昨今、大手企業の相次ぐ不祥事が問題になっている。今の地位に対する油断か、それとも地位を守るための焦りか。いずれにしても、長寿企業であっても失敗への道を簡単に転がり落ちてしまうのが今の社会の現状だ。
そうした中で、より良い経営を続け、市場に認められるためには、どのような努力をしていけばよいのだろうか。
ここでは、相談役というポジションに焦点を当て、企業として考えていかなければならないポイントを紹介する。

相談役の役割に疑問を持たれ始めた、東芝の会計不祥事

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(写真=ImageFlow/Shutterstock.com)

2008年のリーマンショック以降、売上が激減した東芝。続く赤字を何とか食い止めるため、ひたすら利益を追求しようとした先に起こってしまったのが、未だ記憶に新しい2015年の不正会計問題だ。経営陣からの圧力により、改ざんされた数字を出すようになったことをきっかけに、ウソがウソを大きくするような形で問題は巨大化していった。

注目されたのが、相談役を筆頭とした役員のあり方だ。本来、社長や会社の方針に待ったをかけ、正しく機能させるための役割を有しているはずのこのポジションが全く機能しなかったことが、ここまで大きな事件へと発展させる一助になったという考え方である。

東芝の場合を例に出せば、同社の歴代の財務責任者が、監査委員会の委員長を歴任していたという経緯がある。その人にも食い扶持は必要だ。だからこそ、不正と分かっていながらも、目をつむるしかない現状があったのではないだろうか。社長一人の独断ではなく、全員が全員、自己の保身を突き詰めた結果として、このような事態へと発展してしまったと考えられる。

相談役に求められる役割とは

相談役や顧問というのは、会社法に規定があるものではなく、各会社で自由に設置をし、役割を与えることができる。それほど曖昧な存在でありながら、経済産業省が行った調査によれば、上場企業全体の62%で、相談役や顧問がいるという結果が出ている。

相談役はその名の通り、現経営陣への指導や助言、事業に関する社外活動が主な役割となる。一方で、取締役会長、社長などが現役引退後にそのまま相談役へとスライド就任する場合が多く、結局は形だけのポジションになってしまっていることも往々にしてあるのだ。

先に挙げた東芝の例でいえば、「不正会計をしていた社長の相談役が、現役時代には自分も不正会計の当事者だった」という実情もあったのだろう。今の経営に口出しすることが、巡り巡って自分自身の首を絞めることにも繋がりかねない。

そのような背景があれば、公平な立場が求められる相談役が「忖度」をしてしまうという事態を招いても不思議ではない。

そもそも、相談役の選定の段階から、外部の人間にとっては不透明な要素も多いものである。現役を退いたものの、院政をしいて権力を保持している相談役もいれば、単なるお飾りとしての相談役もいる。これを見直そうという動きが出ても、何ら不思議なことではないだろう。

透明性を求められる経営と、必要な経営陣の体制

もちろん、本来の相談役が果たすべき役割、経営陣への有益な助言や、営業活動での重要な役回りを担っている人もいないわけではない。しかし、「全部が全部ではない」という事実がある以上、各企業もそれらの制度を見直さないわけにはいかないだろう。

阪急阪神ホールディングスやJ・フロントリテイリング、日清紡ホールディングスなどは、すでに相談役制度の廃止を決めている。また、上場企業が証券取引所に提出しなければならない企業統治の考え方や具体的な取り組みなどの報告書についても、今後は相談役・顧問制度についての項目が追加される。当然ながら、株主からの目もより厳しいものになってくるだろう。

相談役を正しく配置し、活躍させることができると信じているのであれば、その根拠が必要だろう。しかし、根拠を明確に示すことができないのであれば、そもそも相談役を置かない、または社外取締役として、少し離れた位置に置くということが一般化してくるはずだ。

いずれにしても、企業の説明責任が一段と厳しくなる現代において、今まで通りを貫き通すことは難しくなる。この時代の流れにいち早く乗れるかどうかが、会社の今後の市場価値を大きく左右することになるだろう。(提供:百計ONLINE


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