「リバースモーゲージ」というローン商品をご存知だろうか。これは、自宅を担保にして老後資金を借り入れて、自分の死後に売却して一括返済するというものだ。

大手銀行も次々と参入しており、3メガバンクと地銀を中心に約30の商品がリリースされている。この新しいローンの仕組みは、今後普及していくのだろうか。ここでは、リバースモーゲージのメリットやデメリットを中心に紹介していく。

家を現金化するリバースモーゲージとは

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(写真=Jirsak/Shutterstock.com)

個人資産である自宅不動産を売却すれば、まとまった資金が手に入る。しかし、住み慣れた自宅を手放すのは難しい。住み続けながら自宅を現金化できないか。

このようなニーズにこたえる商品が、リバースモーゲージである。契約者が自宅を担保にローンを借り入れ、死後に相続人が借入れ分を返済するか、自宅を処分して返済することになる。

リバースモーゲージには大きく分けて2つの種類がある。まず、公的制度である「不動産担保型生活資金」だ。これは、戸建て住宅の土地評価額の7割程度までを借り入れることができ、金利は年間0.95%と低い。ただし、低所得者向けのサービスであるため、所得が「市町村税非課税世帯」もしくは「均等割課税程度の世帯」などに該当している必要がある。

そして、民間金融機関が取り扱う商品は、土地評価額に対して融資を受けられる割合は低く、金利も高い傾向にある。その代わりに、対象者の範囲は広い。これは、年金だけでは老後が不安で、ゆとりある生活を送りたいという人々に支持されている。

リバースモーゲージのメリット

リバースモーゲージのメリットは、やはり自宅を売却することなく融資を受けられるという点が大きいだろう。生きている間は住み続けることができ、融資額を一括または月々での支払いで選べるものが多いので、年金にプラスして生活資金に充てることが可能だ。

また、資金用途は生活資金に限らず、リフォームや老人ホームの入居費用など自由に使えるものを選択できるサービスも多い。旅行やレジャーなど、老後の思い出作りの資金として利用することもできるのだ。

そして、ローンでありながら生きている間は月々の返済が必要ないという点も挙げられる。契約者の死後に一括返済という形式が一般的なので、毎月返済に頭を悩ませながら暮らす必要はない。

リバースモーゲージの注意点

魅力的なメリットの多いリバースモーゲージであるが、契約時にはよく考慮しておくべき注意点が存在する。

まず、自宅を手放しても良いのかという点について、配偶者や相続人となる子どもとよく話し合う必要がある。合意がないまま契約すると、後々大きなトラブルにつながってしまう可能性があるからだ。

次に、契約者が先立ってしまった場合、配偶者も契約を継続できるのかをよく確認しなければならない。リバースモーゲージは、契約者が亡くなった時点で一括返済することが基本になるので、最悪の場合、配偶者が住む場所を失ってしまうリスクがある。

金利上昇や担保価格の下落という点にも注意が必要だ。今後、金利が上昇すると利息負担が重くなってしまい、土地の値段が下がると担保価値も下がってしまう。定期的に担保価値が再評価され、融資限度額が見直されるため、場合によっては当初予定していた資金計画を考え直さなければならなくなるだろう。

そして、長生きすればするほど融資額は大きくなるので、将来の返済額もそれだけ大きくなる。生きている間に融資限度枠を使い切ってしまう、といった可能性も考えられるだろう。

リバースモーゲージは今後普及するか

自宅に住み続けながら融資を得られるという魅力は大きい。しかし、金利や担保価格の変動を大きく受けるため、確実な資金計画を立てづらいというリスクもある。利用する際は、こういったデメリットの側面もよく考慮しなければならない。

また現状、日本のリバースモーゲージは土地だけを担保対象としており、住宅は資産として認められていない。平均的な敷地面積を所有しているだけでは、関東1都3県以外ではあまり融資額が見込めない状況だ。住宅も資産として認められるようになれば、今後さらに普及していくことになるだろう。(提供:百計ONLINE


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