企業年金連合会は企業年金制度全体の発展を目指し活動する組織だ。制度自体に関する調査研究や数多く存在する企業年金への協力など、事業内容は幅広い。その中心事業の1つとして元企業年金加入者に対するサポート、通算企業年金の運営などを行っている。
厚生年金基金連合会とは
企業年金連合会は企業年金制度全体を支えるための組織である。1967年に厚生年金基金の連合体として、「厚生年金基金連合会」という名で厚生年金保険法に基づき設立された。2004年の法律改正後は「企業年金連合会」へと名称が変わり、組織も改編された。
【関連リンク】企業年金連合会 https://www.pfa.or.jp/
企業年金とは、国民年金や厚生年金保険といった公的年金を補完するため企業や団体などが独自に設けた年金制度だ。厚生年金基金や確定給付企業年金、確定拠出年金などが該当する。そのような各企業年金制度に対する支援や調整を主に行っている。
具体的に、連合会が実施する事業はその性質から2つに分けられる。
1つは企業年金におけるナショナルセンターとしての事業である。各企業年金制度への情報提供や抱える問題への助言、制度全般の課題解決を図るための調査および研究などを行う。
もう1つは企業年金の通算サービスを行う通算センターとしての事業である。企業年金からの脱退者などがそれまで蓄えた資金を預かり管理する業務と、預かった資金をもとにして通算企業年金等を給付する業務を主に行っている。個別に存在する企業年金制度から離れた資金を通算し、納めた人に後々年金として還元するための事業だ。
【合わせて読みたい「老後・年金」シリーズ】
・働くほど損をする。現在の年金制度とは
・人生100年時代 老後に何が必要か
・「つみたてNISA」と「iDeCo」 どちらを選ぶべきか
・米国では高齢者の3割が「老後の蓄え」に後悔
ナショナルセンターとしての事業
ナショナルセンターとしての事業は主に2つある。1つめの事業は企業年金に加入している企業などに対するコンサルティング、研修による教育、情報提供といった活動だ。
連合会は厚生年金基金や確定給付企業年金、企業型の確定拠出年金を実施する基金や事業主を会員としている。その会員に、企業年金の運営や制度設計、運用などに関する相談対応、知識習得を目的とした教育機会および刊行物等による情報提供などを行う。客観的かつ中立的な立場から様々なサービスを提供する事業である。
2つめの事業は企業年金制度発展のために行う、制度の改正や規制緩和などの提言といった取り組みである。会員の意見、要望を聞き、それをもとに政府や関係団体に対し政策の提言、また要望実現のための活動を実行する。
会員の意見に基づいた政策提言、課題解決のため企業年金に関する調査研究を行い、現状理解を深める。企業年金の関係者や専門家を含めた委員会、研究会を設け、制度および運営についての実態調査などを実施する。
企業年金から資金を移換できる人の要件
連合会による企業年金通算サービス事業の基本的な業務として、企業年金から離れた加入者がそれまでに蓄えた積立金等の管理運用がある。企業年金に属さなくなった人の資金を連合会で預かり、管理する仕事だ。一定の要件を満たした人が連合会へ資金を移換できる。
企業年金にて蓄積した資産を移換できるのは企業年金の加入資格を短期間で失い、脱退一時金相当額を受け取ることになった人だ。もしくは加入していた企業年金の解散・終了に伴い残余財産分配金を受け取ることになった人である。
企業年金の加入資格を短期間で喪失した人は短期退職者と呼ばれる。厳密には下記の要件を全て満たす人のことを指す。
・退職などにより厚生年金基金、確定給付企業年金の加入資格を失った人 ・資格喪失日において加入していた厚生年金基金、確定給付企業年金の老齢給付金などの受給権をもっていない人 ・加入期間が短く厚生年金基金、確定給付企業年金の規約に定められた期間に満たない人
脱退一時金相当額は受給資格を満たす前に企業年金を脱退した人に対して支払われる脱退一時金に相当するお金だ。制度解散、終了した企業年金の加入者には残余財産、債務弁済後に残った積立金が分配されることがある。このお金が残余財産分配金である。
連合会に資金を移換するためには
企業年金に加入していた人はその企業年金の規約によって定められた一定の要件を満たすなどすれば脱退一時金や残余財産分配金を受け取れる。このお金はそのまま受け取るか、連合会に移換するかを選択できる。後者を選んだ場合、連合会に脱退一時金相当額あるいは残余財産分配金が移換され、後に支給される年金のもとになる。
例えばある企業年金基金が脱退一時金の支給要件として加入員期間3年以上10年未満かつ退職時60歳未満であることを定めているとする。その企業年金を5年間の加入員期間がある40歳の人が都合により退職する場合、要件を満たす。
その場合、退職までに積み立てられた残高などから算定した一定の額を得られることになる。それを脱退一時金として受け取るのではなく移換することを選んだ場合、連合会へとお金は移される。
留意しておきたいのは企業年金の取り扱い、規約はそれぞれ異なる点である。短期で退職して一時金などを受け取るにはその企業年金にて定められた要件を満たさなくてならない。加入期間や年齢などは企業年金の制度によって異なるため、不明な点がある場合は問い合わせて確認する必要が出てくる。
