決算まとめ 後編

③神戸製鋼所 < 5406 >

売上高は前連結会計年度比8.3%増の1兆8,246億円となり、営業利益は同919.6%増の1,145億円となりました。経常利益は前連結会計年度181億円の赤字から850億円の黒字へ、最終利益も269億円の赤字から701億円の黒字へと転換を果たしました。

鉄鋼事業においては自動車向けの需要が堅調に推移したことや、円高是正による輸出環境の改善の中、経常損益が前連結会計年度比838億円増の335億円となり、経常利益での黒字化を達成しました。2015年3月期の業績見通しについては小幅な増収増益を見込んでいます。

④日立金属 < 5486 >

平成25年7月1日に日立電線と合併し初の決算となる平成26年度3月期は売上高が8,079億円、営業利益595億円、経常利益608億円、当期純利益は394億円という決算内容でした。日立電線との合併により電線材料カンパニーを新設し、第2四半期より連結業績に反映しています。

電線材料セグメント以外の売上高は、連結売上高から電線材料セグメントの売上高2,511億円を差し引くと約5,568億円となり、前会計年度の連結売上高5,357億円と比較してもほぼ横ばいの売上高推移となっています。また、2015年3月期については増収増益の業績見通しを発表しています。

⑤日新製鋼 < 5413 >

売上高は前連結会計年度比11.1%増の5,764億円となりました。営業利益と経常利益はともに前会計年度の赤字から、それぞれ165億円、197億円の黒字へと転換しました。最終利益も前期の純損失373億円から当期純利益177億円へと回復軌道をたどっています。

高耐食溶融めっき鋼板「ZAM」のような高付加価値の製品販売が住宅や太陽光発電、自動車向けの分野で堅調に推移していることも業績回復の後押しをしています。次年度の業績については、原料価格等が不透明な状況であることから未定としています。

鉄鋼業界、今後の展望

順調な鉄鋼業界ですが、今後の見通しは決して楽観できるものばかりではありません。国内需要では消費増税後の自動車、住宅市場の落ち込みが懸念されます。また、世界的な市場で見ると、中国や韓国を中心としたアジアでの生産能力増強により需給関係が緩んでいます。ただし、悪いニュースばかりでもありません。2020年開催の東京オリンピックは新たな鉄鋼需要をもたらし、円高是正により好調な輸出業からの需要は旺盛なものになります。

また、世界的には新興国の都市化によりインフラ整備、住宅建設、自動車生産などで鉄鋼需要は将来的にさらに増加すると見込まれています。外部環境の変化だけではなく、コスト削減にも各社は注力しています。神戸製鋼所では鉄鋼事業のコスト削減のため神戸製鉄所の高炉を、2017年度をめどに休止すると発表しました。

また、新日鐵住金では2013年度から君津製作所の高炉1基を休止させるなど、生産体制の見直しを進め、合併効果をさらに引き出す経営計画を発表しています。現在回復基調にある鉄鋼業界ですが、さらに安定的な収益確保をしていくためには、市場の需要機会にスピーディに対応すること、付加価値のある製品を提供することにより更なるシェア拡大を行う必要があります。

負債比率が高く、資金調達手段が限られる鉄鋼業界では、業界の合理化を目的としたM&Aや有効な資本投下による資源権益の取得等、中長期間を見据えた経営体制を構築できる企業のみが生き残っていくことになるでしょう。鉄鋼業界の今後の展望としては、短期間で売上高の大幅な増加は望めませんが、輸出採算の改善なども寄与して、短期的には横ばいもしくは微増の業績が続くと予想されます。