お金持ちの行動パターンや思考方法を読み解き、学ぶ手法は、なにもビジネス書を読んだりセミナーに参加したりするだけではない。私たちが少年少女時代に熱中した漫画に登場した大富豪キャラの言動からも十分にくみ取れるのだ。たかが漫画、と馬鹿にするのではなく、押し入れから引っ張り出して、改めて読み直すのも悪くない。

漫画,富裕層
(画像=PIXTA)

「金で解決ぶぁい」「クリスマス70万で買う」

『ドラえもん』や『ミニ四駆』などとともに80年代後半から90年代前半の『コロコロコミック』(小学館)の黄金期を支えた『おぼっちゃまくん』。『ゴーマニズム宣言シリーズ』の作者として今や言論人として君臨する漫画家、小林よしのり氏最大のヒット作だ。

「こんにチワワ」など数多の「茶魔語」を繰り出す主人公、御坊茶魔は天文学的資産を持つ御坊財閥の跡取り息子だ。アニメソングの歌詞にもなっている有名な言葉に「金で解決ぶぁい」がある。また、父である亀光も友人や教師に「茶魔をよろしく!」と言って目の前に大金を積む。いずれもギャグ漫画として笑うところではあるが、「時間を大切にする」という富裕層独特の行動パターンが読み取れる。

富裕層は時間の使い方に超がつくほどシビアだ。お金を使って時間を作り出し、さらに稼ぎやすい状態を作り出す。その好循環の結果が現在の状況を作り出していることを知っている。だから、トラブル処理に余計な時間をかけないためにお金を使うことは、当然だと思っているのだ。

同様のセリフは、映画やテレビドラマ化された少女漫画『花より団子』(作者・神尾葉子)にも出てくる。「おまえ明日のクリスマスあいてるか、1日俺につきあってくれたらその1日を70万で買ってやる」がある。主人公の貧乏少女、牧野つくしは大金持ちのイケメン4人組である「F4」からこんな言葉に釣られてしまうのだ。多くの男子が女性とクリスマスにデートするために、時間をかけてあの手この手の策をめぐらせるものだが、F4はものの10秒でこのプロセスを済ませてしまっている。

ナニワ金融道に出てくるレアキャラ

往年の大ヒット金融漫画で今でも続編が作られている故・青木雄二氏の『ナニワ金融道』。登場人物はお金に困った人が多いというイメージが強いが、わすかではあるが資産家も登場する。

商品先物取引に手を出してしまった小学校の教頭先生が、2週間で4,500万円もの借金を作ってしまう。教頭先生は資産家の婿で、妻にはほぼ絶対服従を強いられる毎日だ。そんな夫に対して、妻の三宮芽子の言動はなかなかエグい。

首が回らなくなった夫が自殺未遂した可能性があることを知らされても「そんなこと私にはなんの関係もありません」。退職金1,800万円の中から1500万円を慰謝料として没収した後、夫が家から大量に宝石や株券などを盗み出したことを指摘し「1,500万円全部もろても足りんぐらいや。そやけどアンタなんか一刻も早くやっかい払いしたいからこれで辛抱しといたるわ」と執着しない素振りだ。

ここに富裕層の行動の片鱗が見える。すなわち「損切り」に躊躇がないのだ。大きく儲けている人は、過去に大損をしているため、損を拡大させないことの大切さを身にしみて知っている。

一方、教頭先生は「今は含み損だが、いずれ高値になる」と業者にだまされ、追加証拠金のために借金を続け、人生を壊してしまった。対照的に描かれた夫婦の姿から、学ぶべきところは多い。

「お金ってどんどん増えるから使う方が大変なんだよね」

秋本治氏の超有名漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に出てくる中川圭一巡査も中川財閥の御曹司で、大金持ちキャラとして知られる。100円ショップのことを知らずに「ひゃ……百円で何でも買える店があるんですか」と驚いたり「10円なんて今でも流通してるの」と発言して周囲をドン引きさせたりしている。

兼業できない公務員が会社の社長も務めたり、自前の制服を着たりといろいろ矛盾があるのはさておき、さすが超富裕層と思わせる名言がこれだ。「お金ってどんどん増えるから使う方が大変なんだよね」。同僚で同じく大金持ちの麗子も「そう、増えちゃうのよね」と同調し、その横で両津勘吉がしかめっ面をしている。

富裕層は地道なサラリーマン層にありがちな「稼いだ分しかお金は入らない」という考えから脱却している。「お金がお金を生む」ということを学び、株や不動産投資などの資産運用で儲けているのだ。この事実を如実に表現しているセリフといえるだろう。(フリーライター 飛鳥一咲)