日本は低金利が続いています。そのため、預貯金だけの運用では将来の資産形成がしづらくなっています。そのため、収益不動産をはじめとした変動商品も活用して資産をふやそうと考える人もいるのではないでしょうか。とりわけ、企業オーナーの場合は個人名義で購入するのがよいのか、法人の方がよいのかを迷うのかもしれません。そこで、それぞれのメリットとデメリットを考えてみましょう。
相続税対策で収益不動産を購入は個人?法人?どちらがいいのか
収益不動産の購入を検討する目的の一つに相続税対策があります。しかし、収益不動産を活用した相続対策は個人と法人のどちらのほうがよいのでしょうか。個人と法人で適用される税率や不動産評価額について、その違いをそれぞれ説明します。
●個人で保有する場合のメリットとデメリット
収益不動産を個人で保有する場合のメリットとデメリットには下記のようなものがあります。メリットは小規模宅地等の特例で一定の要件を満たした場合、相続税評価額を減額できる可能性があることです。しかし、 不動産を個人名義で保有すれば相続資産がふえます。結果として相続税額が増える可能性があります。加えて、所得税の対象となり、最大で所得税45%+住民税10%=55%の税率がかかってしまいます。
● 法人で保有する場合のメリットとデメリット
≪メリット≫
・ 収益不動産の運用で得た収益や家賃収入を役員報酬として相続人に支払えば、所得の分散効果が働き、税率を低く抑えることができます。
・ 役員報酬として損金算入が可能になります。
・ 取得して3年以上経過した場合は、相続税評価が適用されるため自社株の評価額は大幅に下がります。
・ 中小法人であれば、2018年度で所得400万円以下の部分は実効税率25.99%、400万円超800万円未満の部分は実効税率27.57%、800万円超で実効税率33.59%と最大個人所得税45%と比較して低い税率が適用されます。
≪デメリット≫
・ 個人の場合は適用できる可能性のある小規模宅地等の特例は適用できません。
・ 3年以内に相続が発生した場合は、通常の取引価格=時価による評価になってしまいます。
簡単にまとめると以下の図表のようになります。
メリット | デメリット | 個人 | ・小規模宅地等の特例が適用できる。 | ・相続財産が増えて、相続税が増える可能性がある。 ・最大55%と税率が高い。 |
---|---|---|
法人 | ・収益を役員報酬にすることで、所得の分散効果が働く。 ・役員報酬は損金算入できる。 ・取得3年以上経過した場合は、評価額が下がる可能性がある。 ・個人と比較して税率が低い。 |
・取得3年以内に相続が発生した場合は、時価評価になる。 ・小規模宅地等の特例は適用できない。 |
相続税対策として収益不動産を所有することを考えた場合には、個人・法人それぞれ上記のようなメリット・デメリットがあります。法人で収益不動産取得を検討している場合は、「3年」という期間の制約が一番の問題となります。しっかりとしたプランを検討する必要があるでしょう。
また、不動産は簡単に切り分けて複数の相続人に相続することは難しく、法人化することにより収益不動産を株式に転化することで相続をスムーズに行うことにもつながります。個人・法人のメリット・デメリットをそれぞれ考えて、自身にとって有利な方を検討しましょう。
キャピタルゲインで財産を構築する場合の有利な点、不利な点
収益不動産を売却した際に得られる利益=キャピタルゲインですが、キャピタルゲインで財産を構築する場合、法人と個人どちらが有利なのでしょうか。
◎ 個人所有の場合
≪長期保有が有利≫
・ 取得日から譲渡日が属する年の1月1日時点で5年を超える場合(長期譲渡)は長期譲渡所得の税率20.315%<法人税実効税率33.59%で個人が有利。
◎ 法人所有の場合
≪短期保有が有利≫
・ 取得日から譲渡日が属する年の1月1日時点で5年以下の場合(短期譲渡)は短期譲渡所得の税率39.63%>法人税実効税率33.59%で法人が有利。
このように個人・法人で所有期間によってキャピタルゲインの有利不利が逆転します。キャピタルゲインで財産を構築する場合は所有期間の長短で検討しましょう。
個人?法人?しっかりと計画を立てて検討しよう
収益不動産の購入を個人で行うのか法人で行うのか。それぞれ一長一短あります。特に法人で考えた場合の有利な条件は、相続税対策なら取得3年以上、キャピタルゲイン目的なら短期譲渡という風に、相続税・キャピタルゲインで長短が逆転しています。どういった目的で収益不動産を購入するのか明確にした上で、個人・法人を検討しましょう。
また、不動産融資について担保価値の観点だけではなく、事業価値を基に融資を検討する銀行もありますので、一度問い合わせてみてもいかがでしょうか。(提供:企業オーナーonline)
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