官公庁や大企業の異動時期が近付いてきた。ファミリー層にとっても新入学・新学期に合わせた転居の時期でもあり、新しい住まいに移るという人も多いのではないだろうか。
そのようななか今春は「引っ越し難民」が急増するのではないかという懸念がある。引っ越し業者にとっては書き入れ時であり、加えて今年は、トラック運転手の人手不足が混雑ぶりに拍車をかけているためだ。
料金の割引などとんでもない。むしろ上乗せしてくるところも出てきている。全日本トラック協会は、平成30年の引っ越し繁忙期をリリース、顧客に対し分散引っ越しへの協力を呼び掛けるなど、協会や業者は、顧客に対し異動時期を3〜4月以外の月にずらすよう働きかけ始めた。
ピークは3月24日から4月8日 まずはここを外したい
混雑のピークは3月24日から4月8日の春休みシーズンだ。この時期は、官公庁や大企業の多くがヨンイチ(4月1日付け)の大規模な異動を発令するため、年間引っ越し件数の3分の1が集中する。
次に混雑するのが、春休み前の3月17日から23日までだ。4月中の土日も混雑が予想される。協会は「混雑時期は希望日に引っ越し業者が見つからないこともある」とし、早めに予約をするか混雑時期をずらした引っ越しの検討を要請している。
サカイ引越センター・日本通運などの引っ越し会社も、対策に乗り出している。各社の法人担当は、顧客企業を廻り、人事異動時期の見直しに加えて料金値上げをお願いしている。例年なら実施している割引キャンペーンも、今年は必要なさそうだ。
企業側も動いている。一部企業の中には、4月1日の異動発令はそのままに実際の転居をフレキシブルに対応する婚礼大手や、発令自体を5月にずらすドラッグストアチェーンもある。これらのピークを外せるのであれば、できる限り外したほうがお財布には優しいだろう。
トラック運転手の長期的減少傾向
混雑の理由のひとつは、トラック運転手の人手不足だ。最近は、どこの引っ越し会社も必要なトラック運転手を確保できない。
厚生労働省の職業別労働市場関係指標統計(平成29年12月)によると、全職種平均の有効求人倍率が1.52に対して、自動車運転手は3.09に達している。時系列で俯瞰すると、平成24年3月には1.53であり、この5年間で需給関係が急激に逼迫したことになる。
需給関係逼迫の一因は、トラック運転手の長期的な減少傾向にある。2006年には92万人いたトラック運転手は、現在81万人まで落ち込んだ。しかも60歳以上が15%を占めるなど、高齢化も著しい。
国土交通省の調査によると、トラック運転手の仕事は、全国各地を回る仕事も多く、長時間・不規則になりがちだ。月間労働時間は222時間と、全産業平均の170時間と比較しても格段に長い。力仕事も多く、荷主からの要請による契約外の荷役作業や、不必要に長いに待ち時間など、非効率な商慣行も長年放置されてきた。
ネット通販普及による物流需要の増加
企業向け物流(B to B)に関しては、鉄道・船舶を活用したモーダルソフト・企業の垣根を超えた共同配送・物流と倉庫機能の融合など、顧客サイドと連携した取り組みが進んでいる。
一方でBtoCに関しては、アマゾンをはじめとするネット通販は急速に増加している。とりわけ通販業者は、「即日配送」「時間指定」サービスを展開しており、それだけトラック運転手に負担がかかる。
ネット通販に関しては、年率10%の勢いで伸びている。諸外国に比べて日本におけるネット通販のシェアは4.37%と低く(アメリカ8%・中国13%)、今後も成長が見込まれている。こうした状況を背景に、運転手をめぐる業者同士の奪い合いも激しくなっており、1割以上の運転手が大手宅配会社に流れた引っ越し会社もある。
引っ越し難民にならないために
引っ越し難民にならないためには、引越し業者の確保の前に、住む部屋の確保という大前提の問題もある。近年のアパート建設ラッシュにより、部屋自体は足りているかもしれないが、立地が良い場所に建っているアパートやマンションは限られており、探してみると希望条件に沿った部屋が見つからないという可能性もある。移動手段と合わせて、早め早めの対応をしたいものだ。(ZUU online 編集部)