移換におけるポイント
連合会への移換を選択する際は、加入していた企業年金制度へその旨申し出る必要がある。期限は基本的に加入資格を喪失した日から1年間である。
また加入していた企業年金の種類によって、連合会への移換ができる場合とできない場合がある。移換されるのは原則厚生年金基金、確定給付企業年金に加入していた場合だ。確定拠出年金から連合会へ移換することはできない。
連合会に移換した後は、場合によっては再度移換することも可能だ。例えば元加入者が企業年金のある企業に転職した場合などである。その際は基本的に厚生年金基金、確定給付企業年金が選択肢になる。また連合会の介在なく、ある企業年金制度から別の企業年金制度へ直接移換されることもある。
なお連合会へ移換する脱退一時金相当額、残余財産分配金には税金がかからない。ただし年金を受け取る時は公的年金等に係る雑所得として扱われる。
通算企業年金と一時金
企業年金通算サービス事業によってお金を移換した人は基本的に将来年金等を連合会から受給できる。この対象者への給付業務も連合会の重要な仕事である。
連合会からの給付は主に通算企業年金と呼ばれる保証期間付終身年金だ。加入していた企業年金を脱退などした場合、それまでに蓄えられたお金を連合会で預かり、然る後に支給される年金である。
年金を受け取れる人に対しては支給開始年齢到達月に連合会から企業年金連合会老齢年金裁定請求書が送付される。連合会に登録された住所に宛てて出される書類だ。この裁定請求書に必要事項を記入し、必要書類を添えて提出後、所定の手続きが済めば支給開始となる。
支給開始年齢は65歳と、原則老齢厚生年金と同じ年齢になる。基本は年金での支給となり、終身年金のため生涯にわたって受給できる。60歳以降なら繰上げ受給の選択も可能だが、受取期間が長くなるため年金額は減る。保証期間は満80歳までとなっており、支給開始からそれまでの間であれば場合によって一時金が受け取れる。
一時金には死亡一時金と選択一時金がある。保証期間内に受給者が亡くなった場合は遺族に死亡一時金が支給される。予期できない病気や災害などにより資金が必要となれば選択一時金を受け取れる場合もある。ただ年金の受取開始年齢に達するまで原則選択一時金は受け取れない。
通算企業年金の支給対象者
通算企業年金を支給されるのは連合会にお金を移換した人である。企業年金から短期で抜けた中途脱退者と解散基金加入員および終了制度加入者だ。基本的に連合会へ資金を移換した人は年金を受け取れるため、支給対象となる要件は移換できる人と同様である。
そもそも企業年金制度からの年金支給要件を満たしており、中途脱退者の要件に該当しない場合は連合会への移換はできず、連合会から年金が支給されることもない。60歳未満での退職と10年以上の加入員期間が要件だったとき、15年の加入期間がある人が50歳で退職したのなら、年金はその企業年金から支給される。
ただ中途脱退者とは認められなくても、その時点で支給対象から必ずしも除外されるわけではない。仮に中途脱退者の要件に年齢は60歳未満と定められている状況で60歳を過ぎて脱退したとする。もしその企業年金制度が解散もしくは終了し、残余財産分配金の支給対象になれば、解散基金加入員および終了制度加入者としての受給の可能性が残される。
通算企業年金はいくらもらえるか
通算企業年金として支給される金額は移換時の年齢や移換する金額によって変わる。もとになるのは移換された脱退一時金相当額あるいは残余財産分配金だ。それらから年金の管理にかかる事務費を控除した金額に予定利率で付利した額が年金原資となる。その年金原資によって通算企業年金額が決まる。
予定利率は年金額算定の前提となる一定の運用利回りのことだ。この予定利率が毎年複利で増えていくという前提のもと年金額は計算される。運用期間が長いほど年金額は高くなるが、連合会への移換が遅くなると運用期間が短くなる分支給される年金額は低くなる。
したがって移換時の年齢が高いほど支給額は低く、逆の場合は高くなる。また移換する脱退一時金相当額もしくは残余財産分配金が高ければそれに応じて支給額は高くなる。
35歳0月の男性が脱退一時金相当額10万円を移換した場合は、概算で年額8200円の通算企業年金が65歳から支給される。同じ年齢で脱退一時金相当額が50万の場合は年額4万1300円ほど、100万円の場合は8万2700円ほどとなる。
55歳0カ月の男性が移換した場合は脱退一時金相当額10万円で5500円ほど、50万円で2万7500円ほど、100万円で5万5100円ほどだ。
女性は平均寿命が長い、つまり受け取り期間が長いため、年金額は男性に比べ低い。35歳0カ月で脱退一時金相当額が10万円の場合は6700円ほど、50万円の場合は3万3600円ほど、100万円の場合は6万7400円ほどになる。(ZUU online編集部)
【合わせて読みたい「老後・年金」シリーズ】
・働くほど損をする。現在の年金制度とは
・人生100年時代 老後に何が必要か
・「つみたてNISA」と「iDeCo」 どちらを選ぶべきか
・米国では高齢者の3割が「老後の蓄え」に後悔