2014年に施行された空き家対策特別措置法により、空き家はそのまま放置しておくと負担が大きくなった。実家の両親が亡くなれば、それまで両親が住んでいた家は空き家になってしまう。著者は「空き家・古家が魅力的な投資」と主張する。著者のセミナーを受講して空き家投資を成功させた投資家には「ボロボロな家ほど買い」という。なぜ空き家・古家への投資は魅力的といえるのだろうか?

(本記事は、三木章裕・大熊重之の共書『儲かる!空き家・古家不動産投資入門』=フォレスト出版株式会社、2017年9月1日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

【『空き家・古家の不動産投資』シリーズ】
(1)ボロボロな家ほど「買い」?空き家・古家投資が魅力的な理由
(2)利回り「20%」超えの物件も見つかる?――不動産投資で「お宝」を見つける条件
(3)1000万円の家賃収入を得たいならすぐ法人を設立せよ

儲かる!空き家・古家不動産投資入門
(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

空き家・古家を放置していれば、どんどん損をしていく……三木

2015年5月に「空き家対策特別措置法(正式名:空家等対策の推進に関する特別措置法)」が施行されました。

この法律の趣旨を簡単にまとめると、以下のような内容です。

・空き家を放置させない→空き家を放置すると行政が勧告・強制撤去とその費用負担が求められる。
・固定資産税の特例対象から除外(更地なみ課税)→固定資産税が3~6倍に跳ね上がる!

一般のサラリーマンが、もし親の空き家の固定資産税を払っているとします。たとえば、年間10万円の固定資産税を支払っていたものが、この法律を適用されると年間30~60万円に跳ね上がるということです。当然、維持することができなくなります。

また、処分するにしても解体費が数十万かかるとすると、建物を解体することを躊躇してしまいます。

ということは、なんとかして空き家を処分しなくてはいけなくなります。そのため、現状の空き家のままで処分したい人が増える。

もうすでに最近でも、維持管理や固定資産税、解体費を考えればただでも処分したいという相続人の方がいました。

まして本格的に特別措置法が運用されるようになれば、ますます加速度的に空き家を処分したい方が増えます。

その時が皆さんの活躍するチャンスです。

この空き家を再生して賃貸転用するスキルがあれば、いくらでも儲けるチャンスがあるわけです。

以上のように、空き家・古家が魅力的な投資であることが、おわかりいただけたと思います。

古家再生士(R)、先輩大家のアドバイスで購入へ……大熊

Kさんが物件見学ツアーに参加することになったきっかけは、一般社団法人全国古家再生推進協議会(以下、全古協)が毎月開催している「古家再生投資・空き家活用セミナーin大阪」(全古協が主催する空き家・古家を再生し活用する方法とその仕組みを説明するセミナー。以下、古家説明会)に参加した時に、「空き家・古家物件見学ツアー」の案内があったことからでした。

Kさんは「これはチャンス!」と言わんばかりに、すぐさま挙手をして、翌月の物件見学ツアーに申し込みをしました。

古家説明会の際に、物件見学ツアーとはどんなイベントであるかの詳しい説明があります。

Kさんが物件見学ツアーに寄せた期待は、「現場(古家)を体験できる」というコンセプトでした。実際に自分が古家を購入するとなった場合、老朽化している物件の善し悪しは素人では判断ができません。

空き家・古家不動産投資を実践していくうえで、ボロボロな状態の物件を回復させるリフォームについて、Kさんは古家説明会に参加する前からずっと興味を持っていました。

古家説明会に参加してからは、「空き家・古家不動産投資をやりたい!」と、一気に火がついて、すぐさまオンライン講座に申し込みをしました。

それから猛勉強の末、なんとオンライン講座に申し込みをしたその1週間後には、古家再生投資プランナー(R)(空き家・古家を投資物件に変える知識を習得し、全古協が認定した方。以下、プランナー)試験に合格したのです。

物件見学ツアーでは、古家リフォームを専門とした再生士と一緒に、築30年、40年、50年もするテラスや戸建てをリアルに体験します。

朽ち果てた台所であったり、ボコボコしていて今にも底が抜けそうな床であったり、動産(不動産以外のすべての財産。この場合、空き家・古家に残っている家具・生活用具・雑貨・ゴミなどを示す。)だらけで歩くスペースもないリビングであったり、現実の古家はKさんが想像していた世界よりも、はるかにひどい状態であることに驚いた反面、どこか感心する一面もありました。

