちは、決しておしゃれとは言えない五反田の地をあえて選び、新しい世界を打ち出そうとしているのだ。

3つの街が刺激し合う好循環へ

かつて栄華を極めた六本木ヒルズからは楽天、YAHOOも退去し、金融危機後はリーマンも去った。バークレイズも投資部門を縮小し、31階のおよそ半分を明け渡した。ところが、どうしているのかと思えば、意外と元気という。

最近ではメルカリ・Gunosy・CROOZといったベンチャー企業が本社を構え、六本木から新しい風を巻き起こそうとしている。六本木・渋谷・五反田、3つの街がお互いに刺激し合い、これからも斬新なビジネス・カルチャーを産み出していくことだろう。(ZUU online 編集部)