不動産投資を始めると、法人設立のタイミングは誰もが気になるようだ。空き家・古家への投資を勧める著者は「1000万円の家賃収入を得たいなら法人はすぐつくったほうがいい」という。その理由とは?

(本記事は、三木章裕・大熊重之の共書『儲かる!空き家・古家不動産投資入門』=フォレスト出版株式会社、2017年9月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【『空き家・古家の不動産投資』シリーズ】
(1)ボロボロな家ほど「買い」?空き家・古家投資が魅力的な理由
(2)利回り「20%」超えの物件も見つかる?――不動産投資で「お宝」を見つける条件
(3)1000万円の家賃収入を得たいならすぐ法人を設立せよ

儲かる!空き家・古家不動産投資入門
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

資産づくりで経済的に自立する……三木

大阪商人気質の中に、「お上に頼らない」という考え方があります。

大阪商人は、日本三大商人と言われる中で唯一、店を構えて商売をしました。そのため保険もない時代から、歴史的に何度も火災や戦争に巻き込まれて壊滅的な被害を受けながらも、彼らは自らの蓄えを惜しみなく投げ打って街を再興させてきました。

火災が起きれば、家もお店も家族も仕事も収入もすべて失う可能性がありました。

そのため、いつの時代にも始末してコツコツ種銭を貯めて、それを投資しながら資産形成も行い、いざとなった時に備えました。

また、大阪は政治にも翻弄されてきました。

織田信長の時代には、石山本願寺との争い(石山合戦。1570年からほぼ10年にわたった浄土真宗本願寺勢力と織田信長の戦い。)で大坂の町も焼けました。豊臣氏の末期には、大坂の陣で徳川家康に焼き討ちされました。また、第2次世界大戦でも大阪は空襲で焼け野原にされました。

そのつど、大阪商人はどんな逆境でもしっかり蓄財して、私財を投げ打って再興のために尽力しました。

また、大阪では八百八橋と言われるほどたくさんの橋がありますが、そのほとんどが民間によってつくられました。まさに民間でインフラを整えていきました。

有名なところでは淀屋(江戸時代の豪商。「天下の台所」と呼ばれるようになった全国の米相場の基準となる米市を設立。そのほか、さまざまな事業を手がけ莫大な富を築く。)の淀屋橋で、地名にもなっています。

余談になりますが、通天閣も戦後になって焼けてしまったものを、地元商店会で復興しようと尽力しています。あの規模のものを民間で再興しようとしたわけですから、大阪商人にはすごい気概がありました。しかしこれは、地元商店会だけの寄付ではまかなえず、当時大阪進出を考えていた日立グループの支援を受けて再興に至りました。

そのため、今でも通天閣には日立グループの看板がついています。

ほかにも、中之島の公会堂や図書館は、みな民間の寄付でできています。

大阪はまさに民間主導で町をつくってきたのです。

このように歴史的に政治や戦争などに翻弄されたことから、大阪商人は政治をあてにしない、「お上に頼らない!」という気質が身についてきました。

こうした歴史の情勢は、今の政治にも同じことが言えないでしょうか?

長年積み立ててきた年金の基金は失われ、そのつけは国民の年金の削減や増税でまかなわれているようになっています。

あなたも同様、お上に頼っていたらどうなるかわからない時代です。

だからこそ、大阪商人のように“始末”して蓄財をし、もしもの時のために自ら備える必要が出てきています。つまり、国に頼らない経済的自立の時期を迎えているのです。では、経済的自立に必要な不動産投資の考え方とは何でしょうか? それは次のようなメッセージです。

借金のない賃貸経営を目指そう!

古くからの大家さんは、よく「借金を全部支払って、初めて自分のものになるんや!」と言います。

誰にも(金融機関などに)干渉されず、収入も支出も自分ですべてコントロールできる賃貸経営を目指していきましょう。自らの手腕により自立を勝ち取っていくことが大切なのです。

経営者こそ空き家・古家不動産投資で資産をつくろう……大熊

儲かる!空き家・古家不動産投資入門
(画像=Olena Yakobchuk/shutterstock.com)

全古協の空き家・古家不動産投資は、初心者が誰でもやればできる仕組みをつくっています。そして、2、3軒の空き家・古家再生を経験すれば、かなりの不動産(大家業)のノウハウができるので、その後、1棟アパートや1棟マンション投資に拡大する方も多くなっていくだろうと考えていました。

しかし、現在は不動産市況の影響もあり、空き家・古家不動産投資をドンドン続けていく方が多いようです。

現在、全古協の会員で一番多くの空き家・古家購入者は、18軒です。その方は脱サラして大家業を専業にしています。最初は大阪で、次は京都でドンドン古家再生投資をしています。管理も自分でやっています。

次に10軒ほどの所有者が5名います。だいたい1年半ぐらいで10棟の所有ですので、すごいペースです。3人のうちの2人は50代中小企業経営者、もう1人はサラリーマンです。

本格的に空き家・古家不動産投資を決意した経営者Aさん

Aさんは経営者で、最初はテラス物件から始めて、大阪の東大阪市・大東市・守口市と増やしていきました。

話を聞くと、「1棟ものやマンション投資も考えましたが、やはり空き家・古家不動産投資が一番リスクが少ないという答えにいき着きました。今のところ、この空き家・古家投資を続けます」と返事が返ってきました。

