北京電影(映画)学院と社会科学文献出版社が共同で「数字娯楽産業藍皮書;中国遊戯産業発展報告2017」を発表した。ニュースサイト「今日頭条」が分析記事を載せている。産業としての中国ゲーム業界とはどうなっているのだろうか(1元=17.09日本円)。

中国遊戯産業の概況 スマホで4億人がゲーム楽しむ

中国経済,ゲーム業界,業界展望
(画像= Rawpixel.com / shutterstock.com)

中国のゲーム人口は、2016年6月末には4億8920万人、同規模前年比6.7%のプラスだった。そのうち移動端末のユーザーは4億500万人、10.7%のプラスだった。そして同年末には5億人を上回ったと見られる。日本は、2015年のデータで4336万人とあり、総人口比では大差なさそうである。

産業規模は2015年、1407億元、2016年には1800億元を超えた。また輸出は、500億元程度と見積もられている。発展の急な移動端末ゲームの総収入は374億8000万元で、前年比79.1%伸びた。通年では800億元を超えたと見られている。

証券市場においても、中国の遊戯関連企業は極めて強力である。時価総額世界トップ10入りしている企業(テンセント/騰訊)は別格としても、中国企業はこの業界で163社の上場企業を有している。そのうち81.0%はA株(上海または深セン)10.4%は香港市場、8.6%は米国市場である。

テンセントは、2016年9月に時価総額アジアナンバーワン企業となった。2017年のゲーム収入は、978億8300万元の38%プラスだった。日本円で1兆6728億円に相当し、任天堂 <7974> の18年3月期予想1兆200億円を大きく上回っている。

国内でゲーム機開発

当局の遊戯産業政策も“進歩”を続けている。文化部、工業信息化(情報化)部、国家新聞出版広電総局(以下総局)など関連部門が連携し“インターネット+”の遊戯産業を戦略的に構築していくという。

総局は2016年2月「網絡出版服務管理規定」同5月「移動遊戯出版服務管理に関する通知」などで、移動遊戯産業の“健康的発展”を促すため「中国網絡遊戯精品戦略」を実施した。何のことかよくわからないが、今後は“自由生産状態”を回復させるとあるので、その前に引き締めを図ったのだろう。要はクオリティの高い商品(精品)を作りなさい、ということだ。

今後は自由化によって競争の多元化を図るとともに、国内勢を後押しする。具体的にはマイクロソフトやソニーなどの“進入”に対し、国内のアリババやファーウェイが、据え置き型ゲーム機分野へ参入するのを促す。そして将来的にはハード、ソフトとも輸出を目指す。

経験豊富な海外勢に対抗するのは並大抵のことではないが、国内遊戯産業にとって大きな機会と挑戦だと記事はあくまでアグレッシブである。

課題と目標

現状、中国遊戯産業最大の弱点は、研究開発部門にある。

・人材需給のアンマッチ、優秀な人材を満足させる環境ではない。
・創作キャラクターをめぐる環境の改善。
・営業、運営方法の改善。
・盗作、偽物対策の強化。

以上を通じて、研究開発を活性化する。最後に4つの提言を載せている。

1 市場体系の確立
2 産業連鎖の継続的な高度化。
3 管理監督環境の改善。
4 創造的な人材の保護と育成。

こうした環境改善を通して、何を目標とするのだろうか。2B(To Business)分野へ展開し、世界のVR 2B界で先頭に立つことが目標の一つだ。あるデータによれば、2016年中国のVR市場規模は、56億6000万元と見積もられている。2020年にはこの10倍、556億3000万元を目指す。

2B以外では、VR 2C(To Consumer)分野こそ最終目標となる。いかにVRを一般大衆にまで普及させるかである。ゲームこそ最も普及させやすい領域と判断しているのだろう。

中国は質の高いコンテンツ作りを苦手とし、ドラマは韓国、ACG(Animation Comic Game)は日本からの供給に依存していた。しかし産業育成の思想はしっかりできているように見える。決して侮ることはできないだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)