2月28日にリクルート住まいカンパニーがプレスリリースをだした「SUUMO住みたい街ランキング2018 関東版」によると、吉祥寺や恵比寿といった都区内を抜いて、横浜が総合ランキングトップを確保した。

その他、今まではパッとしないイメージがつきまとっていた浦和大宮がベスト10入りしている。逆に渋谷・自由が丘といった「憧れの街」は、ベスト10圏外に落ちた。住まいの嗜好に今何が起きているのか、地殻変動の真相に迫る。

住みたい街ランキング,横浜
(画像= Alissa Kumarova / Shutterstock.com)

東京都以外の街がトップに選ばれたのは初

本ランキングは、東京・埼玉・千葉・神奈川・茨城の住民を対象としたWEBアンケートの集計結果を取りまとめた調査で、2010年以来今年で9回目を迎える。標本母数は7000名(精度アップのため従来の3000名から増員)、都県別・年代別・世帯構成別でばらつきが出ないよう、標本を選んでいる。

ランキングでは、住みたい街(駅)の他、住みたい自治体、穴場の街ランキングについても調査を実施している。住みたい街ランキングでは、毎年3位以下に甘んじてきた横浜市が、初めてトップに躍り出た。

横浜だけではない。おととしは21位だった大宮は9位、32位の浦和は10位に大躍進だ。その他、ベスト30には船橋(43→18位)、川崎(47→20位)柏(64→21位)など周辺県の姿が目立つ。

ここ3年くらいの傾向だが、東京都内だけではなく、交通や商業施設などの利便性が拡充した周辺県中核駅の人気が高まりつつある。今年のランキングにも、傾向が如実に現れている。

利便性が高く評価された横浜

横浜を選んだ理由の大多数は「交通アクセス」と「商業施設の充実度」だ。確かに、横浜駅は東海道・横須賀・湘南新宿・みなとみらい・京急・相鉄・東横・市営地下鉄などがつながり利便性が極めて高い。駅周辺には髙島屋・横浜モアーズといった商業施設が立ち並び、観光名所にも近い。

しかし、考えてみれば横浜の利便性が突然高くなったわけではない。変わったのは利便性を何より重視する意識の変化だ。横浜市内住宅地の地価動向にも、その傾向は現れている。神奈川区・西区・中区といった利便性が高い地域は、地価上昇率が4年連続で2%を上回った。

一方で、東京に隣接し閑静な高級住宅地として、従来より人気の高かった港北区・青葉区は、2年連続で2%を切り、後塵を拝している。都筑区に至っては1%すれすれといった状況だ。北部エリアは東京志向が強く、「横浜都民」とも揶揄されてきたが、みなとみらい・石川町・横浜駅といった一大商業エリアを抱える東南部エリアには敵わなかった。

通勤距離と通勤時間は比例しない

横浜は丸の内まで決して近くはなく、ほぼ30キロメートル圏に位置する。片や恵比寿は僅か8キロメートル、その気になれば歩いてでも帰れる。やや離れている感のある吉祥寺も20キロメートル強で横浜よりも断然近い。

ところが通勤時間となると、吉祥寺は30分に対し横浜は28分だ。さすがに恵比寿は21分だが、距離ほど時間の開きは大きくない。秘密は、列車のスピードだ。 国土交通省のレポートによると、複々線の東海道線は、さらに車両性能向上も図り、ラッシュ時の表定速度(ダイヤ通りのスピード)は64.3キロメートルに達する。ちなみに住みたい沿線ランキング6位の田園都市線は38.1キロメートル、8位の京王線は32.6キロメートルだ。

大宮・浦和も、57.3キロメートルを誇る高崎・宇都宮線の沿線だ。特にこのエリアは、2015年の上野東京ラインの開通で、丸の内・品川までの乗り換えなしが実現した。いずれもスピードで距離を克服し、高い利便性を実現している。

考え方はそれぞれで、庶民的な街が好みの人もいれば、高級感・ステイタスにあこがれる人もいる。海や川の近くで暮らしたい人もいれば利便性を最優先する人もいる。考え方によって「住みたい街」は変わるのだ。(ZUU online 編集部)