このコーナーでは毎週原則木曜日に実施しているMarket Talk(動画セミナー)のサマリをお届けします。
2018年7月5日(木)Market TalkのSummary
米中が追加関税を発動しあう期限を6日に控えていますがマーケットへの影響は?
ぎりぎりのところで発動が回避されればポジティブサプライズだが、恐らくそうはならずに340億ドル分は発動するのではないか。最初の340億ドルはやらないとトランプ大統領も支持者に面子がたたないのでこれはやるだろう。そうなったら(マーケットのリアクションとして)どうするかということだ。スマートなマーケットであれば、もやもやしていたものがかえって出てくれてさっぱりした、材料出尽くしで上がる、少なくとも下げ止まるというのが普通に考えられる展開だが、最近のマーケットはプリミティブになっている ‐ 幼稚になっている ‐ ので、悪材料がでたらそのまま素直に動いてしまう。 いまさら米中が340億ドルの関税発動をかけあったところで、そもそもマーケットはそれを嫌気してここまで下げてきたのだから、それで一段安となるのは普通は考えにくいが、プリミティブな相場では悪い事象が起きてまた下げるということは十分ありうるので、注意しなければいけないと思う。ただそうなったところは、明らかに行き過ぎなのでそこで下がったところは買い場なのではないか。
米国の保護主義政策で、中国経済が失速するリスクがあると言われていますが、実際はどうなのでしょうか?
失速するだろう。貿易戦争、貿易摩擦は経済にとってよろしくないことなので当然この分は失速すると思う。ただこの分を差し引いても有り余る成長余力が中国にはある。中国経済はまだ輸出で成長している部分は多分にあるが、一方で分厚い中間層がたくさん育っているので内需をもっと育てていかなければならないという方向にますます傾斜がかかり、輸出頼みを転換する良い機会になるのではないか。中国は環境対策やスマートシティの建設など国内でやらなくてはならないことがたくさんある。貿易戦争で失速する要素はあるがそれを打ち消すだけの成長の種はたくさんある。
日経平均の今後の展開をどう読まれていますか?
ファンダメンタルズは悪くない ‐ 悪いところは織り込んでいるのに株価は行き過ぎている。6月の日銀短観は、大企業製造業のDIが2期連続の悪化だが、設備投資は伸びている。これが景気を支える。大企業製造業のDIはマーケットが短観の中で一番見ている重要な指標だが、このDIが2期連続で悪化したのは5年半ぶりのことで今回の景気サイクルのなかで初めて迎えた踊り場となる。しかし3か月先(9月)の先行き見通しは横ばいで下げ止まっている。日銀短観は事業所にアンケートを送って回答してもらっているもので、その大企業の製造業の人がこれ以上悪くならないと回答していることはポジティブだ。またアナリストの企業業績見通しの下方修正が続いていたが、足元上方修正が増えてきて、今は下方修正と上方修正が拮抗している。こういうタイミングで企業決算を迎えるわけだが、4-6月の決算もふたをあけてみたら良い決算だとなるだろう。 株価もPER13倍割れまで売られているのも明らかに行き過ぎで、日銀短観に見られる景況感の悪化の打ち止め、アナリストの業績に対する下方修正の打ち止め、これに合わせて決算がよければ、さすがにここまで売り込むのは行き過ぎだろうとなり、戻ってくるだろう。
他に、小売企業の決算、新興市場についてもコメントしています。
広木隆(ひろき・たかし)
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
【関連リンク マネックス証券より】
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