山形は森林が県土の72%を占める、まさに「山の国」。奥羽山脈を背骨として蔵王山に月山、鳥海山など日本百名山のうち6座を有する名峰・霊峰の地でも知られています。山々には豊かな水が流れ、渓谷を形作っています。全国にある落差5m以上の滝約2,500箇所のうち山形にはなんと230もの滝が集中しており、「日本一の滝王国」にふさわしい名瀑が点在しています。

ここでは山形が世界に誇る名瀑や奇瀑を紹介するとともに、「滝」を通じた観光アピールの取り組みをまとめます。

滑川大滝(なめがわおおたき・米沢市)の日本を代表する世界に誇る名瀑

Tamasudare
(写真=Derek Yamashita/Shutterstock.com)

「日本の滝百選」のなかでも壮大なスケールを持つ東北地方最大級の名瀑です。米沢駅から車で約1時間の滑川温泉から30分登山道を登った大滝展望台から望む落差80mの遠望は見事。さらに急斜面を30分下って沢を進むと、大滝の真下までたどり着くことができます。周辺には滑川温泉ほか姥湯(うばゆ)温泉もあって、温泉も楽しめます。アクセスは中級以上の登山道を30分以上歩くので、軽登山の準備が必要です。

梅花皮滝(かいらぎのたき・小国町)の世界百名瀑の圧倒的規模

落差270m、7段構成の「世界百名瀑」の一つで、切り立った渓谷にあります。新潟県境に近い飯豊山の山中にあって、飯豊山荘から急斜面を約3時間登った滝見場から鑑賞します。遠望でもその圧倒的なスケールは感動的で、一見の価値ありです。梅雨前、雪渓の多い時期のみ滝下までアクセスできます。滝見場までは本格的な登山装備が必要のため、一般観光客にとっては「幻の滝」といえるでしょう。

関山大滝(せきやまおおたき・東根市)のアクセス簡単なパワースポット

落差10mで横に広がりながら流れる愛らしい滝です。国道48号線沿いの「大滝ドライブイン泉や」の裏手にあるので、駐車場から滝まで徒歩1分とアクセス良好。奇岩や怪石に囲まれた渓谷美のなか、豪快に流れ落ちる滝は圧巻。夏は避暑、秋は紅葉が楽しめるほか、最近はパワースポットとして若者を中心に賑わっています。滝の近くにそびえる山形県天然記念物指定の「大カツラ」も見どころです。

白糸の滝(しらいとのたき・戸沢村)の目の前に迫る一筋の流れ

Shiraito
(写真=Manuel Ascanio/Shutterstock.com)

松尾芭蕉の『奥の細道』にも登場する「日本の滝百選」の一つです。最上川沿いに続く最上峡に点在する「最上四十八滝」のなかでも最大の規模を誇ります。落差は120mあり、白糸が流れ落ちるような滝の景色は国道47号線沿いの「白糸の滝ドライブイン」から簡単に鑑賞することができます。滝の下にある不動堂の赤鳥居がアクセント。すぐ近くには草薙(くさなぎ)温泉があります。

くぐり滝(くぐりたき・南陽市)のドーナツ状の穴から落ちる珍しい滝

自然に巨石がくり抜かれ生まれたドーナツのような丸い穴に水が流れる、全国的にも非常に珍しい滝です。落差は14mと小ぶりですが、吉野川の源流に当たり周辺の山々から流れ込む豊富な水量が一気に流れ落ちています。滝の周囲は緑や紅葉が多く、駐車場から遊歩道を通って気軽に散策できます。近くには赤湯温泉があります。

滝専門の観光サイトが開設

全国有数の滝が集中するエリアである山形では、滝を主役に据えた観光アピールを行っています。観光サイト「山形県観光情報ポータル・やまがたへの旅」には滝の特集ページが設置され、次々と知名度アップの取り組みがはじまっています。特に、「滝王国山形動画」のページは必見です。世界百名瀑の梅花皮滝や奇瀑・くぐり滝など魅力ある県内の滝をドローン撮影されているので、アクセスが難しく「幻の滝」と呼ばれる名瀑でも気軽に楽しめる工夫がされています。

2017年には山形の滝の魅力を全国に発信するため、はじめて「日本一の滝王国山形フォトコンテスト」が開催され、応募総数501作品の投稿がありました。ゲスト審査員に写真家の小松ひとみ氏を迎え審査が行われ、さまざまな角度から撮影された応募作品のレベルの高さに驚いたとの総評を残しています。

また、「みんなの滝広場」ではお気に入りの山形県内の滝を投稿してもらい紹介する企画も進行中です。掲載者には先着100名にオリジナル滝カードがプレゼントされる楽しみもあります。

山形では県をあげて地元の滝を再発見し、観光の呼び込みに利用しようという動きが加速しています。これまで観光スポットとしてはあまり注目されていなかった滝が、観光ルートの定番になっていくかもしれません。(提供:JIMOTOZINE)