古家の本来の姿を知ったKさんは、「この家の中の物は全部リフォームしないとダメだな」と、これも自身が想像していたリフォームより「はるかに工事費用がかかるだろう」と頭によぎり、少しショックを受けたのでした。

Kさんは次の物件へ移動する車の中で、同乗している再生士に、先ほど見た物件のリフォームのポイントや注意点について質問しました。

すると、再生士からは、「台所はそのまま使えるから取り替えるほどでもないし、床もだいぶん痛んでいるけど、大工工事をするほどでもありません。それと足場がないほどの大量の動産は、それを撤去する費用分、物件の売値から引いてもらいましょう」という回答がありました。

再生士が出したリフォーム費用は、Kさんの予想より大幅に安価な工事費用でした。

「悪いものは全部取り替える」、そんな固定概念を持っていたKさんは再生士のリフォームに対する考え方が勉強になりました。

物件見学ツアーには、Kさんの先輩になるプランナーもいました。

「この人たちももとは自分と同じ立場だったはず」と、Kさんは先輩プランナーからもいろいろ吸収しようと積極的にコミュニケーションをとるようにしました。

先輩プランナーからは、「先月に3軒目の物件を買いました」とか、「先々月に購入した物件は、3週間で入居者が付きました」とか、「ボロボロの物件だから“買い”ですよね」とか、Kさんには先輩プランナーの様子がどこか自信に満ちあふれているように見えました。

Kさんは「これが経験の違いなのか」と、どこか羨ましさを感じ、「自分も早く買いたい」と、空き家・古家不動産投資への想いが募っていきました。

Kさんは物件見学ツアー後にある懇親会にも参加しました。

懇親会は全古協のスタッフや、物件見学ツアーに参加した方々と一緒に、コミュニケーションを交わす場所です。この懇親会は、ただただコミュニケーションを交わし、仲良くなるための場所ではなく、実はこの席こそ、非常に価値のあるものだとKさんは感じたのです。

たとえば、税金の話や融資の話、はたまた耐震の話まで、また過去にあった問題の事例などリアルな話ばかりで、Kさんは「へぇー、そうなのか」と、いちいち感心するしかありませんでした。

また、今回の物件見学ツアーで紹介した物件に、買付の希望を出した方をみんなで称え合い、入居付けを心配される方へは「絶対に大丈夫ですよ。私も3カ月はかかりました」と、気持ちを込めた言葉で励まし合います。

不動産屋から「先ほどの物件に買付が通りました」と連絡が入れば、みんな総立ちで「おめでとう!」と拍手喝采と大盛り上がりです。

Kさんは「このような同じ価値観を持った仲間がいることで、個人が強くなれるんだ」と、空き家・古家不動産投資を実践するうえでの仲間の大切さを知ることもできました。

再生士との話の中で、Kさんが最も感銘を受けた言葉がありました。

それは「まずは1軒目を買うこと」でした。

そして、そのあとで次のように話をしました。

「空き家・古家不動産投資をいくら勉強しても、いくら物件見学ツアーの経験を積んでも、物件1つを購入するほうがはるかに勉強になります。とはいっても、500万円前後する大きな買い物です。当然リスクもあります。でも考えみてください。そのリスクをすべてカバーするために私たち全古協があります。だから、自信を持って、勇気を持って1軒目の購入に踏み切ってください。私たちは全力でサポートします」

Kさんは、物件見学ツアーに初参加した2カ月後で1軒目を購入しました。

2回目の参加となったKさん。この時は「1軒目を絶対に買う!」と、気合を入れて物件見学ツアーへ挑んだそうです。そして、見事に自身が求める物件を購入することができました。

Kさんは、その次の3回目の物件見学ツアーでも2軒目も購入しました。

今ではベテランプランナーとして、初めて参加される方々のサポートもしています。

物件見学ツアーで空き家・古家を体感するということ……三木

空き家・古家物件見学ツアーでの体験談を見ると、私の本を読んだり、ほかの不動産投資本を読んだり、事前に知識は持っているつもりで来る方がいらっしゃいます。

Hさんは、ほかのセミナーで物件商談会と称して、物件を紹介されて営業されたりしたようです。そのような経験があると、こうした物件見学ツアーも怖くなるのは当たり前です。

つまり、「物件を見る=売りつけられる」という方程式が頭にインプットされているのです。

しかし、全古協が主催している物件見学ツアーは不動産業者が開催しているものではなく、空き家・古家を再生している大家仲間が、自主的に自分たちで集まって物件を体験するためにやっているものです。そのサポートとして全古協のコンサルタント、スタッフがお手伝いをしている形です。ですから、あなたも気兼ねなく仲間で気楽に見るため体験するためのツアーと言えます。

