松坂屋銀座店を再開発した商業施設「GINZA SIX(ギンザ シックス)」が誕生して1年が経った。従来の「百貨店ビジネス」を脱し、テナントから賃料を稼ぐビジネスは、とりあえず滑り出し好調のようだ。ただし安閑としてはいられない。周辺には続々と大型商業施設がオープンし、競争は激化している。

GINZA SIX,ギンザシックス,銀座
(画像=PIXTA)

全フロアで「脱百貨店」を実現

「銀座六丁目10地区第一種市街地再開発事業」GINZA SIXが竣工したのは2017年2月、商業施設のオープンは4月20日だ。

同事業は松坂屋跡地単独のリニューアルではない。「銀座とともに成長する」アーバンドミナント戦略実現をめざし、Jフロントリテイリング、L キャタルトン リアルエステート、森ビル、住友商事の共同事業として進められてきた。

GINZA SIXは銀座最大の商業施設(241店舗・4.7万㎡)を核として6000㎡のオフィス、文化施設「観世能楽堂」など複合的施設で構成され、さらには観光バスの発着所・屋上庭園を設け、店舗だけでなくエリア全体の魅力を高めている。

商業ゾーンは、全フロアをテナント方式で運営し、賃貸収入で稼ぐ「脱百貨店方式」を導入した。オープン初日は、営業開始前から約2500人が行列を作り、東京の新名所お披露目に花を添えた。

滑り出しはまずまずの好調

開業から1年が経ち、GINZA SIXの船出はまずまず好調だ。当初目標としていた売上高600億円もどうやら達成できたようだ。GINZASIXの好調ぶりは、Jフロントの業績にも寄与している。4月中旬には、1年目の目安としていた2000万人目の入場者を無事迎えた。中には、来場10回のリピーターもいるそうだ。

GINZASIXには、クリスチャンディオール、フェンディなど多くの高級ブランドが旗艦店を置く。その他、店舗の半数以上が旗艦店で、どの店舗より早く、充実した限定商品や選考商品の投入を可能としている。さらに銀座初、日本初の店舗や新しい業態も多く、GINZA SIXならではの商品やサービスが、集客力につながっている。

GINZASIXの強力な「磁力」は新しい人の流れを生んだ。周辺にも好影響をもたらしている。はす向かいのイグジットメルサもここ1年で来客者が3割、売上高も1割増えた。最近では地下鉄銀座駅の乗降客数も増加、公示地価上昇しているが、少なからずGINZA SIXが寄与しているといえそうだ。オフィスゾーンで働くビジネスパーソンは約3500人にのぼり、ランチタイム需要などで相乗効果を産んでいる。

全てが順風満帆という訳ではない

GINZA SIX店舗の中でも、1階のスイス腕時計、3階のイタリア婦人服などヨーロッパ系高級ブランドは好調だ。特に限定アイテムを発売した時は飛ぶように売れる。地下1階の海外免税店のような化粧品売場も人気が高い。ターゲットは訪日客が中心で、まとめ買いをしていく顧客も多い。

一方で、国内アパレル店舗や宝飾品店舗は訪日客を呼び込めていない。4,5階フロアの店舗は回遊性の弱さも理由になる一方、同じ4階でもヨージ・ヤマモトなどは売上を伸ばしている。

明暗は、期間限定アイテムやメンズ・レディスの一体展示など、独自性を打ち出せているかにかかっている。GINZA SIXの特徴である「ここならではの商品・サービス」が提供できてない店舗には、恩恵がもたらされないようだ。

高級店が多い飲食街は、ディナー単価2万円弱の高さが嫌われ、不調な店舗が多いようだ。GINZA SIXを訪れた客は、お向かいの「銀座ライオン」に向かうことも多い。GINZA SIXができて以来、銀座ライオンの客数は毎月伸び続けている。

2年目に向けた課題

とりあえず滑り出し順調のGINZA SIXだが、2017年から2018年にかけて都心部周辺には、渋谷ストリーム、マロニエゲート銀座、日本橋高島屋、上野フロンティアタワー、原宿ゼロゲート、東京ミッドタウン日比谷など大型商業施設が次々オープンする。

いずれもGINZASIXとビジネスモデルが似通っているが、限られたパイを食い合うのでは意味がない。東京五輪後の訪日客減もにらみつつ、各施設が連携を深め東京全体の魅力を高める取り組みが求められる。(ZUU online 編集部)