「老後は○千万円必要」などというニュースや記事を見るにつけ、「どうすればそれだけ貯められるのか」と不安になる人は多いことでしょう。しかし、ギャンブルや宝くじではなく、確実に貯蓄できる手段を実際に探したことのある人は、それほど多くないのではないでしょうか。ここでは、現実的な貯蓄方法として定期預金・貯蓄型保険・資産運用(積立投資)を取り上げ、メリット・デメリットを説明します。
いくら必要?年金だけでカバーできない老後の生活費
老後の主要な収入源として多くの人が期待するのは、国民年金や厚生年金などといった公的な年金制度でしょう。しかし、残念ながら年金だけでは老後の生活費をカバーしきれない可能性が高いです。「家計調査年報」によると、職を持たない高齢者の収支は、2016年度の時点で赤字になることが分かっています。
高齢単身無職世帯の場合は約3万6,000円、高齢夫婦無職世帯の場合は約5万5,000円の不足額です。得られる年金が支出を下回るので、自分の貯金によって穴埋めしなければいけない事態になっています。これを20年も30年も続けると、不足額は数百万円から数千万円にもなるのです。
つまり、20年から30年ほど持ち出しになっても、余裕のあるほどの貯蓄を現役世代のうちに済ませておく必要があるということです。もちろん、高齢者になっても仕事を続ける手はありますが、健康状態に問題がない前提で老後の生活プランを立てるのは危険でしょう。仕事できなくなっても経済的に問題がないよう、貯蓄を続けるべきなのです。
定期預金のメリットとデメリット
誰でも考えるのは、金融機関に貯金することです。支出を減らして収入を増やし、毎月一定の金額を貯金するのがオーソドックスな方法となります。預貯金であれば、定期預金に申し込むのがよいでしょう。定期預金のメリットは、元本割れしない点です。虎の子の貯金を運用した結果、金融危機によって大きく目減りしてしまうリスクが定期預金にはありません。
万が一、お金を預けた口座のある金融機関が破綻しても、金融機関ごとに預金者ひとりあたり元本1,000万円とその利息分までは預金保護制度により保護されます。利用する金融機関を分散させて1,000万円を超えないようにすれば、実質的に元本割れのリスクはなくなるわけです。しかし、リスクがない分リターンがあまりないことはデメリットといえます。2018年2月時点で日本における都市銀行の定期預金の金利は0.01%といったレベルに設定されており、非常に低い状態です。
金利0.01%というのは、100万円を1年間預けても100円しか利息がつきません。これでは、ATMの引き出し手数料1回分より安いです。仮に物価のインフレが発生すると、手持ちの預貯金は実質的に目減りしてしまう可能性もあります。定期預金は、金融機関という「安全な金庫」にお金を預けているという程度の感覚で捉えるべきでしょう。お金を増やす目的には適していません。
貯蓄型保険のメリットとデメリット
定期預金の代わりに、貯蓄型保険を使う手もあります。これは、保険料を積み立てることで、保障だけでなくお金を貯める機能を持ったタイプの保険です。終身保険(死亡保障)や学資保険などがあります。貯蓄型保険のメリットは、貯蓄のみならず保険機能を有していることです。死亡や病気・ケガといったトラブル時に保険金が下りるのはもちろん、満期を迎えれば積み立てた以上のお金が「満期保険金」として戻ってくることもあります。
資産運用は怖いので手が出ないが、定期預金より金利のよい金融商品を求める人がターゲットとなるかもしれません。一方、満期を迎える前に解約すると、解約返戻金が100%を下回るケースが多い傾向です。つまり、積み立てた元金より少ない金額しか手にできません。また、掛け捨て型の保険よりは毎月の保険料が高くなりがちであるため、家計が圧迫される点には注意が必要です。毎月2万~3万円となることが多く、長年にわたって負担となります。
資産運用(積立投資)のメリットとデメリット
資産運用初心者ならば、iDeCoやつみたてNISAといった制度を利用して積立投資をはじめる手があります。これは、毎月(つみたてNISAなら「毎週」「毎日」の設定も可能)決まった金額を決まった投資信託の購入に充てる制度です。積立投資であれば、手軽に資産運用できます。数百円から設定できるので、初心者でも手を出しやすいのは魅力でしょう。
また、長期的に積立を行うと、「分散投資」といって資産減少のリスクを減らせることが明らかになっています。これは、「ドルコスト平均法」という確立された投資方法の一つです。iDeCoなら払い込んだ金額が控除対象になったり、つみたてNISAなら利益分が非課税になったりと、税制上の優遇措置が設けられているのもメリットです。資産を増やせるチャンスとなるばかりか、節税も可能となります。
デメリットとしては、元本割れのリスクがあることです。バブル崩壊時やリーマンショック時のように、市場が大きく落ちこんでしまうと、資産は大きく目減りします。リスクを減らすためには、国内債券を中心とした投資信託などを含め、いくつかの銘柄に資産を分散させることが有効です。
資産運用すると、定期預金や貯蓄型保険とは異なり資産が大きく減ってしまう可能性はあります。しかし、自分の手でリスクを分散できるのも大きな特徴です。現金を保有し続けるだけでは、インフレで物価が上昇したときに額面は変わらなくても資産価値は落ちることになります。老後に備えるために、少額から積立投資を開始することで、積極的に資産の増加を目指すのは一つの手でしょう。(提供:Incomepress )
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