たとえばKさんの場合は、何度も参加することで、多くの空き家・古家不動産投資の先輩や仲間と知り合いになることができました。このような同じ気持ちを持った仲間がいることで安心して自分の考え方についての意見や率直な感想がもらえるようになり、本当に腹を割った会話ができるようなります。

物件によっては「これはぜんぜんダメですね!」など率直に言えるわけです。これが不動産業者が一緒だとここまで突っ込めませんし、「この物件買いたい!」と思ってもこちらの気持ちをそうやすやすと不動産業者に言うわけにはいきません。

なぜなら、値切る交渉をしてもらう可能性もあるわけですから。

不動産業者には、あまり本音で言えないのです。

しかし、このような物件見学ツアーなら、みんな仲間ですから本音をぶつけ合えばいいわけで、その中でとんでもないアイデアも浮かんだりします。

「この階段下は塞いでいるけど収納棚にできるのでは」「ここに壁をつけて脱衣室をつけると使いやすくなるね」「ここにキッチンを移動すると裏の扉の近くなので生ゴミが出しやすいよね」「雨漏りしている物件は普通みんな敬遠するのに、これくらいの雨漏りならすぐ直せるからその分安く買えばいい」など、一般的な不動産の知識以上の現場的判断に遭遇したり、みんながいろいろな視点で思わぬ発想をしてくれます。

これだけでも参加者は1人で物件を見に行くより数段経験値がアップします。

またCさんの場合は、不動産投資というだけで後ろめたさがあったのでしょうか、このような場では同じような気持ちの人たちがたくさんいること知って、後ろめたさが吹き飛んで勇気が湧いてきたと言います。

さらに物件見学ツアーでは、不動産投資のシミュレーションを体験できてしまいます。このようなツアーがなければ、多くの人は不動産投資をしようと思うとすぐに不動産業者のところから資料をもらい物件を見て買おうとします。

空き家・古家といえども何百万円もするものをそう簡単に買おうとするのは危険です。

たとえば、自分のお気に入りの家電や服ならかなりのお店を回ってウインドショッピングをして買おうとするはずなのに、なぜ不動産なら簡単に買えてしまうのか?

それは、あまりにも知識と経験がなさすぎて、ものの判断ができなくなっているからです。だから物件をパッと目の前に用意されると、最良の判断ができなくなってしまい、買いたい気持ちが先行してあと先考えず買ってしまうのです。

あなたの日常の買い物では、実際の使用感などの体験を積んでいるので慎重に購入判断ができます。しかし、こと不動産に関してはあまりにも無頓着すぎる人が多いのです。

物件を買ってリフォームして入居募集して、入居者対応をして賃貸経営をしていくと考えればシンプルな投資ですが、物件選びに安易すぎる選択をしてしまい、失敗してしまうのです。

私はこのような失敗をされる方々を多く見てきました。

では、上手に不動産投資をするにはどうすればいいのでしょうか?

それは、たくさんの経験を積むことしかありません。

ではどうやって積めばいいのでしょうか?

それは、多くの物件を実際にこの目で見るしかないのです。物件を買う前にどれだけの数を見てきたかが不動産賃貸経営の成功の鍵になるのです。

だからと言って、別に全古協の物件見学ツアーだけが素晴らしいと言っているのではありません。とにかく物件を見るという経験・体験が少なすぎるのです。

購入前に多くの物件に関わる、それも資料ではなく現場を体験することが大切なのです。

この点で、体験を増やすための弱点があります。それは不動産業者にたくさん案内をしてもらおうとしても、彼らの営業活動もあるため、ただ見学のために来るお客さんは相手にされず、いずれ物件紹介もなく見に行く機会もなくなるのです。

そうした弱点を、全古協では不動産投資家同士の集まりとして見て回ることで、経験数を増やしやすくしているわけです。

三木章裕(みき・あきひろ)
収益不動産経営コンサルタント、一般社団法人全国古家再生推進協議会顧問なども務める。NHK 連続テレビ小説「あさが来た」でも注目され、500年の歴史の中で磨き上げられた精神といにしえの蓄財術を引き継ぐ。近年では高利回り物件として提供する不動産投資を推進している。

大熊重之(おおくま・しげゆき)
(一社)全国古家再生推進協議会理事長、(一財)日本不動産コミュニティー講師、(株)オークマ工塗代表取締役、オークマグループCEO。現在、350棟以上の古家再生の実績を持ち、中小企業経営者、サラリーマン、主婦まで多くの大家を生み出している。