先日、動画配信サービス「AbemaTV」は元SMAPメンバーの新番組の第1回ゲストを発表した。日本国内で展開している動画配信サービスは、他にも「dTV」「Hulu」「Amazon」そして「ネットフリックス」と10社を超える企業が乱立しており、さながら動画配信サービス戦国時代の様相を呈している。今回は数多く存在する動画配信サービスの中で、力強く成長するネットフリックス社の強みを紹介したい。

ネットフリックス
(画像=Dean Drobot / Shutterstock.com)

ネットフリックスの強みとは?

同社のCEOデビット氏は、2018年に約700の新規オリジナル番組を公開する計画があることを、モルガン・スタンレーのカンファレンス内で明らかにした。年間約700本というと、一日に2本配信する必要があるため、ハイペースでの制作が必要だ。このスピードは他社に真似の出来ないものである。

また、ニューヨークタイムズの発表によると、同社はオバマ前大統領夫妻とオリジナル番組製作に向けた交渉を進めていると発表。この発表の翌日に同社の株価は史上最高値を更新する「オバマ効果」の恩恵を受ける格好となった。

ネットフリックス社の強みはオリジナル動画の年間制作本数の多さである「量」に留まらない。オバマ元大統領を起用するという「質」にもあるといえるだろう。

世界規模の加入者の伸び

アメリカにおけるケーブルテレビは1940年代に地上波テレビが映らない地域で始り、既に70年を超える歴史がある。そんなケーブルテレビは、長くアメリカ人のライフスタイルに根付いてきた。

しかし、そんな歴史を持つケーブルテレビの加入者をネットフリックス加入者が上回った。アメリカの主要ケーブルテレビの加入者数が4,860万人であるのに対し、同社の加入者数は2017年3月末実績で5,090万人だそうだ。ケーブルテレビは、長らく座っていた王者の座を明け渡す事になったのだ。

ネットフリックス社の勢いはアメリカ国内だけに留まらない。同社の加入者数が1億人を突破したことが各メディアで報じられており、その内訳はアメリカとその他海外とでちょうど半分を占める。世界的に見たネットフリックス社の加入者数は右肩上がりで増加している。

ネットフリックス
(加入者数の推移 画像=筆者作成)

成功の秘訣は「ライバルを参考にしない」

ネットフリックス社の成功について、同社のCEOのデビット氏は「ライバルを参考にしないこと」「会員が作品を楽しんでいること」と語っている。

注力するべきはあくまで配信するコンテンツの品質を向上させることであり、ライバルのサービスを真似ることではないと言い切る。「恐れるべきはライバルの動向ではなく、自分の成長から足を踏み外すこと」とハリウッドの会見で語っている。そして同氏が考える成功とは「多くの人が作品を最後まで見てくれること」と述べ、会員がコンテンツを楽しんでくれることが会社の成長・発展につながると考えているようだ。

競合他社がしのぎを削るなか、ネットフリックスの取り組みは「視聴者を楽しませる」という点において、カスタマーファーストの本質を突いている。質の良いコンテンツを安く提供するビジネスモデルの成長に陰りが見えている理由は、ユーザーの視聴時間には限界があるからだ。

株価は2年で3倍に

より良いものを提供するには、他社が提供してない、そして提供できないものを出す必要がある。制作会社が作ったものを横並びで提供しているサービスも多いなか、オリジナル動画の配信でネットフリックス社は大きな成功を得ている。

同社が上場しているアメリカのナスダック市場に目を向けても、2016年3月時点では100ドル割れだった株価は、2018年3月時点で300ドルを超えている。2年で3倍の急上昇だ。この成長曲線を今後も維持できるのか、その動向に注目したい。(黒坂岳央、高級フルーツギフトショップ「水菓子肥後庵」代表)