オリエンタルランド <4661> は2018年3月1日、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの年間パスポートを値下げすると同時に、年パスが使えない日を設けた。年間パスポートの値下げ、使用不可日の設定のいずれも開園以来初めてという。

このところ入場者数に頭打ち感の否めない東京ディズニーリゾート。ライバルのUSJはミニオンズやハリー・ポッターなどが大人気で、年間パスポートの値段は据え置きながらも、9年連続で入場料を値上げしている。

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(画像=FotoGraphic/Shutterstock.com)

初めて年パスを値下げするOLC 9年連続で入場料値上げするUSJ

年間パスポートとは施設を1年間利用できるもので、東京ディズニーランドのみ、東京ディズニーシーのみ、両施設対象の3種類がある。

各チケットは大人(18才以上)、中人(12才~17才)、小人(4才~11才)、シニア(65才以上)で料金が異なるが、今回は、一律2,000円の値下げとなる(両施設を対象とするチケットは一律4,000円の値下げ)。

例えば、東京ディズニーランドを対象とする年間パスポートは、大人9万3,000円、小人4万1,000円であったものが、大人89,000円、小人39,000円となる(金額はいずれも税込)。

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(表=オリエンタルランドリリースより編集部作成)

さらに、年間パスポートの使用を不可とする日を設定し、加えて、急な混雑のため入場制限がかかった際にも使用できないこととなった。使用不可日は、2018年は、8月12~14日、10月6~8日などの12日間、2019年は、3月28~31日などが発表されている。いずれも混雑が予想される日だ。

ディズニーランドのライバルといえる大阪市のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)を運営するユー・エス・ジェイも、2018年1月31日にチケットを値上げしている。年間パスポートは据え置いたが、その他のチケットは、例えば一日券が、大人も子供(小学生以下)も300円、65才以上は270円の値上げ。入場券の値上げは2010年から連続9年となるという。

スーパーマリオなど控えるUSJの快進撃は続く?

年間パスポートを値下げしたディズニーと、年間パスポートは据え置きながらも毎年入場料を引き上げているUSJ。この違いはどこから生まれているのだろうか。

USJの過去最多入場者数は、開業初年度(2001年)の1102万9000人。これを長く超えることができなかったが、2014年に開設した映画「ハリー・ポッター」をテーマとした新エリア「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」のオープンが快進撃の幕開けとなった。2013年度には1050万人だった入場者が、翌14年度には1270万人で前年比21%増を達成。さらに15年度には前年度から9.4%増えて1390万人、16年度も同5%の1460万人と増え続けている。

さらにハリー・ポッターだけでなく人気アニメ「エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」などとコラボしたイベント開催、2016年のジェットコースター「ジュラシック・パーク ザ・フライング・ダイナソー」と、たて続けに提供した新企画もその原動力といえるだろう。2017年には世界中で大ヒットを記録しているCG映画シリーズ「ミニオンズ」のエリアをオープンさせ、入場者数は前年を超える勢いだという。

今後も600億円超を投資し、2020年夏までに「スーパーマリオ」など任天堂のゲームキャラクターをテーマしたエリアを開業する予定だ。こうした中でも今年1月に連続9回目の値上げに踏み切ったのは、新たな大型企画の原資として必要であると共に、値上げをしてもファンは離れないという自信の現れといえるのではないだろうか。

頭打ちが続くOLCは「新鮮」だけでなく「快適」を狙う

他方の東京ディズニーリゾートは、2016年度まで4年連続して入場者数3000万人台という高水準を維持してはいるが、16年度は前年比▲0.6%。減少は2年連続でどうしても頭打ち感が否めない。

今後の計画としては、2020年までに総額約2500億円を投じて「美女と野獣」エリアの新設や「ベイマックス」がテーマの新アトラクションを建設する。新企画の投入を連続して拡大するUSJに対し、同じく拡大路線で対抗する作戦だ。ただ今後重要なのは、単に楽しい施設を増やすことではなく、混雑の解消などスムーズに体験できる環境にできるかどうかだろう。2017年度には、混雑時の危険防止のため、入場制限が9回も実施されたという。

この点についてオリエンタルランドはどう考えているのだろうか。同社が掲げる2020年中期経営計画目標には、「高い満足感」を伴う「パーク体験」の実現を挙げられている。その戦略は、「パークの新鮮さと快適さを向上させる」こと。「新鮮さ」を実現するための施策は、新エリアや新アトラクションなどの建設。「快適さ」実現の施策が、アトラクションの体験人数の増加、ゲストの滞留バランスの改善、レストランの座席数の増加などだ。これらの施策で待ち時間を減らしたい考え。オリエンタルランドも混雑の激化には危機感を持っており、これを戦略の2本柱のひとつとするほどなのだ。

今回、年間パスポートをお盆などの混雑時期に使用不可としたのは、工事期間の客離れ防止策である以上に、ゲストが年間を通じて感じている「混雑感」を少しでも減少したいからだろう。年間パスポート購入層というコアなファンは、多少の不利益を強いても離れないという算段もあると思われる。料金の値下げはせめてもの代償なのかもしれない。(ZUU online編集部)