中国の『新財富』(深セン市の新財富雑誌社発行)が5月上旬、中国500富豪ランキングを発表した。10大視点として内容をまとめてあり、面白い読み物となっている。経済サイト「金融界」が伝えた。中国の大金持ちの実態に迫ってみよう。
視点1~5 激しい浮き沈み
1 トップ5はITと不動産
順位(前年順位) 資産額(億元)/氏名/会社名/主な業種/性別/年齢
5位(18位) 1620.1/楊惠妍/碧桂園/不動産/女 36
4位(1位) 1782.6/王健林・王思聡/万達集団/不動産/男 63・男 30
3位(21位)2285.1/許家印/恒大地産/不動産/男 60
2位(2位) 2602.6/馬雲/阿里巴巴/IT総合/男 54
1位(4位) 2794.4/馬化騰/騰訊/IT総合/男 47
きれいに不動産とITに分かれている。
2 トップ500の総資産は9兆5700億元。
前年比で1兆7000億元増加し、10兆元に近付きつつある。IT巨頭の株と、香港市場上場の不動産株暴騰が影響した。
3 重量級の没落
重量級富豪の没落も目立った。映像サイト「楽視網」を創業した賈躍亭はその典型だ。2016年には資産640億元でトップ10にランキングされていたが、現在は裁判所に持株を凍結され、法人代表の座も譲っている。
また著名な投資顧問会社「九鼎投資」の呉剛/呉強兄弟は、243億5000万元の資産を92億元に減らし、65位から300位以下にランクを落とした。
4 1000億元以上は10人
資産が1000億元を超えたのは10人だった。今年初めて1000億元枠に入ったのは、自動車メーカー吉利汽車(GEELY)の創業者、李書福だった。
5 バイドゥ/百度の李彦宏らトップ10から転落
IT大手「百度」創業者の李彦宏は、600億元から851億元と1.4倍に増やしたにもかかわらず、10位から13位に転落してしまった。
同じく食品大手「蛙哈哈」集団の創業者、宗慶后も、7位から26位に沈んだ。
視点6~10 出身、性別、年齢など
6 北京と上海が増加
トップ500を地域別に見てみよう。
2018年人数/資産合計/平均資産、2017年人数/資産合計/平均資産
広東 113人/2兆8610億元/253.2億元/114人/2兆0487億元/179.7億元
北京 87人/1兆7546億元/201.7億元/84人/1兆5400億元/183.3億元
上海 61人/1兆845億元/177.8億元/58人/9324億元/160.8億元
北京、上海が3人ずつ増やし、広東省は1人減らした。
7 吉林省から初のトップ500入り
昨年まで、吉林省は唯一トップ500富豪を一人も出していなかった。今年初めて、吉林永大集団董事長、呂永祥がランクインを果たした。同社の設立は1993年、電気関連設備のメーカーである。
8 最年少のOFO創業者は90后
最年少は、シェアサイクル「ofo」の創業者、戴威だった。2013年北京大学を卒業、14年にofoを創業した。資産は70億2000万元で、451位にランクインしている。
9 女性トップは碧桂園の楊惠妍
碧桂園の株価は、昨年1年間、香港市場で252%も暴騰した。彼女の資産も膨張し1640億元に達した。昨年の女性首位、藍思科技公司の周群飛は648億元にとどまり、1000億元近い差を付けた。
10 全体では小幅減少
富豪500人のうち20%は、資産を大きく伸ばした。しかし全体では小幅に下降している。これに伴いトップ500ランキングの最後尾も、昨年の66億1000万元から、64億元へ下降した。
上位集中と浮き沈み
広東省(深セン、広州)、北京、上海で261人と全体の半分以上を占める。北、上、深、広、の4つが「一線級都市」と呼ばれる所以だろう。それに対して吉林省はたった一人である。地域間格差は大きい。
トップ10の下限は、600億元から1000億元に上昇した。やはり上位による寡占傾向が強く、弱肉強食の状況が続いている。
トップ10以下でも、浮き沈み沈みは非常に激しい。前年242位から12位まで上昇したIT企業「奇虎360」周鴻褘などである。
富豪の浮沈は中国経済のダイナミックさを表している。日米以上に、厳しい資本主義社会なのかも知れない。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)