たしかに、現在高騰する不動産市況では、これ以上の良い条件の物件は見つかりません。Aさんも実際に体験したからこその言葉なのでしょう。

そして、不動産の実績(個人なら確定申告・法人なら決算)を積んでおけば、いざ不動産市況が変わった時に大きな投資もできます。不動産は長期戦なので、それくらいのことを考えてもいいでしょう。

私自身も4つの会社で空き家・古家不動産投資をしていますが、一部社員にも貸し出しています。また、倉庫として使っていたりと、いろいろな活用をしています。今後は外国人研修用に活用するのもいいのではと思っています。

サラリーマン大家をするなら融資を活用する……大熊

Bさんはサラリーマンで、将来の社会保障の不安から不動産を始めました。

株式投資をしていたので投資に対してはハードルが低かったようです。空き家・古家再生に限らず、不動産投資をする場合、株やFXなどをやっている人は投資する判断が早い。資産のシミュレーションができるのでしょう。

そして、面白いもので株が上がり始めると、「株で儲けた分で現物の不動産投資に変える」という人が増えます。株が下がると、「もう株はやりたくない。安定している不動産投資に切り替えたい」と、結局どちらでも、不動産投資をする人が増えます。

Bさんは3回目の物件見学ツアーで買付を入れるようになり、物件見学ツアーと臨時の買付ツアーにも参加して所有物件を増やしていっています。中には、利回り20%を超えるものもあります。平均利回りも15%以上です。

多くの方が2棟目からは融資を考えて増やしています。

日本政策公庫や信用金庫などを利用して手出しを少なくすることを考えています。それに利回りが高い分、家賃を貯めていくと、結構早い段階で次の物件資金になります。あとは、ひたすら物件を探すことになります。

全古協の物件見学ツアー、臨時の物件情報や一般的な不動産情報から今までの経験と全古協のサービスを利用して探し当てます。あとは、判断するスピードを高めるだけです。

融資についてのアドバイス……大熊

私のアドバイスは、できれば1軒目は現金で買って、2軒目以降は融資でもOKということです。なぜならば、1軒目を現金で買っていれば2軒目以降で万が一、家賃が入らなくても1軒目の家賃で補えるからです。ほとんどリスクはないと言ってもいいでしょう。

もう1つはリフォームローンです。それなら手出しがあるのでリスクは低くなります。個人属性があるので、それぞれリスクを考えて計画的にするなど、どのパターンでも大丈夫です。

最近、融資についての問い合わせが多いのも事実です。「古家だから借りられないですよね?」「担保に入らないから難しいですよね?」「対応年数が過ぎているから厳しいですよね?」などなど……。

基本的には、対応年数が過ぎているので融資はできません。しかし、個人の属性を使った融資であったり、大家業の実績でも融資が可能な時があります。それでも、都銀や地銀は難しいかもしれませんので、信用金庫と日本政策金融公庫になります。

大切なことは紹介で行くことです。お金を貸す場合、知らない人には基本的に貸しません。だから、誰かの紹介での訪問がベストです。

先日(2017年6月)、全古協が政策公庫に紹介したプランナー会員の方に国民政策金融公庫を紹介し融資を得られました。

条件は、「返済期間14年、固定金利1.9%、無担保」、別の方は「返済期間11年、固定金利2.1%、無担保」というように、信用金庫でも借りることができます。金利は、だいたい2~3%のようです。

たしかに、金融機関も不動産に対する融資は厳しくなると言っております。しかし、それは数千万、億単位の話です。私たちが購入する物件はせいぜい500万円くらいです。その辺りなら金融機関もリスクが少なく貸し出しやすいのです。

もう1つ多く使われている融資は、空き家活用ローンです。

地銀数行で扱っている商品ですが、物件取得費は出ないもののリフォームに対する融資は500万円まで可能です。返済期間10年で約2.0%の金利です(銀行によって違います)。

物件価格が安くリフォーム費用が多くかかる物件ではお得です。

法人の設立について

「どれくらいの家賃になったら、法人にしたらいいのですか?」という質問をよく受けます。

私の答えは、「あなたの目標はどこですか?」ということです。

2、3軒の家賃で満足なら法人をつくる必要はありません。しかし、1000万円の家賃収入を達成したいなら、1軒目から法人にするほうが賢明です。

家賃収入は、個人であれば所得にプラスされ、所得税が上がってしまいます。国の政策も所得税は上がる傾向にあります。しかし、法人税は下がる方向にあるのです。

そのことを考えながら、自分はどれくらいの家賃収入になってどれくらいの税金になるなどのシミュレーションをしてください。

もう1つ、法人をつくると有利なのは融資がしやすくなります。

やはり個人より法人税を支払っているほうが信用があります(赤字ではダメですが)。最低でも2期以上の決算を迎えて、黒字であれば信頼は高くなります。それと相談できる税理士さんをつくっておくことも大切です。

三木章裕(みき・あきひろ)
収益不動産経営コンサルタント、一般社団法人全国古家再生推進協議会顧問なども務める。NHK 連続テレビ小説「あさが来た」でも注目され、500年の歴史の中で磨き上げられた精神といにしえの蓄財術を引き継ぐ。近年では高利回り物件として提供する不動産投資を推進している。

大熊重之(おおくま・しげゆき
(一社)全国古家再生推進協議会理事長、(一財)日本不動産コミュニティー講師、(株)オークマ工塗代表取締役、オークマグループCEO。現在、350棟以上の古家再生の実績を持ち、中小企業経営者、サラリーマン、主婦まで多くの大家を生み出している。