東京株式市場では、日経平均株価が2/27(火)の取引時間中に付けた「小天井」である22,502円が意識される水準まで値を回復しつつあります。米中貿易摩擦が気になる所ですが、日米首脳会談を無事通過したことや、外為市場での円安進行が追い風になっているようです。4/27(金)には朝鮮半島において、歴史的な南北首脳会談が実現し、極東アジアの地政学的リスクも後退しつつあります。

そうした中、3月決算企業の決算発表が本格化しつつあります。4/27(金)は300社近い数の上場企業が発表予定になっており、決算発表の前半のヤマ場を迎えています。2018年3月期の業績については、会社予想やアナリスト予想を上回る銘柄も多く「好決算」が目立っていますが、2019年3月期の予想については、厳しい見通しを発表する企業も散見され、やや波乱含みとなっています。この時期の投資判断については、細心の注意が必要であると考えられます。

そこで、今回の「日本株投資戦略」では、5月の月替わり以降に決算発表を予定している企業のうち、アナリストの期待が強いとみられる銘柄にスポットを当ててみました。その中に、有望な投資対象はあるのでしょうか。また、投資する上での注意点は何でしょうか。

決算発表シーズン後半でアナリストの期待が大きい銘柄は?

日本株投資戦略,好業績銘柄
(画像=PIXTA)

それではさっそく、決算発表シーズン後半で、アナリストの期待が大きく、2019年3月の業績についても期待が大きい銘柄の抽出を試みてみたいと思います。スクリーニング条件は以下の通りです。

(1)東証1部に上場する3月決算銘柄であること
(2)時価総額が1千億円超(4/26現在)であること
(3)広義の金融を除くセクターに属していること
(4)業績予想を公表(Bloomberg)しているアナリストが3名以上いること
(5)決算発表予定日が5/1(火)~5/15(火)の銘柄であること
(6)第3四半期(累計)が営業増益となっている銘柄であること⇒表1では(A)の数字がプラスの値になります
(7)第3四半期(累計)の営業増益率が2018年3月期(通期)の予想営業増益率(会社予想と市場予想)を上回っていること
⇒表1では(A)の数字が(B)および(C)よりも大きくなります
(8)2018年3月期(通期)の営業利益について、市場予想が会社予想を上回っていること
⇒表1では(C)の数字が(B)よりも大きくなります
(9)直近4週間で市場予想EPS(一株利益)が低下していないこと
(10)2019年3月期の市場予想営業増益率が10%超となっていること⇒表1では(D)が10%超となります
(11)2018年4月に会社側から営業利益の修正が発表されていない(4/26現在)こと

表1は上記のすべての条件を満たす銘柄について、19/3期の市場予想営業増益率(D)が大きい順に並べたものです。なお、スクリーニングは4/26(木)までの情報をもとに作成しています。それ以降に、業績修正等のニュースや観測報道が出てくるケースも想定されますので、ご注意ください。

なお、太陽誘電 <6976> については、2/7(水)に業績予想の上方修正が発表されていること、変化の激しいスマホ向け市場の影響も大きいこと等に注意が必要です。さらに、住友金属鉱山 <5713> については、変動が大きいニッケル相場等の影響で株価が上下するケースがあること、デンカ <4061> については、2019年3月期の営業利益が1割程度伸びる予想との観測報道(4/18)が出ている点にも注意が必要です。

決算発表シーズン後半でアナリストの期待が大きい銘柄は
(画像=SBI証券)

表1:決算発表シーズン後半でアナリストの期待が大きい銘柄は?

コード / 銘柄名 / 株価(4/27) / 決算発表予定日 / 営業増益率(前年比)第3四半期累計(A) / 営業増益率(前年比)18/3期会社予想(B) / 営業増益率(前年比)18/3期市場予想(C) / 営業増益率(前年比)19/3期市場予想(D)
<2222> / 寿スピリッツ / 5,210 / 5/14 / 29.4% / 21.4% / 29.1% / 19.5%
<5713> / 住友金属鉱山 / 4,698 / 5/10 / 63.4% / 34.8% / 47.7% / 18.2%
<6976> / 太陽誘電 / 1,949 / 5/10 / 64.4% / 53.4% / 57.6% / 17.9%
<2267> / ヤクルト本社 / 7,800 / 5/10 / 21.7% / 11.3% / 16.9% / 17.1%
<4061> / デンカ / 3,910 / 5/10 / 34.0% / 27.7% / 29.2% / 16.6%
<6908> / イリソ電子工業 / 6,940 / 5/8 / 38.3% / 18.6% / 26.3% / 15.6%
<5975> / 東プレ / 3,440 / 5/10 / 19.0% / 7.7% / 10.9% / 12.3%
<4021> / 日産化学工業 / 4,875 / 5/11 / 19.7% / 9.7% / 11.2% / 11.3%
<4543> / テルモ / 6,200 / 5/9 / 22.9% / 20.1% / 22.1% / 11.1%

※会社公表データおよびBloombergデータを用いてSBI証券が作成。「市場予想」はBloombergが集計した市場コンセンサスです。

決算発表シーズンは買い持ち高の整理も必要!?

決算発表後に株価が大きく動くケースが増えてきました。4/26(木)の東京株式市場では、東京エレク(8035)が市場予想を大きく上回る2019年3月期業績見通しを発表し、株価が8.4%も上昇しました。しかし4/27(金)にはファナック(6954)が逆に、市場予想を大きく下回る業績見通しを発表し、株価は9%を超える下げとなりました。

このように、2019年3月期の業績見通しの内容が、株価の明暗を分ける材料になっています。アイフォーン販売の不振や円高見通しを背景に厳しい業績予想を発表している銘柄で株価下落が目立っています。一方、IoTやAIの拡大による半導体用途の広がりを追い風にできた銘柄は期待以上の見通しを示しています。

一般的に、業績予想には、その予想主体により様々な種類のものがあります。大きくは以下の3種類があげられます。

(1)上場企業自らが作成し、発表する業績見通し。通常は「今期」のみの予想。
(2)アナリストによる業績予想や、それをメディア等が集計したコンセンサス。数年先まで予想することが多い。
(3)日本経済新聞社や東洋経済新報社などメディアが作成し、発表する業績予想。

このうち、(2)ではアナリストが取材や分析を通じ、業績の「的中」を狙い、それを材料に妥当株価等の判断を行っています。(3)は取材や分析の主体がメディアである点が異なりますが、会社公表の予想があればそれを尊重しています。これに対し、(1)は必ずしも、業績予想の的中を狙っているとは限りません。一般的には、業績予想の下方修正という「不名誉」を恐れ、慎重な数字を発表する会社もありますが、時には、実態以上に強気の予想を発表する会社もあります。

すなわち、(1)は実際の予想数字が発表されるまで、見当が付きにくいというのが実情です。会社の「方針」次第で大きく変動するためです。言い換えれば、(1)を材料に株価が大きく動いた場合、一応その数字を尊重しつつも、盲信することはなく、実際の業績がその数字に近づいていくのか、離れていくのか、期中で確認していくことになります。

とはいえ、投資家にとり、決算発表で会社側がどんな予想を発表してくるのかは、大きなリスクであることは確かです。したがって、この時期は、買い持ち高を調整し、現金を多めにしておくことも有効であると考えられます。

※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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鈴木英之 SBI証券 投資調査部

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