「資産運用」にはさまざまな方法があります。株式や債券、投資信託などといった金融商品から、不動産や金などモノに投資するタイプまであります。そして、実は定期預金ですら資産運用の一種です。

日本人は現金志向や預貯金志向が強く、自分の資産を運用して積極的に増やす考え方が弱いといわれることがあります。確かに、バブル崩壊以降、株価は低迷を続けています。アベノミクスで株価が上昇したとされる2018年でも、バブル絶頂期の株価にはほど遠いのが現状です。

こうした市況を踏まえると、資産運用に不安感を持つ人におすすめなのは、「資産を殖やす」より「税金を減らす」ことです。その方法の一つが、ふるさと納税なのです。ふるさと納税自体は資産運用ではありませんが、資産を形成する際に必要不可欠な節税と深く関連しています。

そこで、ふるさと納税について「名前は聞いたことがあるけれど、よく知らない」という人を対象に、ふるさと納税の概要からメリット、具体的なやり方までお伝えします。

そもそもふるさと納税って何なの?

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(画像=PIXTA)

ふるさと納税とは、自分の住んでいる自治体以外に寄付を行う制度です。自分が東京都中央区に住んでいれば、東京都中央区以外のあらゆる都道府県や市町村に対して、ふるさと納税による寄付ができます。「納税」という言葉が使われていますが、実際には寄付です。

ふるさと納税が、自治体にとって大きなメリットを持つ制度であることは言うまでもありません。自治体は、一般的にその自治体に住民票を置いている人からのみ、税金を徴収できます。少子高齢化によって地方の人口減少が進み、どの自治体でも税収の減少に苦しめられています。ふるさと納税で全国から寄付を集められれば、税収減を補い、地域活性化のための諸活動へ予算を割けるようになります。

その一方、寄付をする個人・法人にも大きなメリットがあります。選んだ自治体にふるさと納税を行った場合、寄付額のうち2,000円を超える金額が控除されます。例えば、年収300万円でふるさと納税以外の控除が全くない独身者が1万円のふるさと納税を行うと、2,000円の自己負担だけで、残りの8,000円が控除対象となります。課税所得からの所得控除や税額控除の結果、所得税や住民税が減るのです。

さらに、ふるさと納税では、寄付額に応じてさまざまな返礼品が用意されています。例えば、酪農の盛んな自治体に1万円を寄付すると、牛肉や豚肉、鶏肉などをもらえることがあります。どの自治体も、お金を集めるために趣向を凝らした返礼品を用意していますので、返礼品目当てにふるさと納税をしている人も少なくありません。

ふるさと納税のリターンは、節税効果と返礼品です。一般的な資産運用の場合、元本保証型でなければ元本割れになる可能性があります。しかし、ふるさと納税であれば、節税+返礼品というリターンが期待できます。しかも、自分の故郷や好きな土地に貢献できるという精神的な満足感も得られます。

知りたい自分の限度額

控除になる金額には、収入に応じた上限が設定されています。無制限にふるさと納税を活用した税金対策が可能となるわけではありません。自分の収入とその他控除の有無・金額をある程度考慮し、控除上限額を見据えた上で、ふるさと納税を行う必要があります。

例えば、前述の「年収300万円でふるさと納税以外の控除が全くない独身者」ですと、2万8,000円が上限となります。この金額を超えると、超えた分はそのまま自己負担額になります。会社勤めをしている人の場合は、総務省のポータルサイト(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html )の表を見て、自分の上限額をチェックしておきましょう。

より正確な金額を知りたいのであれば、後でご紹介する「ふるさと納税ポータルサイト」のシミュレーターを利用する手もあります。例えば、「ふるさとチョイス」の場合はこちらのページ(https://www.furusato-tax.jp/example.html )にアクセスし、必要な情報を入力すると上限額が表示されます。

