訪日観光客が増えたことによって、観光地周辺の宿泊場所が不足する中で民泊の需要が高まりつつありますが、訪日観光客だけでなく、外国人労働者や留学生の数も増えていることをご存知でしょうか?

訪日観光客に対する宿泊場所の提供は積極的に行われているにもかかわらず、外国人労働者や留学生に対する賃貸住宅の提供は進んでおらず、入居拒否にまで発展しているケースが多数あることが分かってきました。外国人労働者や留学生の賃貸住宅契約の実態について見ていきましょう。

過去5年間の間に入居拒否にあった外国人の割合は約40%

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(画像=Riccardo Piccinini/Shutterstock.com)

法務省が行った委託調査の結果によると、過去5年間に家を探した外国人の39%が「外国人であることを理由に入居を断られた」と回答しています。入居拒否の背景には以下のような3つの理由があります。

・不動産会社が言語対応していない
1つ目は賃貸住宅契約の窓口である不動産会社が、言語対応できていないことを理由に契約を断るケースです。訪日観光客を想定しているホテルや民泊は、言語対応できる環境を整備していますが、賃貸住宅は日本人を想定しているため、受付も契約書も言語対応できていないという実態があります。

・オーナーが嫌がる
2つ目は賃貸住宅のオーナーが最初から契約相手を日本人に限定しているケースです。不法滞在や犯罪、家賃の未払い、近隣住民とのトラブルなどを未然に防ぎたいという思いから、契約対象を日本人に限定している不動産オーナーが多いのです。

・外国人のマナーの問題
3つ目は外国人のマナーの問題から契約を断るケースです。文化の違いから騒音問題やごみ問題など近隣住民とトラブルに発展するケースが多くなっています。トラブルによって他の入居者の契約解除に発展しないようにするため、最初から入居を拒否している場合があります。

実際に外国人労働者や留学生がトラブルを起こしたかどうかにかかわらず、外国人であるということを理由に入居拒否を行っている場合には、処罰の対象になる可能性があるので注意が必要です。損害賠償が発生したケースについて見ていきましょう。

入居拒否は人権侵害に該当して損害賠償の対象になる

外国人であるということを理由に入居拒否を行うことは「法の下の平等を定めた憲法に反する」という理由から、大阪地裁は1993年に賃貸住宅のオーナーに対して損害賠償を命じました。この1件だけではなく、人権侵害に該当するという理由から複数の同様の判例が存在します。

グローバル化が進む現代では「外国人お断り」という姿勢は時代遅れなだけでなく、今後益々処罰が強化される可能性があるので、オーナーだけでなく不動産会社もグローバル化に備える必要があるでしょう。

政府の掲げる「留学生30万人計画」を活用して入居率UP

法務省の統計では、統計を取り始めた1959年以降で最も多い約238万人の在留外国人がいることが分かりました。この状況を後押しするかのように、日本政府は2020年を目途に「留学生30万人計画」として、受け入れ体制を整えることを目標に掲げています。

人口減少や住宅の供給過多などによって、空き家の問題が深刻化しています。中には、賃貸住宅から民泊への転用を検討する不動産オーナーもいるかもしれませんが、現存する旅館業を守るために、民泊新法では営業日数が180日に制限されるなど、状況は厳しくなりつつあります。

政府の支援によって増えることが予想される外国人労働者や留学生に対応している不動産会社や賃貸住宅が少ない現状に着目し、不動産会社の受付や契約書を多言語対応するなどして、これらの需要に備えることが、賃貸住宅の入居率UPにつながると言えるでしょう。

まとめ

外国人労働者や留学生の約40%が賃貸住宅の入居拒否にあったという実態がありましたが、グローバル化が進む現代では、外国人であるということを理由とする入居拒否は時代遅れというだけでなく、処罰が強化される可能性があります。

政府も外国人労働者や留学生の受け入れを積極的に推進しており、益々賃貸住宅の需要が高まることが予想されるので、受付や契約書を多言語対応することによって需要に備える必要があります。空き家の問題が深刻化する賃貸住宅にもグローバル化の波が押し寄せていると言えるでしょう。(提供:不動産投資セミナー

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