ドル円予想レンジ109.00-111.50
「笹の葉さらさら軒端(のきば)に揺れるお星さまキラキラ金銀砂子」―。これは戦前に唱歌となった童謡『たなばたさま』の一節だ。筆者がこれを取り上げた理由は一点。同唱歌の2番「五色(ごしき)の短冊私が書いたお星様キラキラ空から見てる」の如く、トランプ政権有力者が短冊には書かないまでもFRBにお願いをしたからである。
パウエルFRB議長にお願いしたのは誰だ
パウエルFRB議長は上院銀行委での議会証言を7/17に予定している。2/27証言時は、年3回以上の利上げの可能性について「経済に関する個人的な見通しは12月以降強まった」と発言。本年は3月、6月と利上げを行ったFRBに対しシカゴFEDウオッチでの年内利上げ確率(7/6時点)は9/26(2.00-2.25%)を78.5%、12/19(2.25-2.50%)を48.6%とほぼ年4回の利上げで織り込んでいる。7/17証言においても①労働市況堅調、②減税による財政刺激継続、③景気安定、④物価上昇力維持、が明白なら“緩やかな利上げは適切”、との示唆をしない訳にはいかないだろう。
しかし、6/29に「KudlowBucksTraditioninUrgingFedtoHike Rates‘VerySlowly’」と報じられた。クドロー米国家経済会議委員長がFRBに対して「極めてゆっくりと」利上げするよう促したのだ。先進主要国では自国中央銀行の金融政策に意向を示さないのは不文律。そうした慣例をクドロー委員長が知らないとも到底思えない。
しかし“パウエル議長は良い人だ”と人柄にも言及し、「空からみてる」の歌詞同様、お願い以上の姿勢で政治が禁断の領域に踏み込んだとも映る。では、何故、FRBに利上げペース抑制を迫るのか。筆者は対先進主要国と通商摩擦が増幅した際の先手と読んでいる。
トランプ政権において経済政策の司令塔を担うクドロー委員長が強硬姿勢を強めた際に引き起こしかねない米経済の萎縮、冷却化、資金需要の逼迫や景気減速を避けるために政権の覚悟を再表明した可能性だ。11月中間選挙まで約半年。トランプ政権が有権者・支援団体の顔色を伺うなかで景気失速だけは甘受できない。織姫と彦星のようにお互いの想いが合致する年一回の七夕とは違い、今後もパウエルFRB議長に対しトランプ政権から利上げ抑制の“懇願”が幾度もなされることを警戒している。
7/9週ドル円焦点
上値焦点は7/3高値111.15、5/22高値111.20、5/21高値111.405、1/18高値111.495。越えれば1/12高値111.705、1/11高値111.88期待。下値焦点は200日線(110.15近傍)留意で日足雲上限(109.632-416)、6/25-26安値圏&6/11安値109.35-36。割れたら6/8安値109.185、109円台維持が問われ6/1安値108.72、5/30-31安値圏108.37-34、そして5/29安値108.10が最終橋頭堡と推考。
武部力也
岡三オンライン証券 投資情報部長兼シニアストラテジスト