2018年3月27日、カルビー <2229> は会長兼最高経営責任者(CEO)の松本晃氏(70)が6月下旬の株主総会後に退任すると発表した。就任時の2009年はまだ未上場だったカルビーを上場させ、在任9年間で株価を約7倍にした名経営者だ。
先月には、日本を代表するカリスマ経営者である日本電産 <6594> の永守重信会長兼社長の社長退任が発表されている。優秀な経営者が経営している企業の株価は、ときとして、その手腕に期待した「カリスマプレミアム」が乗っていることがある。カリスマ経営者の退任に伴って株価は下落してしまうのだろうか。
在任9年間で株価を7倍にしたカルビー松本会長
カルビーが上場したのは、東日本大震災が起こった2011年3月11日で、初値は公募・売り出し(公開)価格と同じ2100円であった。2018年3月28日終値は3515円だが、カルビーは2013年9月30日に1株を4分割しているので、実質4倍と考えれば14060円、上場から約7倍になっている。松本氏は、主力商品の「ポテトチップス」に加えて、シリアルの「フルグラ」をヒット商品に育てあげた。
過去5年間で株価を6倍にした日本電産永守社長
モーター大手の日本電産永守社長(73)もカリスマ経営者として有名だ。5年前に3000円を割っていた日本電産の株価は、2018年3月28日終値で16240円、2ヶ月前の最高値更新時は18000円を超えるなど、過去5年で株価は約6倍になっている。そのようななか、吉本浩之副社長(50)に社長の座を譲ることが決まっている。
カリスマプレミアム剥落を見極めるポイントとは?
個人投資家にとって気になるのが、カリスマ経営者が去ったあとも、株価は上昇トレンドを維持できるかということだろう。退任に伴って成長期待が萎んでしまうと、カリスマプレミアム剥落により、株価も下落基調になってしまう。カリスマプレミアム剥落を見極めるポイントは何だろうか。
そのひとつが「後継者を育成できているか」だ。例えば永守氏の場合は、CEOの職は継続し、吉本氏とタッグを組んで経営を続けていく。自動車産業をはじめAI化やロボット化は産業のメガトレンドであり、社長職を若い後継者にバトンタッチすることで、自分のリソースを少しでも空けて、そのメガトレンドに乗る組織に整えたいという狙いがあるようだ。
反対に松本氏の場合は、退任理由も「前職のジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人の社長も9年努めた。カルビーも一区切りと感じた」という旨の発言のみであり、次の体制も決まっていないという。松本氏自身も相談役や顧問に就く予定はなく、やや「唐突な退任」感は否めない。
経営は大胆な行動が必要である一方、継続も重要な要素だ。後継者が決まっており、カリスマも経営に携わり続ける日本電産のほうが、現時点ではカリスマプレミアム剥落懸念が少ないと言えるかもしれない。
社長を見て投資先を探すという手法もあり
反対に、業績不調に陥っている企業に突如、やり手の敏腕社長が就任することで株価が急回復することも多い。特にマーケティングの深い知識や経験のある社長は、傾いた企業立て直しに対して強い傾向がある。
社長で投資先を選ぶ方法を採っている株式投資家は少なくないが、新社長が就任した企業には、その社長のそれまでのキャリアから今度の事業展開を予想して投資を検討するのもいいかもしれない。(ZUU online 編集部)