昨日の海外時間には、「ドイツ、メイ英首相のEU離脱に関する関税同盟の計画を実行不可能との見方を示した」と報じられたことからユーロとポンドが売られました。一方ドル円は110.60円付近の狭いレンジ取引に終始しました。

今後の見通し

FXプライム,高野やすのり,市況解説
(画像=PIXTA)

トランプ大統領は6か午前0時から中国からの輸入品340億ドル相当への追加課税を発動する、と発表しました。中国税関総署は昨日「米国の追加関税の効力が発生した後に(中国は)実施する」と発表しており、ついに貿易摩擦から貿易戦争入りすることが確定的な状況となっています。昨年アメリカは約2兆3400億ドルの輸入をし、そのうち中国からが約5000憶ドルを占めています。今回の措置はそのうちわずか7%弱に追加関税をかけるというもので、実質的な影響はそれほど大きくない、とも見られています。しかし中国は即座に報復措置を取るとし、トランプ大統領は中国が報復措置をとればさらに1500憶ドル規模に拡大することを示唆しています。中国のアメリカからの輸入は約1300億ドルにすぎませんので、中国がアメリカからの輸入品全額に追加課税をしても金額では追いつけません。したがって、中国は他の手段で報復する可能性もあります。どこまでエスカレートするかは不明ですが、影響が広がれば、世界経済に対するネガティブな要因になることからリスク回避の円買いがにつながる可能性があります。

111円台に再度上がればドル売りへ

ドル円相場は引き続きレンジ相場が継続すると考えています。一昨日作った111.00円のドル売り円買いのポジションは、昨日の午後の下落局面で一昨日の安値を割り込めなかったことから110.40円で買い戻しました。現在ポジションはありませんが、111円台に乗せてきて、今週の高値を抜けなければドル売りポジションを作りたいと考えています。

海外時間からの流れ

東京時間午後に、イタリア財務相が「ユーロ離脱したいと政権の誰も望まない」「構造的財政状況を悪化させるつもりない」などと述べたことや、日本企業が欧州事業を約6400億円で買収するとしたことからユーロ買い円売りが強まったものの、買いが一巡して欧州時間にはいると各通貨ペアとも小動きとなりました。ユーロドルは1.1710付近から1.1680付近まで小緩んだものの、欧州株が上昇するとNY時間午前にかけて1.1720付近まで再度上昇しました。一方ドル円は対ユーロでドル売りがやや優勢となったことから110.70円付近から110.50円台まで下落しました。この間カーニーBOE総裁が「英経済の強さ、利上げの必要性増す」と述べたことからポンドも上昇しています。

その後NY時間午後にかけては、各国株価が反落したことからドル買い円買いが強まる中「ドイツ、メイ英首相のEU離脱に関する関税同盟の計画を実行不可能との見方を示した」と報じられたことからポンドとユーロが売られ、ユーロドルは1.1670台まで、ユーロ円は129.10円台まで下落しました。しかし各国株価が下げ止まるとユーロは買い戻しが優勢となって、ユーロドルは1.1690台まで、ユーロ円は129.40円付近まで反発しました。

東京時間にはいってから、全般的にドル買いが優勢となっています。

今日の予定

今日の海外時間には、米・6月雇用統計の発表があるほか、独・5月鉱工業生産、米・5月貿易収支の発表が予定されています。

(提供:FXプライムbyGMO)

高野やすのり
慶應義塾大学卒。チェース・マンハッタン銀行(現J.P.モルガン・チェース銀行)、スイス・ユニオン銀行(現UBS銀行)などでインターバンクディーラー業務等に従事。現、(株)FXプライムbyGMOお客様コンサルタント。Twitterでも情報発信中 高野やすのり@takano_fxp