法人向けの生命保険には全損タイプ、半損タイプ、1/3損金タイプなど、損金算入できる金額の割合が異なるいくつかのタイプがあります。節税のためには全額を損金に入れられる全損タイプが有利となりますが、基本的には積み立ての効果がないものが多く、かつてのように節税のメリットを十分に生かすことのできる商品が少なくなっていました。

ところが、近年、節税にも活用できる全損タイプの保険が復活の兆しを見せています。以下では全損タイプの保険とはどのようなものかを確認し、その利用例を紹介します。

全損タイプの保険とは?

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(写真=PIXTA)

そもそも全損タイプの保険とはどのようなものでしょうか。全損タイプというのは、生命保険の保険料を全額損金に算入して、計算上、法人税にメリットを生じさせるものです。

これに対して、保険料のうち半分を損金に算入し、残りの半分を資産として計上する半損タイプ、保険料のうち1/3を損金に算入し、残りの2/3を資産として計上するものを1/3損金タイプと言います。

全損タイプの保険のメリットは?

法人税は会社のもうけに対して課される税金です。そのため、損金に算入できる金額が多いほど、会社のもうけが減り、法人税も安くなる相関関係にあります。つまり、半損タイプや1/3損金タイプより全損タイプの保険の方が節税効果は高いと言えます。

ただし、いくら全損になると言っても、いわゆる「掛け捨て」の保険だと、万が一のときの保障を受けることを考慮しなければ、支払った保険料が損金になるだけで特にメリットはありません。全額を損金に算入しつつ、解約返戻金などでお金が戻ってきて、はじめて節税商品としての価値が生まれることになるのです。

全損タイプの保険が復活した経緯は?

従来、法人の節税目的で利用される全損タイプの保険としては逓増定期保険や終身がん保険などが主流でした。しかし、節税を主目的にした利用の増加が見られたため、半損タイプや1/3損金タイプのみを運用するように国税庁が通達した経緯があります。

それに代わって、外資系保険会社が生活障害補償定期保険などの全損保険をスタートしたことを受け、日系の保険会社でも全損タイプの保険が設計されるようになりました。これらの保険は、本来掛け捨てだった商品の定期保険をベースにしたもので、逓増定期保険ほどではないものの、解約返戻率が高くなるように設計されており、節税商品としてのメリットを付与したものとなっています。

全損タイプの保険を活用したケース

それでは、全損タイプの保険を活用した中小企業の事例を紹介しましょう。製造業を営むA社の社長は大型受注があった事業年度に利益が多く出て、法人税に影響するのではと懸念していました。そこで、取引のある金融機関に相談したところ、全損タイプの生活障害保障型定期保険を紹介されました。

保障内容や解約返戻金などの条件に納得した社長は、さっそくこの保険に加入することにしました。A社は設備投資や原材料仕入に回す資金が多い会社であり、保険料の支払いに回せる資金は限られていました。その点、全損タイプであれば、支払った保険料が丸ごと節税効果を生むため、良い選択となりました。

保険期間の開始から8年後、A社の社長は勇退を迎えます。その際、役員退職金の原資として解約返戻金を充当しました。また、解約返戻金はその期の益金となりますが、役員退職金は損金となり、所得は例年の水準に抑えられ、法人税もほとんど発生しませんでした。

全損保険もプランニング次第で活用できる!

以上のように、全損タイプの保険であれば、限られた資金で効率的に節税効果を生むことができます。万が一の場合の保障内容をよく確認した上で、将来に向けて適切にタックスプランニングすれば、保険の利用価値を最大限に高めることができるでしょう。(提供:企業オーナーonline

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