ふるさと納税のポータルサイトで情報収集

ふるさと納税は、自治体のホームページから申し込むことができます。中には、ホームページとは別にふるさと納税用の特設サイトを設けている自治体もあります。

しかし、そうした自治体のサイトでは、複数の自治体の寄付額や返礼品などを並べて比較することができません。複数の自治体、複数の返礼品について比較検討したいのであれば、「ふるさとチョイス」や「さとふる」などのポータルサイトをチェックするのがよいでしょう。

こうしたポータルサイトを見ると、膨大な数の返礼品を検索できます。検索だけではなく、好きな返礼品をクリックすれば、そのまま寄付まで手続きが可能です。要するに、Amazonや楽天市場などのECサイトで商品を購入するのと同じように、ふるさと納税の手続きが済ませられるというわけです。

ポータルサイトでは、米や肉類、スイーツなどの主要品目についてランキングを掲載しています。情報量が多すぎて探すのが面倒、もしくは寄付する自治体にこだわりがない(返礼品がもらえればよい)という人は、ランキング上位の返礼品から選ぶ方法もおすすめです。ただ、自分の上限額を突破しないよう、品物の選びすぎには注意しましょう。

返礼品の選択基準3点 ※還元率、メジャーな食べ物、好きな地域・使い道

ポータルサイトをのぞいてみると、全国の自治体がさまざまな返礼品を提示しており、膨大な情報が掲載されていることが分かります。そのため、特に寄付したい自治体がない人にとっては、情報量の多さに圧倒されて、どれを選んでよいのか分からないケースが少なくありません。

明確な寄付基準を設ける必要はないのですが、あえて情報を絞り込むのであれば「還元率」「メジャーな食べ物」「好きな地域・使い道」に注目してみましょう。

還元率とは、返礼品を購入した場合の金額を寄付額で割った数字です。寄付したお金に対し、どの程度の金額の品物がリターンとして得られたかを示します。還元率が高ければ高いほど、金額的に価値のある品物が手に入ったと見なすことができます。仮に、1万円を寄付したところ、4,000円相当の牛肉が手に入ったとします。このとき、その返礼品の還元率は40%になります。

次に、メジャーな食べ物を選ぶ方法です。米や肉、果物、スイーツといったカテゴリーのランキングをチェックし、その中から自分の好みの返礼品を選択します。メジャーな食べ物であれば、想定していたものと大きく異なってがっかりする可能性は低いでしょう。返礼品はその自治体の特産品になりますから、むしろ一般的なスーパーマーケットで購入するより、質のよいものを入手できるかもしれません。

最後に、好きな地域や使い道で絞り込む方法です。旅行で何度も足を運んだ土地や、自分の故郷周辺の自治体などに限定して調べるのもおすすめです。自治体によっては、ふるさと納税で集めたお金の使い道が明示されていることがあります。申し込むときにも、希望する使い道を選択できます。「教育」「インフラ支援」「福祉」など、望ましいと思う使い道をしてくれる自治体に寄付する手もあるでしょう。

注意したい確定申告orワンストップ特例制度

ふるさと納税による税金の控除を活用するためには、税務署に「○○円ふるさと納税をした」という情報を申告しなければなりません。本来であれば確定申告が必要ですが、特定の条件に当てはまる人は「ワンストップ特例制度」という方法で申告すれば、確定申告が不要になります。

もともと確定申告が必要な自営業者や個人事業主、そして副収入が多い会社勤めの人は、確定申告書にふるさと納税の寄付額を記入して申告すればOKです。

とはいえ、確定申告が本来不要な会社員にとって、わざわざふるさと納税だけのために確定申告書を作るのは手間です。そうした人のために、確定申告をしなくても税務署へふるさと納税の申告を可能としたのがワンストップ特例制度です。

ワンストップ特例制度は、以下の条件に当てはまる人が利用できます。当てはまらない場合は、確定申告が必要です。

・確定申告をする必要がない(確定申告する場合は対象外)
・2015年4月1日以降に寄付をした
・寄付した自治体数が5つ以下

特定の申請書に住所や氏名などを記入し、自治体に送付するだけで手続きは完了です。一般的に、申請書は、ふるさと納税をした自治体から郵送されてきますので、捨てないようにしましょう。

ふるさと納税のコツ1:クレジットカードを使う

インターネットで買い物をしたことがある人にとっては、ポータルサイトを利用すれば、特に苦もなくふるさと納税の手続きができるでしょう。ここでは、一歩踏み込んで、よりお得なふるさと納税の使い方を考えてみましょう。

1つ目のコツは、決済方法の工夫です。ふるさと納税の決済は、自治体の指定口座への振り込みか、コンビニエンスストアでの支払い、クレジットカード払いのいずれかになることが多いです。この中で最もお得なのは、クレジットカードでの支払いでしょう。クレジットカードを使えば、納付のために金融機関や郵便局を訪れる必要もなくなりますし、支払った分だけクレジットカードのポイントがつきます。

見方を変えれば、クレジットカードのポイント分だけ、割引されたも同然となります。ショッピング枠に余りがある場合は、振り込みするよりもクレジットカード決済を利用した方がお得です。

ふるさと納税のコツ2:時期を分散させる

2つ目のコツとしては、特定の時期にまとめてふるさと納税手続きを済ませるのではなく、季節ごとに時期を分散させることです。

ふるさと納税の返礼品の中には、季節に応じて出品されたりされなかったりするものがあります。例えば、りんごやミカンのような果物は秋にたくさん出回ります。肉のように一年中出回るものでも、人気のある場合は品切れになっていることもあります。

そのため、時期を分散させることで、思わぬ返礼品を見つけられるかもしれません。その季節ならではの特産品や返礼品を探してみる方法もおすすめです。

ふるさと納税のコツ3:限度額より少なめにする

限度額ぎりぎりまで寄付すると、節税効果は高くなります。しかし、総務省のポータルサイトなどで表示される限度額は、実際より高めであることが少なくありません。医療費控除や住宅ローン控除など、他の控除を受けている場合は上限額が下がります。また、年金暮らしの人や個人事業主・自営業者などは当てはまらないため、注意しましょう。

仮に限度額を超えて寄付すると、結果的に自己負担額が増えてしまいます。寄付自体ができなくなるわけではありませんが、ふるさと納税のメリットの柱である節税効果が薄れることになります。寄付そのものに大きな意義を見いだしている人以外は、限度額を意識するようにしましょう。

寄付額は、限度額ぎりぎりにするより、やや低めに抑えておく方が無難です。示される金額はあくまで参考値として、実際にふるさと納税できる金額はそれより低めであると考えておきましょう。年収が下がる可能性や、入院や手術などで医療費控除などが発生する可能性があるためです。もちろん、自己負担額が増えてもいいから返礼品がほしいという人は、あまり気にする必要はないでしょう。

ふるさと納税の制度変更には要注意

ふるさと納税は、2008年度の税制改正によって創設された制度です。2017年にはふるさと納税制度が拡充され、ニュースで制度変更が報じられた場合には注意が必要です。

2016年ごろから「返礼品の自主規制依頼」が政府から自治体に対して行われています。2017年4月には、総務大臣名で返礼品のあり方などについて通達が出され、ふるさと納税の返礼品が今後変更する可能性もあります。特に、プリペイドカードや商品券など金銭類似性の高いもの、電子機器や時計など資産性の高いもの、高額のもの、還元率が3割を超えるものについては「送付しないように」とされています。

通達自体に法的な拘束力はありませんから、自治体が今後これに従うかどうかははっきりしません。しかし、政府から明確に方針が示されている以上、今後のふるさと納税のあり方について影響を受ける可能性はあります。ふるさと納税の制度もいつまで続くか分かりませんので、関連ニュースにはアンテナを立てておきましょう。(提供:Incomepress


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